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身長は買えるのか? 3,000億ウォン市場に群がる親と企業

身長は買えるのか? 3,000億ウォン市場に群がる親と企業

2025年06月12日 01:59

1. はじめに──「センチメートルを買う時代」の到来

ソウル・江南(カンナム)の高層ビル群を抜けた先に、子どもたちの笑い声がこだまするビルの一室がある。壁一面に貼られた成長曲線グラフ。天井から吊り下げられたハーネスに身を預け、歩行マシンで背骨を引き伸ばされる小学生。ここは「身長クリニック」――急成長する“背を伸ばす”専門施設だ。

韓国では、学歴・外見に次ぐ「第三の競争軸」として身長へのこだわりが年々強まっている。成長ホルモン注射(以下GH)や脚延長手術はもはや一部セレブの話ではない。2023年時点で**約2,775億ウォン(約310億円)**と推計される国内市場は、2025年には3,000億ウォンを超える勢いだ。本稿では、この“背を伸ばす経済”の実態とリスク、SNS世論を多方面から掘り下げる。



2. 市場規模──急拡大する「トールエコノミー」

2.1 GH注射の爆発的需要

かつて保険適用は「身長が同年齢平均の-2SD以下」の重度低身長症に限られていた。ところが2019年の適用範囲拡大以降、処方件数は4年でほぼ倍増。保険外診療が全体の97%を占め、年間1000万ウォン超を自費で負担する家庭も珍しくない。

2.2 クリニックと製薬企業の台頭

  • 製薬大手:LG化学「ユートロフィン」、Dong-A ST「グルトロピン」などが国内シェアの約7割を占める。

  • 週1回製剤競争:ファイザー、メルクなど多国籍企業は“週一投与”で親の負担軽減を訴求。

  • 民間成長クリニック:2018年比で2.7倍に増え、理学療法や高圧酸素治療をパッケージ化した「合宿プログラム」も人気。



3. 背景にある「ハイトイズム」──文化・経済・K-POP

  • 就職と恋愛市場:「身長180cm以上」が航空会社CAやラグジュアリーブランドの採用条件になっていた事例が複数報告。

  • テレビ番組の影響:2009年、バラエティ番組で女性出演者が「180cm未満男子はルーザー」と発言し炎上、키작남(キジャクナム=背が低い男)という蔑称が定着。

  • K-POPの視覚効果:第四世代ボーイズグループの平均身長は180cm台前半。ハイヒールや厚底ブーツを差し引いても「高身長=スター」の図式が強化される。

この「背の大衆化」は、SNSによっても拡散。TikTokでは**#키성장주사**(身長成長注射)タグ付き動画が15万本以上投稿され、「月々6万ウォンで未来を買う」というキャッチコピーがバズっている。



4. 科学とセールストーク──“あと5cm”の論理

4.1 医学的エビデンス

  • 適応症:成長ホルモン分泌不全、ターナー症候群、慢性腎不全など。

  • 効果:欠損症では平均+4〜8cm、健常児では+1〜3cmにとどまるとの臨床試験が主流。

  • 思春期の壁:骨端線が閉鎖すれば注射効果はほぼゼロになる。

4.2 誇大広告

にもかかわらず、ウェブ広告では「12か月で最大+10cm」「医学的に安全」といった文言が踊る。韓国食品医薬品安全処(MFDS)は2024年以降、計215件の虚偽広告を摘発したものの、無許可サイトやインフルエンサーPRはいたちごっこの状態だ。



5. リスクと副作用──増え続ける警告例

主な副作用2021年報告件数2024年報告件数増加率
関節痛1123483.1倍
頭痛・高血圧952652.8倍
スコリオシス411463.6倍

脚延長手術では、術後6か月の車椅子生活、感染症、神経損傷のリスクが論文で報告。費用は6000万〜8000万ウォン、20代男性が主な顧客層だ。



6. SNSリアクション──肯定派 vs 懸念派

  • 肯定派

    • 「矯正歯科や英語塾と同じ“将来投資”」(Naverブログ)

    • 「平均より低いと受験面接で見下されるから当然」(KakaoTalk公開チャット)

  • 懸念派

    • 「副作用で片頭痛、でも返金はゼロ」(Nate Newsコメント1.2万いいね)

    • 「金でヒューマンバフを買う社会なんてディストピア」(Reddit r/korea)



7. 格差拡大──少子化とエリート育成消費の歪み

出生率0.72の韓国では、一人当たり教育費・美容費が加速度的に増大。低所得層はGHを受けられず、身長と年収の相関が再生産されるという指摘も。専門家は「身長経済は“身体的階級”を固定化する」と警鐘を鳴らす。



8. 政策と倫理──どこまでが治療で、どこからが美容か

  • 広告規制の強化:年齢下限の設定、事前カウンセリング義務化を盛り込んだ改正医療法案が国会審議中。

  • 代替施策:公共スポーツ施設の無料開放、低所得家庭への給食栄養改善補助。

  • 生命倫理学の視点:遺伝子編集議論と同様、「公平アクセス」と「身体自己決定権」のバランスが論点に。



9. 展望──バブルは弾けるのか

市場リサーチ会社は2035年まで年平均9%超の成長を予測。一方で、無許可薬輸入事件や集団訴訟が増えれば“GHバブル”が崩壊する可能性もある。いまや親たちはミリ単位で子どもの丈を測り、アプリが0.1cmの変化を通知する時代。社会全体が「見えない物差し」で測られていると言えるだろう。



10. おわりに──“成長曲線”のその先へ

江南のクリニックを出たミンソ(仮名・9歳)は、母親のスマホに映るグラフをのぞき込む。線がわずかに上向いた画面を見て、母は胸をなで下ろす。だがほんの一瞬後、アプリは「次回注射は明日」とリマインドを鳴らした。――背を伸ばす競争は、果たしてどこで終わるのか。 答えはまだ見えていない。



参考文献・情報源

TBS NEWS DIG(Yahoo!ニュース版)/Maeil Business News/Korea JoongAng Daily/IQVIA市場データ/韓国食品医薬品安全処(MFDS)発表資料/国内SNS(Twitter, TikTok, KakaoTalk, Naverコメント)/学術論文 “Long-term Safety of Growth Hormone Therapy” ほか多数。


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