メインコンテンツにスキップ
ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア ロゴ
  • 記事一覧
  • 🗒️ 新規登録
  • 🔑 ログイン
    • English
    • 中文
    • Español
    • Français
    • 한국어
    • Deutsch
    • ภาษาไทย
    • हिंदी
クッキーの使用について

当サイトでは、サービスの向上とユーザー体験の最適化のためにクッキーを使用しています。 プライバシーポリシー および クッキーポリシー をご確認ください。

クッキー設定

クッキーの使用について詳細な設定を行うことができます。

必須クッキー

サイトの基本機能に必要なクッキーです。これらは無効にできません。

分析クッキー

サイトの使用状況を分析し、サービス向上に役立てるためのクッキーです。

マーケティングクッキー

パーソナライズされた広告を表示するためのクッキーです。

機能クッキー

ユーザー設定や言語選択などの機能を提供するクッキーです。

農業は「気候悪者」から「解決策の主役」へ ――自然・炭素・栄養を同時に守る「3N農業」が未来の食卓を変える

農業は「気候悪者」から「解決策の主役」へ ――自然・炭素・栄養を同時に守る「3N農業」が未来の食卓を変える

2025年11月24日 10:48

1. なぜ農業は「気候問題の元凶」と言われるのか

私たちは「CO₂排出」と聞くと、真っ先に発電所や車・飛行機を思い浮かべがちです。

しかし近年の研究では、世界の温室効果ガス排出量のうち、食料システム全体が約3分の1を占めるとされています。ここには農地での生産だけでなく、肥料や農薬の製造、加工・輸送、冷蔵・小売、家庭での調理、そして食品ロスまでが含まれます。publications.jrc.ec.europa.eu+4FAOHome+4Nature+4


農業由来の排出には、いくつかの特徴があります。

  • メタン排出
    反すう動物(牛・羊・ヤギなど)のげっぷや、稲作田における嫌気分解から大量のメタン(CH₄)が出ます。メタンはCO₂よりも強力な温室効果を持つガスです。Phys.org

  • 亜酸化窒素(N₂O)排出
    化学肥料や家畜ふん尿を与えた土壌では、微生物の働きにより亜酸化窒素が発生します。これもCO₂に比べて温室効果の強いガスです。Phys.org

  • 土地利用変化によるCO₂排出
    森林や草原を伐採して農地に変えると、土壌や植物に蓄えられていた炭素が大気中に放出され、同時に「炭素を吸収・貯蔵できる場所」が失われます。


さらに、世界の「住める土地(氷河や砂漠を除く)」の約半分は農業に使われていると推計されています。datawrapper.de+4Our World in Data+4Our World in Data+4

これだけ大きな面積を占める以上、農業のあり方は、気候だけでなく、森林・草原・湿地などの自然や、そこに生息する生物多様性にも大きな影響を与えます。


つまり、農業は「排出源としても、自然破壊のドライバーとしても、非常に重要な存在」なのです。



2. それでも農業は「被害者」でもある

一方で、農業は気候変動の影響をもっとも強く受ける産業の一つです。


  • 異常な干ばつや豪雨による不作

  • 熱波による家畜のストレスや死亡

  • 洪水や台風による畑・施設・インフラの破壊


こうしたリスクは、日本だけでなく世界中の農業現場を直撃しています。Phys.org+1

そして、農家の多くは薄い利益率の中でギリギリの経営をしており、気候災害が連続すると廃業に追い込まれることも珍しくありません。


つまり、農業は「気候危機の加害者であり、同時に最大の被害者の一人」という二重の立場にあるのです。



3. COP30と「農業をどうするか」という世界的な議論

この記事が紹介しているのは、ブラジルで開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)の文脈です。ここ数年、国際交渉の場では「農業と食」がようやく本格的なテーマとして扱われ始めました。Phys.org


  • 各国が提出する**NDC(自国が掲げる温室効果ガス削減目標)**の中にも、農業や土地利用の章が入るようになってきました。

  • 一方で、会場には大手アグリビジネス企業のロビイストも多数参加し、自社に不利な規制を避けようと働きかけています。

  • 会場の外では、小規模農家や先住民団体、市民団体が**「低インパクトな農業」「アグロエコロジー」「気候正義」**を掲げて声を上げています。


このように、「農業をどう変えるか」は、企業利益・農家の生活・消費者の食習慣・気候目標が複雑に絡み合う政治的なテーマになっています。



4. 3つのNで考える「3N農業」とは?

オーストラリアの研究者たちは、こうした複雑な状況を整理するために、農業を次の3つの軸から同時に変えていこうと提案しています。Phys.org


  1. Net Zero(ネットゼロ)

    • 農業からの温室効果ガス排出を最小化しつつ、土壌などに炭素を貯めることで、排出と吸収のバランスをゼロに近づける発想。

  2. Nature Positive(ネイチャーポジティブ)

    • 農地を「自然破壊の場」ではなく、生物多様性や生態系サービスを回復・強化する場に変えていく考え方。

  3. Nutrition(栄養)バランス

    • カロリーだけでなく、ビタミン・ミネラル・たんぱく質などの栄養バランスに優れた食料を生産し、健康格差を是正する視点。


これをまとめて**「3N(Net Zero, Nature Positive, Nutrition)」**と呼び、排出削減・自然保護・健康改善を同時に達成する枠組みとして提案しています。PMC+3Phys.org+3Nature+3

以下では、この3つをそれぞれ詳しく見ていきます。



5. Nその1:ネットゼロを目指す農業

5-1. 精密農業で「ムダな肥料」と「ムダな排出」を減らす

最初の柱は「ネットゼロ」です。


農業からの排出の多くは、家畜のメタンや、肥料から発生する亜酸化窒素、土壌からのCO₂放出などです。ここを賢く減らすために注目されているのが**精密農業(プレシジョン・アグリカルチャー)**です。Phys.org

  • 土壌センサーで水分量・窒素量をリアルタイムで把握

  • ドローンや衛星画像で作物の生育状況を可視化

  • 必要な場所に、必要な量だけ、適切なタイミングで肥料や水を与える


これにより、
「とりあえず一面に同じ量の肥料をまいておく」
というやり方から卒業し、コスト削減と排出削減を同時に実現できます。


日本でも、大規模稲作や施設園芸を中心に、ドローン散布や可変施肥技術が少しずつ導入されていますが、中小規模農家に届く価格帯・支援制度はまだ途上と言えます。



5-2. 肥料の作り方自体を変える

現在主流の窒素肥料は「ハーバー・ボッシュ法」によって製造されますが、これには大量の化石燃料エネルギーが必要で、製造段階でも多くのCO₂を排出します。

研究者たちは、再生可能エネルギーや新しい技術を使って、空気中の窒素から直接肥料を作る方法を模索しています。これが実用化されれば、農業の「見えない排出」のかなりの部分を削減できます。Phys.org+2EASAC+2



5-3. 土壌に炭素を「貯金」する

ネットゼロに向けては、排出を減らすだけでなく、**土壌に炭素を蓄える=「カーボン貯金」**も重要です。

  • 緑肥(クローバーやマメ科のカバークロップ)を植え、根や残さとして土に有機物を戻す

  • 収穫後の残さ(ワラなど)を焼かずに土にすき込む

  • 耕起を最小限に抑え、土壌構造を壊さない「不耕起栽培」を導入する


これにより、土壌の有機物が増え、炭素を長期的に固定することができます。再生型農業に関する研究でも、こうしたアプローチが土壌の炭素貯蔵・保水力・生物多様性の向上に役立つことが示されています。EASAC+4Nature+4サイエンスダイレクト+4



5-4. 家畜メタンを減らす“エサの工夫”とクリーンなトラクター

反すう家畜からのメタン排出を減らすため、

  • 海藻系の飼料添加物

  • 特定の脂肪酸や精油成分

  • 腸内微生物を調整するサプリメント

など、さまざまな技術が試されています。Phys.org


また、トラクターや農業用機械を電動化・水素化することで、農作業そのものからの化石燃料排出も減らせます。欧州やオーストラリアでは、すでに電動トラクターや水素トラクターの試験導入が始まっています。Phys.org



5-5. 廃棄物をエネルギーと肥料に変える

家畜のふん尿や作物残さは、従来「処理コストのかかる厄介者」とみなされてきました。


しかし、バイオガスプラントや堆肥化施設を使えば、

  • バイオガス発電による再エネ供給

  • 高品質な堆肥としての肥料化

といった形で「資源」に生まれ変わらせることができます。Phys.org+1


これらを組み合わせることで、「排出源」だった農場が、電気や熱を供給し、炭素を蓄え、肥料を循環させる拠点へと変わっていきます。



6. Nその2:ネイチャーポジティブな農業

6-1. 農地は「自然の敵」ではなく「自然を織り込むキャンバス」

次の柱は「ネイチャーポジティブ」です。

先ほど述べた通り、世界の住める土地の約半分が農業に使われています。Threads+4Phys.org+4Our World in Data+4

これほど広い面積を占める農地を、「自然を追い出す場」のままにしておくのか、それとも「自然を呼び戻す場」に変えるのかで、地球全体の生物多様性の行方は大きく変わります。


3N農業では、農地と自然を二項対立で考えるのではなく、

  • 生け垣(ヘッジロウ)

  • 防風林・シェルターベルト

  • 川沿いや谷筋の緑の回廊

  • 牧草地の中に点在する小さな林・湿地

などを農地の中に織り込んでいくことが提案されています。Phys.org



6-2. 自然は「飾り」ではなく「インフラ」になる

こうした自然要素は、「景色がよくなる」以上の役割を果たします。

  • 木陰が家畜や作物を日差し・熱波から守る

  • 地表を覆う植物が土壌温度を下げ、水の蒸発を防ぐ

  • 花の多い生け垣がポリネーター(花粉を運ぶ昆虫)を増やし、受粉を助ける

  • 天敵昆虫が害虫を食べ、農薬の使用量を減らす

  • 植生帯が雨水の流れを和らげ、土砂流出や栄養塩の河川流出を防ぐ

研究では、こうした「生態系サービス」をうまく利用することで、収量を維持したまま農薬や化学肥料を減らせる場合があることが示されています。Phys.org+1


自然は、単なる「飾り」ではなく、無料で働いてくれるインフラと捉え直すことがポイントです。



6-3. 「里山」にヒントがある日本

日本には、伝統的に里山と呼ばれる、人の手が入りつつも多様な生き物が共存する景観があります。

  • 田んぼ・畑

  • 雑木林

  • 小川・ため池

  • 住宅地

がモザイク状に組み合わさった里山は、まさにネイチャーポジティブな農業景観の先行例とも言えます。


しかし、過疎化・高齢化により管理が行き届かなくなった里山も増えています。3N農業の視点からは、

  • 里山の管理を**「地域の気候対策・生物多様性戦略」と結びつけて再評価**する

  • エコツーリズムや教育プログラム、カーボンクレジット制度と組み合わせる

といった形で、里山を「未来志向のインフラ」として復活させることが考えられます。



7. Nその3:栄養バランスを生む農業

7-1. 「カロリー」から「栄養」へ

3つ目の柱は「Nutrition=栄養」です。

気候や自然の話になると、ついCO₂や生物多様性に意識が向きがちですが、
そもそも農業の目的は、人間の健康を支える食べ物を作ることです。


研究では、土壌が健康で多様な微生物に富んでいるほど、作物のミネラルやビタミン、抗酸化物質の含有量が高くなる可能性が示されています。Phys.org+2Frontiers+2


つまり、

  • 土壌を傷める農業は、気候や自然だけでなく、人間の栄養価にも悪影響を及ぼしうる

  • 土壌を再生する農業は、より栄養価の高い食べ物を生み出す可能性がある

というわけです。



7-2. 単一作付けから多様な輪作へ

栄養バランスを高める3N農業では、

  • 毎年同じ作物だけを作る「単一栽培」から

  • 豆類・油糧作物・野菜・穀物を組み合わせた輪作・間作へ

の転換が重視されています。Phys.org

豆類を組み込めば、土壌中の窒素が自然に補給され、化学肥料の使用量を減らせます。多様な作物を育てることで、土壌微生物や地下の生物多様性も豊かになりやすいと考えられています。


日本でも、

  • 水田での麦・大豆との二毛作・輪作

  • 果樹園の下で野菜やハーブを育てるアグロフォレストリー

などが、この考え方と相性のよい取り組みです。



7-3. バイオフォーティフィケーションと品種改良

3N農業の議論では、

  • 土壌に特定のミネラルを補う

  • 有益な微生物を活用して、作物の栄養吸収を高める

  • 遺伝子レベルで栄養価を高める品種改良

といった**バイオフォーティフィケーション(栄養強化)**の技術も紹介されています。Phys.org+2Frontiers+2


これは、栄養不良が深刻な地域で、ビタミンA強化米や鉄分強化の豆などを普及させる取り組みともつながります。

同時に、EAT-Lancet委員会が提案する「プラネタリーヘルス・ダイエット」のように、
野菜・果物・豆類を増やし、赤肉や砂糖・飽和脂肪を抑える食事パターンへの移行も、健康と地球の両方にメリットがあるとされています。Le Monde.fr

農業は、こうした食事の変化を支える供給側のアップデートを担う必要があります。



8. 3つのNがそろうとき、農業は「多重の解決策」になる

Phys.orgの記事では、
ネットゼロ・ネイチャーポジティブ・栄養バランスの3つが同時に満たされると、効果が掛け算的に高まる
と指摘しています。気候チャンピオン+3Phys.org+3Nature+3


具体的には、

  • 精密農業と輪作・カバークロップで、肥料コストを削減しつつ土壌炭素と生物多様性を増やす

  • アグロフォレストリーで日陰と多様な食材(果物・ナッツ・木材)を生み出し、収入源を多様化しながら気候緩和にも寄与

  • 再生型牧草地で土壌を回復させつつ、放牧牛から得られる肉・乳製品の栄養価も高めていく

といった形で、
「農家の収入」「気候変動対策」「自然保護」「人間の健康」を同時に底上げする可能性が生まれます。


こうした取り組みは、すでに世界各地で始まっています。

  • ニュージーランドの酪農地帯では、データに基づく放牧管理や排水対策が進む

  • オーストラリアでは、土壌センサーと牧草品種試験を組み合わせたプロジェクトが展開中

  • 欧州の一部では、森林と農地を組み合わせたアグロフォレストリーが普及しつつある

  • 世界各地の先住民コミュニティは、伝統的な土地管理の知恵を生かした持続可能な農業を実践している

これらは、Phys.org記事が紹介する「未来の農場」の一端です。Phys.org+1



9. ボトルネックは「技術」ではなく「普及」と「政策」

では、3N農業を一気に広げるうえでの課題は何でしょうか。


記事の著者たちは、
「技術そのものは、かなりの部分がすでに存在している」
と指摘します。Phys.org+2FAOHome+2

  • 精密農業のセンサーや衛星・ドローン

  • メタン削減飼料添加物

  • カバークロップや輪作体系

  • 生物多様性をモニタリングするeDNA解析

  • デジタルツイン技術を使ったシミュレーション


問題は、

  1. これらを導入する初期コストを誰が負担するか

  2. 農家にとってリスクを取るインセンティブをどう作るか

  3. 小規模農家や途上国農家が取り残されないようにするにはどうするか

といった社会的・制度的な部分にあります。


また、**土壌の健康(ソイルセキュリティ)**をきちんと評価し、守るための国際的な枠組みもまだ十分とは言えません。



10. 日本の農業にとっての「3N農業」

ここからは、日本の文脈で3N農業を見てみます。


10-1. 日本農業の現状と課題

日本の農業は、

  • 高齢化と担い手不足

  • 中山間地域の耕作放棄地の増加

  • 輸入飼料や化学肥料への依存

  • 豪雨・猛暑・台風などの気候リスク

といった複数の課題に直面しています。


一方で、

  • 多様な気候帯(北海道から沖縄まで)

  • 里山・棚田・里海など、豊かな伝統的景観

  • 高度なICTインフラと精密機械技術

といった3N農業に活かせる強みも多く持っています。



10-2. 日本での「ネットゼロ農業」の可能性

日本でネットゼロ農業を進めるキーワードとしては、

  • 水田のメタン削減:中干しや落水・湛水の管理、省メタン品種の導入

  • 家畜糞尿のバイオガス化・堆肥化:地域バイオガスプラントと連携したエネルギー・肥料循環

  • 精密農業技術の普及:水田や畑作への可変施肥・リモートセンシング導入支援

  • ソーラーシェアリング:営農型太陽光発電でエネルギーと農業収入を両立(ただし景観・生態系への配慮が必要)

などが挙げられます。


特に、従来は「コスト」とみなされてきた糞尿や残さを、エネルギーと肥料に変える施設を地域単位で整備することは、地方創生やエネルギー自給とも親和性が高いテーマです。



10-3. 日本型「ネイチャーポジティブ農業」のモデル

日本には、

  • 魚やカエルが暮らす生物多様性豊かな水田

  • 畦や農道沿いの草地・林地

  • 里山・里海の統合的な管理

といった資源があります。


これらを3N農業の視点で評価し直し、

  • 「生きもの調査」を通じた教育プログラムやエコツーリズム

  • 生物多様性に配慮した農産物にプレミアム価格をつける仕組み

  • 森林・農地・河川をセットで考える流域単位のネイチャーポジティブ戦略

などと組み合わせれば、日本ならではのネイチャーポジティブ農業モデルが作れます。



10-4. 日本人の食と「栄養N」

日本では、伝統的な和食は「ヘルシー」とされる一方で、

  • 食の欧米化・加工食品の増加

  • 食塩や脂質の摂り過ぎ

  • 若い世代の朝食欠食やたんぱく質不足

など、栄養面での課題も指摘されています。


3N農業の観点からは、

  • 豆類・雑穀・野菜を増やした作付け

  • 乳製品・魚介・野菜のバランスを意識した地域ブランド作り

  • 子ども食堂や学校給食で、再生型農業で育てた食材を使う

といった施策が考えられます。


これは、EAT-Lancet委員会が提唱する「プラネタリーヘルス・ダイエット」とも方向性が近く、日本版の持続可能で健康的な食生活を再構築するうえで重要なポイントとなるでしょう。Le Monde.fr



11. 消費者・企業・自治体にできること

3N農業は、農家だけの努力では実現できません。


11-1. 消費者としてできること

  • 食品ロスを減らす
    世界では、食品の約3分の1が捨てられ、その処理過程だけで全排出量の1割前後を占めるとされます。Reuters+2UNFoodSystems+2
    家庭での買い過ぎ・作り過ぎ・賞味期限の誤解を減らすことは、最も手軽な気候対策の一つです。

  • 再生型・環境配慮型の農産物を選ぶ
    認証ラベルや産地情報をチェックし、土壌や生物多様性への配慮をうたう商品を選ぶことで、市場から3N農業を後押しできます。

  • 肉の量より「質」と「頻度」を見直す
    完全菜食でなくとも、赤肉の量や頻度を少し減らし、豆類・魚・野菜を増やすだけで、健康と環境の両方にメリットがあります。



11-2. 企業としてできること

食品メーカー・外食産業・小売企業などは、サプライチェーン全体に大きな影響力を持っています。

  • 原材料調達で再生型農業やアグロエコロジーに取り組む農家と長期契約を結ぶ

  • **スコープ3排出(サプライチェーンの排出)**に、農業由来の排出をきちんと含めて可視化する

  • 工場・店舗での食品ロス削減と余剰食品のアップサイクルに投資する

など、多くの企業はすでに一部の取り組みを始めていますが、3Nの観点から全体戦略を立てることで、より大きなインパクトが期待できます。Reuters+1



11-3. 自治体としてできること

自治体レベルでは、

  • 学校給食や公共施設の食材を、地域の3N志向農家から優先調達する

  • 流域単位で、森林・農地・河川・海をつなぐネイチャーポジティブな土地利用計画をつくる

  • 農家向けの再エネ導入・精密農業導入に関する補助金や技術支援を行う

などが考えられます。


特に日本では、自治体が農業と観光・防災・エネルギー政策をまとめて議論できるポジションにあるため、「気候×食×地域経済」をつなぐハブになることが期待されます。



12. 「問題」から「解決策」へ――農業のストーリーを書き換える

Phys.orgの記事は、最後にこう強調しています。

他のどのセクターも、気候変動対策・生息地の再生・栄養価の高い食料の供給を同時に達成することはできない。農業こそが、そのポテンシャルを持っている。Phys.org+1

エネルギーや交通が重要であることは間違いありません。


しかし、

  • 温室効果ガス排出の3分の1以上

  • 地球の住める土地の約半分

  • 人間の健康と文化の土台である食

この3つを握っているのは、紛れもなく農業と食料システムです。

だからこそ、農業を「環境破壊の元凶」として切り捨てるのではなく、
**「問題から解決策へ」**とストーリーを書き換えることが、これからの時代には不可欠です。


3N農業――
Net Zero(ネットゼロ)
Nature Positive(ネイチャーポジティブ)
Nutrition(栄養バランス)

という3つのNは、そのための整理の枠組みにすぎません。実際に農場を変えていくのは、世界中の農家と、それを支える消費者・企業・自治体・研究者です。


日本に暮らす私たちも、食卓での選択や、地域の農家との関わり方、仕事を通じたサプライチェーンの改善など、さまざまな場面で3Nの視点を取り入れることができます。

気候・自然・健康を同時に守る農業を、遠い未来の理想ではなく、「今すでに始まっている身近なアップデート」として捉えるところから、次の一歩が始まりそうです。



参考記事

自然、炭素、栄養:農業が気候問題の原因から解決策に転換するための3つの方法
出典: https://phys.org/news/2025-11-nature-carbon-nutrition-ways-farming.html

← 記事一覧に戻る

お問い合わせ |  利用規約 |  プライバシーポリシー |  クッキーポリシー |  クッキー設定

© Copyright ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア All rights reserved.