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「水依存」って本当にあるの?――猛暑を乗り切る“ちょうどいい”水分補給の科学

「水依存」って本当にあるの?――猛暑を乗り切る“ちょうどいい”水分補給の科学

2025年06月22日 20:56

1 はじめに――水は命を守り、時に命を脅かす

日本の夏は気候変動の影響で年々高温化し、環境省が発表する熱中症警戒アラートの発令日数は2020年代前半と比べ約1.5倍に増加しました。暑熱下での水分補給は欠かせない一方、「水を飲み過ぎて倒れた」というニュースもしばしば耳にします。水分補給は「量」「タイミング」「組成」の三点をそろえてこそ安全――これが本稿の核心です。



2 “水依存”という言葉の正体

2-1 造語としての“依存”と医学用語の違い

巷で使われる“水依存”は学術用語ではありません。医学的に近い概念は以下の二つです。

用語定義主な原因代表例
心因性多飲症(Psychogenic Polydipsia)心理的要因で1日10 L以上飲み続ける精神疾患、ストレス精神科入院患者の4–6 %
水中毒(Exercise-Associated Hyponatremia など)水分過剰で血清Na<135 mEq/L長時間運動、極端な水分指導マラソン、軍隊訓練




2-2 国内外で増える過剰飲水の背景

  • SNSチャレンジ:「1ガロン(約3.8 L)の水を一気飲み」動画がバズり、救急搬送例が報告。

  • “脱水恐怖”:高齢者施設で介護スタッフが「汗をかく前に飲ませて」と過量指示。

  • ダイエット神話:「水を飲めば代謝が上がる」という誤解から、若年女性が1日8 Lを常飲。



3 暑い日の身体の水分動態

3-1 発汗のメカニズム

人体は体温を下げるため、汗腺から水分と電解質を放出します。標準的な成人が真夏の屋外で時速4 kmのウォーキングを30分行うと約0.5 Lの汗をかき、その中にはナトリウム40–80 mmolが含まれます。



3-2 発汗量の簡易推定式

  1. 運動前後で裸のまま体重を測定

  2. 体重減少(kg) × 1000 = 発汗量(mL)

  3. 補給した飲料量(mL)を加算し、30分当たりに換算



4 熱中症と脱水のリスク

ステージ主要症状体温手当の優先度
熱失神立ちくらみ、顔面蒼白38 ℃未満涼しい場所で仰臥位
熱疲労倦怠感、頭痛、吐き気38–40 ℃水+電解質、冷却
熱射病意識障害、けいれん40 ℃以上救急搬送、点滴


脱水は1 %で運動能力低下、2 %で集中力低下、3 %で熱中症リスク急増とされます。



5 水中毒の発症プロセス

  1. 多量の低電解質水を短時間で摂取

  2. 血漿浸透圧が低下

  3. 水が細胞内に移行し脳浮腫

  4. 頭痛・嘔吐→けいれん→意識障害→呼吸停止

1 時間に体重1 kgあたり0.8 Lを超える飲水が高リスクと報告されています。24 時間で10 L以上を飲んだ症例も。



6 安全な水分摂取量の目安

6-1 ベースライン(平常日)

日本人の食事摂取基準(2025年版)では1日の推奨水分総量を体重1 kgあたり35 mLと設定。体重60 kgなら約2.1 L。そのうち飲料としては約1.2 L、残りは食事・代謝水でまかないます。


6-2 暑熱環境での追加量

シーン推定発汗量追加すべき飲水量飲むタイミング
通勤・買い物+0.3–0.5 L/日起床後、外出前後、入浴後
屋外軽作業+250 mL/30分休憩時に必ず
持久系スポーツ体重減少2 %以内15–20 分ごと200–250 mL




7 電解質補給のコツ

  • 市販スポーツドリンク:Na 40–50 mg/100 mL。激しい運動や大量発汗時に最適。

  • 経口補水液(ORS):Na 80–110 mg/100 mL。熱射病の疑い、下痢・嘔吐時。

  • 自作レシピ:水1 L+食塩3 g+砂糖20 g+レモン果汁。

カリウムやマグネシウムはバナナ、ナッツ、ほうれん草などの食品で補うとバランスが良い。



8 年齢・体調別チェックポイント

高齢者

  • 喉の渇きを自覚しにくい。

  • 部屋の温湿度を可視化(温湿度計)し、1時間おきに100 mLを声掛けで促す。


子ども

  • 体表面積比が高く脱水が速い。

  • 30 分毎に水か薄めたスポーツドリンクを体重×5 mL目安で与える。



心・腎疾患・妊婦

  • 主治医の指示を優先し、必要なら水分制限。

  • 低ナトリウム血症の既往がある場合はORSを薄めて使う。



9 飲み方・管理のテクニック

  1. こまめに少量:200 mLを15 分ごと。

  2. 温度:5–15 ℃が吸収速度最適。胃腸が弱い人は常温。

  3. 利尿を促す飲料:カフェインは1 日400 mgが上限目安。アルコールは脱水を助長。

  4. 尿色チェック:淡いレモン色が理想。無色透明は過飲の兆候。

  5. アプリ活用:体重・摂取量・屋外気温を記録し、警告アラートを設定。



10 セルフチェック&応急対応

セルフチェック6項目

項目〇なら注意
1日飲水量が4 L超□
夜間排尿3回以上□
尿が無色で無臭□
顔や手足がむくむ□
頭痛や吐き気が続く□
体重が朝夕で2 kg以上増減□


3項目以上該当なら水分摂取を見直し、医療機関に相談を。



応急対応

  • めまい・頭痛:摂取を中止し、ナトリウム含有飲料を少量

  • 嘔吐・意識障害:119番通報、体温・バイタル測定

  • 搬送時は飲料を無理に飲ませない



11 職場・学校・地域でできること

  • 企業の熱中症ガイドライン:OSHA基準を参考に「WBGT 28 ℃で15 分休憩」を義務化。

  • 学校部活動:監督・コーチが選手の体重減少率を練習前後に測定し2 %以内に管理。

  • 自治体:駅や図書館をクーリングシェルターとして開放し、冷水機を設置。



12 将来展望――温暖化時代の“水リテラシー”

IPCC第6次報告書は、2100年までに東京の年平均気温が3 ℃上昇すると予測しています。熱中症死者数は2040年代に現在の1.8倍になる見込み。水リテラシー教育を小中学校の保健体育カリキュラムに正式導入し、職場・地域で継続学習を図ることが急務です。



13 まとめ

  1. 「飲まなすぎ」も「飲みすぎ」も命取り。

  2. 目安は体重×35 mL+発汗量、タイミングは「こまめに少量」。

  3. 電解質を忘れずに。水だけを大量に飲まない。

  4. 尿色・体重・気温をモニタリングし、適量を自分でコントロールする習慣を。

  5. 異変を感じたら早めに医療機関へ。

この五つの原則を守れば、真夏の日本でも安全にアクティブな毎日を送ることができます。



14  参考記事一覧

  1. 全国労働者共済生活協同組合連合会
    「水中毒・多飲症とは?原因や対策を知って注意しよう!」

  2. 朝日新聞デジタル
    「怖い水中毒 熱中症には警戒が必要、でも水の飲み過ぎにも注意を」(2024-08-10)

  3. 厚生労働省
    『健康のため水を飲もう』推進運動リーフレット(2025年版)

  4. 日本救急医学会
    『熱中症診療ガイドライン2024』

  5. 環境省
    「職場における熱中症予防 基本対策のススメ 2025」

  6. 日本体育協会(現:日本スポーツ協会)
    『スポーツ活動中の水分・塩分補給ガイド』改訂第3版

  7. American College of Sports Medicine
    Exercise-Associated Hyponatremia Consensus Statement, 2023

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