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トランプ2期目、揺れるサンフランシスコとITマネー ─ ベニオフ騒動が映す亀裂

トランプ2期目、揺れるサンフランシスコとITマネー ─ ベニオフ騒動が映す亀裂

2025年11月18日 23:43

「リベラルの顔」だったテック富豪が、一夜にして“裏切り者”に

クラウド大手SalesforceのCEO、マーク・ベニオフは、長年サンフランシスコを代表する「進歩的ビジネスリーダー」として知られてきた。LGBTQ+の権利擁護や気候変動対策に巨額の寄付を行い、ホームレス支援のための新税にも自ら資金を投じてきた人物だ。The Washington Post


ところが2025年10月、そのイメージが一変する。トランプ大統領(2期目)が犯罪対策としてサンフランシスコにナショナルガードを投入する構想を示した際、ベニオフがニューヨーク・タイムズの取材に「警官が足りないなら、彼らが警官役になれるなら大歓迎だ」と応じたと報じられたのだ。newsweek.com


治安悪化への不安が高まるなかとはいえ、連邦軍の派遣を容認する発言は、リベラル都市サンフランシスコにとって“禁句”に近い。これまでトランプと距離を取ってきたはずのベニオフが、突然大統領の構想を支持した──そのニュースは瞬く間に拡散し、政治とビジネス、そしてSNS空間を巻き込む大炎上へと発展していった。The Washington Post



政治家たちの怒り:「これはガットパンチだ」

最初に激しく反応したのは、サンフランシスコ市政の中枢だ。市議会(Board of Supervisors)議長のラファエル・マンデルマンは、ベニオフの発言を「ガットパンチ(鳩尾への一撃)」と表現し、市長や保安官、地方検事も一斉に「連邦軍は解決にならない」と批判した。The Washington Post


ニュース週刊誌は、ある民主党系議員の言葉として「サンフランシスコを支援すると言いながら、占領を望むことはできない」と伝える。ナショナルガードの投入は、トランプ政権1期目にポートランドやシカゴで行われた強硬策を想起させる。あのとき市民が拘束され、移民が弁護士もつけられないまま連行された記憶が、リベラル層の頭から消えていない。The Times of India


そんな中、進歩派の市議コンニー・チャンらは「この発言は最後の一線を越えた」として、超高額報酬の経営者に追加課税する新たな市税案を準備。市が直面する財政・交通・ホームレス問題の負担を、テック業界トップにももっと負わせるべきだという論理だ。企画の背景には、まさにベニオフの一言があったと地元メディアは報じている。The Washington Post



社内からも「嘔吐き」リアクション 社員が感じた“価値の裏切り”

火の手は社内にも及んだ。ワシントン・ポストによれば、ニューヨーク・タイムズの記事が社内チャットに貼られると、約200人のSalesforce社員が「嘔吐き顔」絵文字でリアクションしたという。「これは私たちの価値観と真っ向から矛盾している」といった書き込みもあった。The Washington Post


Salesforceは「平等」「サステナビリティ」を掲げ、ダイバーシティやジェンダー平等を前面に出してきた企業だ。創業者自らがインディアナ州の反LGBTQ法に反対し、州への投資縮小をちらつかせて政府に修正を飲ませた“武勇伝”は、今も社内外で語り草になっている。そのトップが軍の投入を歓迎したとなれば、社員がショックを受けるのは当然だろう。The Washington Post


redditのr/salesforceやr/sanfranciscoでも、「ベニオフは自分で築いた“進歩的ブランド”を一瞬で台無しにした」「金で街を救ってきたが、同時に街を恐れている」といった投稿が目立った。なかには「Marc Benioff exposed himself as craven and hollow. He’s not alone(彼の空っぽさが露わになった。彼だけじゃない)」と題されたスレッドも立ち、テック富豪全体への不信がぶつけられている。Reddit



SNSの分断:リベラルの失望 vs. 安全を求める声


 


SNS上では、ベニオフ批判が主流だ。X(旧Twitter)では、地元ジャーナリストがホームレスが眠る路上の写真とともに「この街を愛していると言うなら、軍靴ではなくケアで応えてほしい」と投稿し、多くのいいねを集めた。別のユーザーは、ベニオフがトランプ再選後に大統領を祝福するポストを相次いでいたことを引用し、「これは偶然ではなく、彼の“右傾化”の一環だ」と指摘する。The Washington Post


一方で、「ナショナルガードに来てほしい」という少数派の声も無視できない。r/sanfranciscoには「警官が減りすぎて、夜のダウンタウンは怖くて歩けない」「夢のように語られた“テックバブルの成功”の代償を、市民が払わされている」といった書き込みが並ぶ。ベニオフ発言を擁護する投稿の多くは、街の治安悪化に長年苛立ちを抱えてきた住民だ。Reddit


つまりSNSの反応は、「リベラルな価値観の裏切り」と「安全への絶望的な要求」という二つの感情がぶつかり合う場になっている。ベニオフは、まさにその狭間に立たされてしまったわけだ。



トランプとの距離感:“敵”から“ビジネスパートナー”へ?

混乱を大きくしたのは、トランプ政権との微妙な距離感だ。ベニオフは2017年の初就任式に姿を見せず、ダボス会議から「大統領が変わっても我々の価値観は変わらない」と語っていた。しかし2期目に入ったトランプがサンフランシスコを「犯罪の温床」となじり、ホワイトハウスの新舞踏室には多くのテック企業が寄付を行うなか、ベニオフも大統領主催の晩餐会に出席するなど、関係が徐々に近づいていたと報じられている。The Washington Post


Salesforceにとって米政府は「最大かつ最重要の顧客」であり、数十億ドル規模の売上をもたらす存在だ。国防総省や陸軍との大型契約を取り付けるため、ベニオフは新たな官公庁向け事業部門「Missionforce」を立ち上げてもいる。そんな中でのナショナルガード賛同発言は、「ビジネスのために大統領に寄り添ったのではないか」という疑念を呼ぶには十分だった。The Washington Post



そして謝罪へ:ベニオフはどう語り直したのか

批判が高まるなか、ベニオフはDreamforce終了直後の金曜日、Xに長文の謝罪文を投稿する。そこでは「サンフランシスコの仲間や地元リーダーの声を聞き、今回のコメントが不安を招いたことを深くお詫びする」「史上最大かつ最も安全なDreamforceを経験した今、ナショナルガードは必要ないと考えている」と述べ、立場を完全に覆した。SFGATE


さらに彼は、発言の背景について「イベントの安全確保に対する過剰な慎重さから出たものだった」と釈明。実際、ベニオフは毎年Dreamforceのために数百人の警官を雇っていると語っており、「警察官が足りない」という認識自体は以前からあった。だがその不安を、連邦軍の導入支持という形で口にしてしまったことが、致命的な政治的ミスとなった。newsweek.com


皮肉なことに、ベニオフはその後、NVIDIAのジェンセン・フアンらと共にトランプに働きかけ、サンフランシスコへのナショナルガード派遣計画を撤回させたと報じられている。大統領は「友人たちの頼みで今回は見送る」と語り、最終的には市長ダニエル・ルーリーとの合意のもと、連邦部隊の“サージ”は取りやめになった。People.com



実は誰よりも「サンフランシスコに投資してきた男」

忘れてはならないのは、ベニオフがサンフランシスコに投じてきた資金の規模だ。彼と妻リンは、地元の小児病院や研究機関に数百億円規模の寄付を行い、2025年だけでもUCSFベニオフ小児病院に1億ドル、市内の公立学校や教育NPO、病院などにSalesforceとして3900万ドルを拠出している。累計ではベイエリアへの寄付総額は10億ドルを超えるという。The Washington Post


彼のルーツは4世代続く地元のビジネス一家だ。若い頃からプログラミングに没頭し、オラクル最年少VPを経て、1999年にSalesforceを創業。サンフランシスコ最大の民間雇用主に育て上げ、ホームレス対策税「プロポジションC」をめぐる市内の論争で、7.9百万ドルもの資金を“賛成派キャンペーン”に投じたこともある。The Washington Post


だからこそ、一部のリベラル系リーダーも単純な“断罪”を避ける。ヒラリー・クリントンは「彼がコミュニティのためにしてきたこと全体を見て評価すべきだ」とコメントし、企業慈善の先駆者としての功績を認めたうえで、発言には責任を求めるべきだと語った。The Washington Post


オークランドのシンクタンク「Project on Private Wealth and Democracy」のアーロン・ホルバートは、今回の騒動を「超富裕層を“市民の英雄”に祭り上げることの危険性が露わになった瞬間だ」と分析する。選挙で選ばれたわけではない彼らは、市民よりも大きな影響力を持つ一方で、その力は良い方向にも悪い方向にも使われうる、と。The Washington Post



テック富豪とリベラル都市の「共存」は可能か

サンフランシスコは長らく、テックとリベラル政治が共存する象徴的な街だった。市政は企業にホームレス対策税や最低賃金引き上げを求める一方、テック企業は高給の雇用と寄付金で街を支え、その最前線にベニオフがいた。メディアが彼を“最もウォークな(意識の高い)ビジネスリーダー”と呼んだのも、その文脈の中でだ。The Washington Post


しかしパンデミック以降、リモートワークの拡大と治安不安、ドラッグ問題が重なり、ダウンタウンの空室率は上昇。ベニオフ自身もハワイに移住し、サンフランシスコの現状に対する辛辣なコメントを繰り返すようになった。2023年にはDreamforceの開催地を他都市へ移すと脅し、2025年のナショナルガード発言に至るまで、彼の言動には「街への愛」と「街への苛立ち」が入り混じっていたように見える。The Washington Post


今回の騒動で、市はベニオフに対して感情的な距離を置く一方、現実には彼の寄付や企業としての存在に依存せざるを得ない。市長ルーリーは治安回復のためにテックCEOを諮問役として招き、警察採用のキャンペーンにベニオフから100万ドルの寄付を受け取っている。つまり、「批判しながらも頼らざるを得ない」という複雑な関係が、これまで以上に露わになったのだ。The Washington Post



ベニオフ騒動が投げかける問い

今回のベニオフ騒動は、一人のCEOの失言以上の意味を持つ。

  1. ビジネスと政治の境界はどこにあるのか
    企業トップが政治的発言を行うことは、もはや例外ではない。しかしビジネス上の利害と地域コミュニティへの責任が衝突したとき、どちらを優先すべきかというルールは存在しない。

  2. 「ウォーク資本主義」の限界
    リベラルな価値を掲げることでブランドを築いてきた企業は、その価値観を裏切ったと見なされた瞬間、他のどの企業よりも激しい反発を受ける。ベニオフは、そのリスクを誰よりも理解していたはずだ。

  3. 超富裕層にどこまで頼るべきか
    サンフランシスコの病院や学校、公共空間は、ベニオフのような寄付なしには成り立たない部分もある。同時に、彼らに頼るほど民主的なプロセスは弱まり、「気まぐれな一言」で街の方向性が左右されかねない。

ベニオフは謝罪し、トランプの“サージ”を止める側に回ることで、一定の挽回を図った。しかし、一度失った「リベラルの象徴」というイメージが戻るかは不透明だ。


サンフランシスコはこれからも、テックマネーとリベラル政治の間で揺れ続ける。その最前線に立つのが、これからのベニオフなのか、それとも彼に代わる新たなリーダーなのか──今回の騒動は、その問いを私たちに突きつけている。




参考記事

テック業界の億万長者である慈善家がトランプとサンフランシスコの間でどのように板挟みになったか - ワシントン・ポスト
出典: https://www.washingtonpost.com/technology/2025/11/16/marc-benioff-controversy-san-francisco/

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