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AIクリエイターがインフルエンサー経済を壊す日 ─ 1分のAI動画が1,000ドルを生む世界で、人間のクリエイターはどう生き残るのか

AIクリエイターがインフルエンサー経済を壊す日 ─ 1分のAI動画が1,000ドルを生む世界で、人間のクリエイターはどう生き残るのか

2025年12月08日 12:52

1. 「スロップだらけのネット」で生まれたAIリテラシー・スター

2025年のSNSタイムラインを眺めていると、現実とAI生成の境界線がどんどん溶けていくのを感じます。
異様にツヤツヤした肌、やたら完璧な歯並び、どこか“夢の中”のような映像。スクロールを止める数秒間のうちに、私たちは本物の人間とAIが作り出した「誰でもない誰か」を見分けなければなりません。


そんな“スロップだらけ”の環境で一躍注目を集めたのが、TikTokとInstagramで合計数十万フォロワーを抱えるジェレミー・カラスコ(アカウント名:showtoolsai)です。彼が本格的に動画投稿を始めたのは2025年6月頃。それから半年も経たないうちに、TikTokとInstagramそれぞれで30万人以上のフォロワーを獲得し、“AIリテラシー系クリエイター”として頭角を現しました。The Verge


元々ジェレミーは、YouTuberを夢見ながらも、裏方としてライブ配信のディレクターやプロデューサーを務めてきた人物。
転機になったのは、生成AIを巡る会話がほぼテック企業主導で進んでいることに気づいた瞬間でした。「クリエイターや映像制作者の視点から話す人が足りない」と感じた彼は、自らSNSの表舞台に立つことを決意します。The Verge


当初のコンセプトは「映像制作にAIをどう活用するか」。ショート動画のための効率的なワークフローや、倫理的な使い方をシェアするつもりだったと言います。しかし理想はすぐに打ち砕かれました。


タイムラインを埋めていたのは、AIを透明化する議論ではなく、“いかにAIでバズを量産するか”というHow-toばかりだったからです。

そこで彼がピボットしたのが、「AIの使い方」ではなく「AIを見抜く力=AIリテラシー」を教える方向でした。



2. AI動画を見抜く“違和感リスト”

ジェレミーの動画で一貫しているのは、「これはAIです」と断定するよりも、「まず違和感に気づこう」と促すスタイルです。元記事では、彼が挙げる“AIらしさ”のポイントがいくつか紹介されていますが、ここでは要素をかみ砕いてみます。The Verge


  • 肌や背景が“曖昧に美しすぎる”
    →テクスチャがふわっと滲んでいたり、背景の物体が妙に滑らかだったりする。

  • 細部の一貫性が保てていない
    →背景の看板の文字がフニャフニャで読めない、コップの形がカットごとに微妙に変わる、椅子が増えたり減ったりする。

  • 目と口が不自然に動く
    →視線が泳いでいたり、まばたきのタイミングが変だったり、口の動きと音声がぴったり合っていなかったりする。

  • “出来過ぎている”物語
    →奇跡のようなラッキーが連続する、現実離れした展開なのに、あまりにもツルツルとした映像で見せられる。

彼が繰り返し強調するのは、「最初の違和感をスルーしないこと」。


Sora 2のような高度な動画生成モデルが無料で使えるようになり、映像のクオリティは急速に上がりましたが、それでも“人間らしさ”を完全に再現できているわけではありません。The Verge


AIリテラシーの第一歩は、「なんか変だな」と思った自分の感覚を信じ、立ち止まって観察することだと、ジェレミーはショート動画を通じて繰り返し伝えています。



3. 7秒のAI動画が1,000ドルになるビジネスモデル

では、なぜこんなにもAIスロップがあふれているのでしょうか。
理由はシンプルで、「儲かるから」です。


記事によると、例えば“AIで生成した猫のちょっとしたおバカ動画(数秒)”を大量に作り、それらを1分程度のコンピレーション動画に編集してTikTokに投稿するだけでも、バズればかなりの収益になる可能性があります。視聴回数が500万回ほどに達すれば、TikTokのクリエイターファンドから約1,000ドル(約15万円前後)が支払われるケースもあるとされています。The Verge


先進国の物価感覚では「たったそれだけ?」と思うかもしれません。しかし、開発途上国や物価の安い地域では、その金額は生活を大きく支える収入になり得ます。


動画自体に大した価値がなくても、“AIを回せるPCとネット回線”さえあれば、時間をかけずに大量生産できてしまう。倫理的な線引きよりも、「とりあえず回す」方が合理的な選択になってしまう構造があるのです。The Verge


結果として、私たちのタイムラインは“AIコンテンツの洪水”に飲み込まれ、本物のクリエイターが丁寧に作った動画が埋もれていきます。



4. 「AI漢方」とAI美女アバター──悪質アカウントたち

ジェレミーが取り上げるAIアカウントの中には、笑って見逃せないレベルのものもあります。記事では2つの象徴的な例が紹介されています。The Verge


1つは、中国風の衣装をまとった“AI漢方の仙人”が登場し、健康や美容のアドバイスを延々と話してくるアカウント。西洋圏のオーディエンス向けに、ステレオタイプをなぞったような“東洋の神秘”を演出しつつ、最終的には11ドルの電子書籍購入へ誘導します。その本自体も、おそらくAIが丸ごと書いたであろうとジェレミーは指摘します。実際、「本が手に入らなかった」という報告もあるほどで、もはや詐欺に近いビジネスと言っていいでしょう。The Verge


もう1つは、既存の女性クリエイターの動画にAIで作った別人の顔やアバターを重ねてしまうアカウントです。
元の動画を無断で拝借し、顔だけを“理想化されたAI美女”に差し替え、そのままコンテンツとして投稿する。場合によっては、そのAI化された姿を使ってOnlyFansのような課金プラットフォームに誘導するケースも存在するといいます。The Verge


ここには二重三重の問題があります。

  • 元クリエイターの著作権侵害

  • 本人の同意なき“顔・身体の乗っ取り”

  • 性的搾取ビジネスへの悪用

そして被害者側は、「どこまでが自分で、どこからがAIなのか」を説明することすら難しい状況に追い込まれます。



5. 「倫理的な生成AI」は可能なのか?

インタビューの中で、「クリエイターの現場で、倫理的に使える生成AIは存在すると思うか?」と問われたジェレミーは、こう答えています。
「基本的にはNOだと思う」と。The Verge


ただし例外もあると付け加えます。

  • アクセシビリティ向上(字幕や言語変換など、人を助ける用途)

  • 文化的・歴史的アーカイブを可視化する用途


一方で、今主流の動画生成モデルは、巨大なデータセットを作るために、世界中の人々が作ったコンテンツを“ほぼ無断で”かき集めているのが実情です。ハリウッドの映画会社ライオンズゲートは自社ライブラリだけでモデルを作ろうとしましたが、学習データが足りず、実用的なクオリティに達しなかったといいます。The Verge


「今の方式のままでは、誰かの作品や人生の断片を勝手に混ぜ合わせた“盗作の塊”になってしまう」とジェレミーは批判します。



6. プラットフォームは“自分で火をつけて、自分で燃やされている”

AIスロップの洪水を止められる立場にあるのは、本来TikTokやInstagram、YouTube、Facebookなどのプラットフォームです。しかし現状、彼らはむしろ状況を悪化させていると記事は指摘します。The Verge


  • AIコンテンツにラベルを付けるルールが十分に守られていない

  • 通報を受けても、アカウント停止などの対応が遅い、またはバラつきが大きい

  • それどころか、自社で生成AI動画ツールやAI広告ツールの開発を加速させている


Meta(Facebook / Instagram)、Amazon、DirecTVなどは、すでに生成AIを使った広告制作サービスを試験展開しています。やがて広告主は、クリエイターを通さずに、直接プラットフォームのAIツールにお金を払うようになるかもしれません。The Verge


ジェレミーは、「クリエイターの多くは事実上、小さな広告代理店として機能している」と語ります。ブランド案件やスポンサーシップが主な収入源である以上、広告制作そのものがAIに置き換わっていけば、“人間のインフルエンサー”は真っ先に不要になってしまう。
AIが「広告の制作」と「配信経路」を丸ごと握ってしまえば、クリエイター経済は土台から崩れかねないのです。



7. SNS上の反応──共感・不安・諦めの“三つ巴”

こうした問題提起に対し、SNS上ではさまざまな反応が生まれています。


The VergeがFacebookでこの記事をシェアした投稿には、数百件規模のリアクションとコメントが集まり、アーティストや映像制作者からの「ようやくこういう記事が出た」「私たちの懸念を代弁してくれている」といった声が目立ちます。一方で、「AIは道具に過ぎない。うまく使った人だけが勝つのでは?」といった楽観的な意見も見られます。Facebook


ジェレミー本人のInstagramリールやTikTok動画には、

  • 「この動画を見てから、AIと本物を区別する目線が変わった」

  • 「仕事でAI広告を作っているけれど、胸が痛くなった」
    といったコメントが並び、AIリテラシーへの関心の高まりがうかがえます。instagram.com


日本語圏でも、Threadsなどでこの記事のリンクがシェアされ、「インフルエンサー経済の終わり」という刺激的なタイトルに反応する投稿が散見されます。


  • 「自分の推しがAIアバターに置き換えられたら、もう応援する意味がなくなる」

  • 「それでもマーケの現場では、安くて速いAIに頼らざるを得ない」
    といった、ファンと広告業界、それぞれの葛藤が混じり合う声が上がっています。Threads


全体として、反応は大きく3つに分かれているように見えます。

  1. 強い共感派

    • クリエイターやアーティスト、ジャーナリストなど。

    • 「AIは私たちの仕事と収入、アイデンティティを奪っている」と危機感を共有。

  2. 現実的な諦め派

    • マーケターや中小企業の担当者。

    • 「予算がないので、AIに頼らざるを得ない。でも本当は人に頼みたい」というジレンマ。

  3. 技術楽観派

    • テック好きや一部の視聴者。

    • 「結局、面白ければAIでもいい」「悪用だけ規制して、あとは使いこなせばいい」というスタンス。


この三者が同じタイムラインの中でぶつかり合っているのが、2025年のSNSのリアルな風景と言えるでしょう。



8. 日本のクリエイターにとっての「AIリテラシー」とは

では、日本のクリエイターや視聴者にとって、この話はどんな意味を持つのでしょうか。


  • TikTokやYouTubeショート、Instagramリールといった短尺動画は、日本でもすでに広告・宣伝の主戦場になっています。

  • 生成AIは英語圏だけでなく、日本語のコンテンツも急速に飲み込みつつあります。

  • 「安くて速い」が正義になればなるほど、丁寧に作った作品ほどコスパで負けてしまいます。


だからこそ、少なくとも以下の3つは、私たち自身の“AIリテラシー”として身につけておきたいポイントです。

  1. 「違和感」を放置しない

    • ちょっと怪しいと感じたら、すぐにシェアせず、アカウントや出典を確認する。

  2. クリエイターの“中の人”に目を向ける

    • どこの誰が、どんな文脈で発信しているのかを知ることで、AIスロップと区別しやすくなる。

  3. プラットフォームへの“求める声”を出す

    • AIラベルの徹底、無断AI化への対策など、利用者側からもフィードバックしていく。


ジェレミーのようなAIリテラシー系クリエイターは、海外だけの話ではなく、日本にも必ず必要になっていきます。
「AIが悪い」か「人間が偉い」かという単純な二元論ではなく、「何を守りたいのか」「どこまで許容するのか」を、私たち一人ひとりが自分の言葉で考え、発信していくこと。その起点として、このThe Vergeの記事は大きな意味を持っていると感じます。The Verge


参考記事

AI「クリエイター」がインフルエンサー経済を崩壊させる可能性
出典: https://www.theverge.com/entertainment/839494/ai-literacy-tiktok

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