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「トランプ関税、やっぱり物価を上げていた」 — “敗北宣言”から始まるインフレ選挙の行方

「トランプ関税、やっぱり物価を上げていた」 — “敗北宣言”から始まるインフレ選挙の行方

2025年11月17日 01:25

「関税は他国が払う」はずだった

「関税はアメリカ人ではなく他国が払う」。
ドナルド・トランプ大統領が長年繰り返してきたこの主張が、ついに自らの言葉で揺らいだ。

11月14日、トランプ政権は牛肉、コーヒー、バナナなど、スーパーの定番品を中心とした200以上の農産品の関税を撤廃すると発表した。いわゆる「解放の日(Liberation Day)関税」の部分的な撤回である。AP News


大統領はエアフォースワンの機内で記者団に囲まれ、関税が物価に与える影響を問われると、「場合によっては、価格を押し上げているかもしれない」と述べたと報じられている。AP News


「他国が支払う」と強弁してきた関税が、結局は米国民の食卓を直撃していたことを、ようやく部分的に認めた格好だ。


解放の日関税とは何だったのか

そもそも「解放の日」関税とは何だったのか。
2025年4月、トランプ氏はホワイトハウスのローズガーデンで、「これはアメリカの経済的独立宣言だ」と高らかに宣言し、ほぼ全ての輸入品に一律10%の関税を課す政策に署名した。対日や対中など、貿易赤字が大きい国にはさらに高い「報復関税」を上乗せするという攻撃的な内容だ。ウィキペディア


政権側は、関税収入で国内産業を守りつつ、減税やインフラ投資の財源にもできると主張した。しかし現実には、輸入コーヒーや牛肉、果物などの価格が急騰し、アメリカ人の食卓を直撃。とくにコーヒーは、ブラジルやベトナムなど主要生産国への高関税がそのまま価格に乗り、高級品どころか「毎朝の一杯」すら値上がりした。ポリティコ


一方で、関税の法的根拠となった「国家非常事態」宣言は裁判で違法性を問われ、国際経済法や憲法の専門家からも批判が集中していた。ウィキペディア


物価高と選挙が迫った「転換点」

今回の関税撤回の背景には、単なる経済理屈を超えた政治的現実がある。

まず物価。米政府統計によれば、食料品価格はここ3年で高止まりが続き、特に牛肉とコーヒーの上昇が目立つ。Reuters
ガソリンや家賃、光熱費の負担も重く、世論調査では有権者の6割以上が「トランプ政権の経済運営に不満」と回答。ザ・デイリー・ビースト


さらに追い打ちをかけたのが、バージニア州やニュージャージー州の地方選での共和党大敗だ。いずれも「生活費の高騰」が争点となり、野党民主党が「トランプ関税が国民への隠れ増税だ」と攻勢を強めていた。AP News


民主党のドン・ベイヤー下院議員は、「トランプは、関税がアメリカ人の財布を痛めつけていると、ようやく認めざるを得なくなった」と皮肉たっぷりにコメントしている。AP News


政権側も危機感を隠さない。財務長官スコット・ベッセントは、関税撤回と同時に「コーヒーやバナナの価格を素早く下げる」と繰り返しアピールし、「2026年にはタリフ・ディビデンド(関税配当)として国民1人あたり2,000ドルを還元する」といった構想まで打ち出した。ポリティコ


しかし、「関税で物価を上げておいて、今度は配当で人気取りか」という冷笑も広がっている。


SNSが描いた三つの物語

今回の関税撤回と“事実上の敗北宣言”に対し、SNSはどのように反応したのか。X(旧Twitter)やThreads、TikTokの投稿を眺めていると、大きく三つの物語が浮かび上がる。

1. 生活者の安堵と皮肉

最も多いのは、生活防衛の視点からのリアクションだ。

あるユーザーは、値札がびっしり並ぶスーパーの牛肉売り場の写真を投稿し、「ようやく“トランプ税”付きステーキから解放される?」とコメント。別のユーザーは、コーヒーのレシートに赤ペンで大きく×を付け、「この上乗せ分、全部返してほしい」と怒りをにじませる。


ハッシュタグには
#GroceryGate(食料品ゲート)
#TariffFail
といった言葉が並び、「解放の日」どころか「家計を縛る日だった」との自虐的なミームが拡散している。Business Insider


今後本当に価格が下がるのか、どの程度いつ反映されるのか——多くの投稿が、期待と疑念の入り混じったトーンだ。


2. 政治的敗北としての「白旗」

進歩派アカウントや経済学者の間では、今回の撤回は「トランプ経済の敗北宣言だ」とする見方が主流だ。

政策批評系のインフルエンサーは、食料品価格のグラフとトランプの過去発言を並べ、「『関税は他国が払う』と言い張っていた頃」と「『場合によっては我々も払っている』と認めた今」とを対比させる画像を投稿。いいねとリポストを大量に集めている。


また、ウォール街で生まれたという「TACO(Trump Always Chickens Out)」というニックネーム——強硬な関税を打ち上げてはマーケットの反応を見て後から引っ込める——を引用し、「今回もタコ発動」と茶化すポストも目立つ。ウィキペディア


こうした投稿は、リベラル層だけでなく、財界や保守系の一部にも共有され、「予測不能な関税はビジネスのリスクだ」との不満を可視化している。


3. 支持者の“4Dチェス”解釈

一方、熱心なトランプ支持者のタイムラインを覗くと、全く違う物語が語られている。

あるアカウントは、「関税は交渉のカード。目的を達成したら下げるのは当然。これがトランプ流の4Dチェス」と投稿。別のユーザーは、「民主党とフェイクニュースが『物価が高い』と騒ぐから、あえて刀を一度鞘に収めただけだ」と擁護する。


彼らにとって、今回の撤回は「敗北」ではなく「柔軟な戦術変更」であり、むしろ「国民の声を聞いた強いリーダー」の証拠なのだ。将来、本当に2,000ドルの「関税配当」が支給されれば、「ほら見ろ」と勝ち誇る準備はできている。


Foxニュースの違和感とメディアの役割

興味深いのは、トランプ氏に近いとされる保守系メディアからも、最近は物価問題への疑問が出始めている点だ。たとえばFoxニュースのインタビューで、司会者が「コーヒー価格も大きく上がっている」とトランプ氏に食い下がり、政権の楽観的な物価認識に異を唱えた場面が話題になった。ザ・デイリー・ビースト


右派メディアの一部が生活費の高さを正面から取り上げ始めたことは、政権にとって象徴的なシグナルだ。SNS上でも、「ついにFoxまで…」という驚きと、「もっと早く言ってほしかった」という苛立ちが交錯している。


世界のサプライチェーンと日本への波紋

今回の関税撤回は、アメリカ国内だけの話ではない。

牛肉やコーヒー、熱帯果物の輸出国であるブラジルや中南米諸国にとって、米市場向け関税の引き下げは追い風となる。実際、トランプ政権はエクアドルやグアテマラ、アルゼンチンなどとの新たな貿易枠組みも同時に発表している。AP News


日本からの輸出品は今回の対象から外れているが、「いつ関税をかけられるか分からない」という不確実性は残る。第二次トランプ政権発足後、米政府は日本製品に24%の「相互関税」を課す可能性に言及したこともあり、日本企業は常にリスク管理を迫られている。ウィキペディア


世界のサプライチェーンは、トランプ流関税政策の“気まぐれ”に何度も振り回されてきた。今回の撤回は一息つかせる材料ではあるものの、「またいつ方針がひっくり返るのか」という不安は消えていない。


象徴としての「小さな一言」

結局のところ、トランプ大統領が「アメリカ人が何かしら支払っているかもしれない」と口にした一言は、経済学の世界では当たり前すぎる認識に過ぎない。関税は輸入企業や小売業者を通じて、最終的に消費者価格へ転嫁される——教科書レベルの話だ。Reuters


それでも、この“小さな一言”がこれほど注目を集めたのは、トランプ流ポピュリズムの象徴的な後退だからだろう。
「他国にツケを回して自国民を守る」という単純で分かりやすい物語は、現実の複雑な価格メカニズムの前で破綻した。


もちろん、関税を一部撤回したからといって、即座に物価が元通りになるわけではない。物流コストや気候変動、為替の変動など、価格を動かす要因は多岐にわたる。だが、少なくとも「関税はタダ乗りの魔法の道具ではない」という事実が、大統領自身の口から語られた意味は小さくない。


日本の読者への問いかけ

日本でも、円安やエネルギー価格高騰の中で「物価」と「政治」の関係がかつてなく注目されている。アメリカで起きていることは、決して対岸の火事ではない。

・人気取りのための単純なスローガンが、長期的なコストとして国民に跳ね返ってこないか。
・物価高が続く時、政治家は「外的要因」を強調するだけでなく、自らの政策の影響をどこまで認めるのか。
・SNSでの怒りや皮肉は、単なるガス抜きに終わるのか、それとも政策転換を迫る圧力となりうるのか。

トランプ関税の“敗北宣言”は、こうした問いを私たちにも突きつけている。
ビーフとコーヒーの値札を見上げるアメリカの買い物客の姿は、今日の日本のスーパーの風景と驚くほど重なって見えるかもしれない。



参考記事

トランプ氏、ついに関税が価格を引き上げることを認める
出典: https://www.motherjones.com/politics/2025/11/trump-finally-admits-his-tariffs-raise-prices/

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