スマホ不況、原因は「AIの爆食い」だった ─ RAM不足が市場を直撃する2026年

スマホ不況、原因は「AIの爆食い」だった ─ RAM不足が市場を直撃する2026年

スマホは、もはや“毎年買い替える最先端ガジェット”から、“生活インフラの道具”へと完全に地位を移した。だからこそ、価格が少し動くだけでも家計への衝撃は大きい。そんな中で今、スマホ市場に「過去最大級の落ち込み」が来るかもしれない──しかも理由は、スマホの人気が急に冷めたからではなく、スマホの中身を支える“部品の奪い合い”が激化しているからだ。


海外メディアが紹介したIDC(International Data Corporation)の最新見通しでは、2026年の世界スマホ出荷台数が前年比12.9%減となり、10年以上で最も低い水準に落ち込む可能性があるという。さらに厄介なのは、台数が減る一方で、平均販売価格は上昇するという点だ。IDCは平均販売価格が約14%上がり、過去最高水準(約523ドル)に達すると予測している。つまり「売れないのに高い」という、消費者にとって一番うれしくない形で市場が揺れるかもしれない。


犯人は“スマホ離れ”ではなく、RAM不足

今回の見通しの中心にあるキーワードは、RAM(メモリ)不足だ。ポイントは単純で、世界のメモリ生産能力が無限ではない以上、どこかが大量に確保すれば、別のどこかが足りなくなる。


そして、その“大量に確保する側”として存在感を増しているのがAIだ。大規模AIを動かすデータセンターは、膨大な計算資源だけでなく、巨大なメモリ需要を生む。特にAI向けの高性能メモリ(サーバー用途を含む周辺領域)に生産が引っ張られれば、スマホやPCが使うメモリの供給・価格にも波が及ぶ。結果として、スマホメーカーはコスト増に直面し、価格転嫁か、仕様の抑制(メモリ容量を据え置く/増やせない)か、あるいは製品ラインの整理を迫られる。


この“RAMageddon(RAMの終末)”は、スマホ単体の問題ではない。メモリ価格の上昇は、ノートPCや小型コンピュータ、モジュール型PCなど、幅広いデバイスの価格にも跳ね返る。つまり、私たちが「便利に賢くなっていくはず」と期待したAIブームが、回り回って生活周辺のハードを高くするという、皮肉な構図ができあがっている。


いちばん苦しいのは「安いAndroid」

メモリ価格が上がったとき、痛みが均等に分かれるわけではない。IDCの見方では、特に打撃を受けるのは予算重視のAndroidスマホだ。薄利多売で成り立つ低価格帯は、部品コストが数ドル上がるだけでも採算が崩れやすい。そこでメーカーが取り得る手段は限られる。

  • 価格を上げる(しかし価格に敏感な層ほど離脱する)

  • 仕様を削る(メモリやストレージ、カメラなどを抑える)

  • そもそもその価格帯から撤退する


IDCの担当者は、100ドル未満のスマホは「恒久的に採算が合わなくなる」可能性に触れている。これは、単なる値上げ予測ではなく、市場構造そのものが変わるという示唆だ。低価格帯が縮めば、これまでスマホ普及を支えてきた層の選択肢が減る。中古やリファービッシュ(整備済み)への流入が増えるかもしれないし、買い替え周期がさらに伸びるかもしれない。


「強者がより強く」なるシナリオ

部品コストの上昇局面で強いのは、値上げを吸収できる体力がある企業、そして販売単価の高いブランドだ。IDCの見通しでは、こうした環境変化は市場の淘汰を進め、結果としてAppleやSamsungのような大手がシェアを伸ばす可能性がある。中小ブランドは、値上げしても売れず、値上げしなければ赤字になり、板挟みに陥りやすい。


ここで重要なのは、これは“技術競争の勝敗”とは別軸だということだ。たとえ魅力的な端末を作れても、調達コストと供給の不安定さが続けば、製品の継続が難しくなる。特に低価格帯で戦うメーカーほど、部品の確保が生命線になる。結果として、ラインナップの整理・撤退・統合が進み、市場は見かけ上シンプルになるが、消費者目線では選択肢が減りやすい。


SNSの反応:怒り、冷笑、そして現実論

 

この話題はSNSでも一気に火がついた。反応を大きく分けると、主に次のような論点に集約される。

  1. 「AIのせいで生活必需品が高くなるのは納得できない」
    AIへの投資競争が、一般消費者が買うスマホやPCの価格に波及する構図に対し、「本末転倒」「誰のための技術革新なのか」という感情的な反発が目立つ。特に、スマホは“贅沢品”ではなくなっている地域・層も多く、価格上昇はそのまま情報格差につながるという懸念も出ている。

  2. 「結局、買い替えを先延ばしするだけ」
    一方で、「高くなるなら今の端末を長く使う」「バッテリー交換で延命する」という現実的な声も多い。スマホ性能が成熟し、体感差が出にくくなった今、値上げは“買い替え需要の蒸発”を加速させるだけでは、という冷静な見方だ。

  3. 「また強者が得する」
    メモリ不足で低価格帯が苦しくなれば、価格設定の自由度が高い大手ほど有利になる。SNSでは「結局AppleとSamsungがさらに強くなる」「中小は消える」という“寡占化”への警戒が繰り返し語られている。

  4. 「予測は当たるのか?」という懐疑
    市場予測そのものへのツッコミもある。「供給が増えるのでは」「価格はいつか落ち着く」「需要が冷えればバランスする」といった反論だ。たしかに、半導体市場は投資と需給で波が起きやすい。だからこそ、今回の見通しを“確定未来”として読むのではなく、「価格と供給がタイトになった場合のインパクト」を早めに想像する材料として捉えるのが良い。

これから起きそうな“身近な変化”

では、私たちの生活に落ちてくる変化は何か。現時点で現実味があるのは、次の3つだ。

  • エントリーモデルの値上げ・統廃合:安い機種ほど影響が大きい。

  • 同価格帯での仕様低下:メモリやストレージが据え置きになり、伸びが鈍る可能性。

  • 中古・整備済み市場の拡大:新品の値上げが中古需要を押し上げる。


さらに、メーカー側は「価格を上げる」以外の工夫も進めるはずだ。たとえば、容量構成の見直し、長期サポートの強化、下取りの拡充、分割払いの最適化など、“買い替えの心理的ハードル”を下げる施策は増えるだろう。消費者側としては、OS更新期間・バッテリー交換のしやすさ・修理コストなど、「長く使う前提」での比較がより重要になる。


まとめ:AI時代の“奪い合い”は、スマホの常識を変える

今回のIDC見通しが示しているのは、単なるスマホ不況ではない。AIの成長が、半導体、とりわけメモリを中心に世界のリソース配分を塗り替え、スマホ市場の価格帯・プレイヤー構造・買い替え行動まで連鎖的に変える可能性がある、ということだ。


「スマホが高くなる」のは、スペック競争の結果ではなく、世界の優先順位が変わった結果かもしれない。もしそうなら、私たちが向き合うべきなのは“どの機種が速いか”だけではなく、“どの端末をどう長く使うか”、そして“選択肢が減る未来にどう備えるか”なのだ。



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