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「SNSさらし」は正義か私刑か――誰もが“監視カメラ”を持つ社会で、私たちは失敗できるのか

「SNSさらし」は正義か私刑か――誰もが“監視カメラ”を持つ社会で、私たちは失敗できるのか

2025年12月22日 16:53

1. いま起きている「SNSさらし」とは何か

「SNSさらし」とは、迷惑行為・違法行為・規範違反(万引き、暴言、ポイ捨て、歩きたばこ、鉄道マナー違反など)を撮影し、SNSで本人が特定できる形のまま公開・拡散する行為を指す。


ポイントは、その場の注意や通報ではなく、“公開による制裁”がセットになりやすいことだ。拡散が進むと、投稿者の意図を超えて住所や勤務先の推測、家族への攻撃、脅迫的なコメントまで連鎖し、「罰」が雪だるま式に膨らむ。

この現象が、単なるネット炎上ではなく「社会の仕組み」に近づいている――そう実感させる事例が、海外で起きた万引き映像の拡散だった。NEWSjp



2. 事例:修学旅行中の万引き映像が「世界へ」拡散した

報道では、修学旅行で海外(インドネシア)を訪れていた日本の高校生数人が万引きをしたとされ、学校側は謝罪し指導の見直しに言及した。NEWSjp
ただ、社会の注目を決定的に集めたのは、店舗が公開した防犯カメラ映像がSNSを通じて拡散し、高校生の顔が世界中に“さらされる”状態になった点だった。ネット上には「人生終わり」といった苛烈な反応が並び、「デジタルタトゥー(消えにくい記録)」の重さが改めて議論された。NEWSjp


ここで重要なのは、万引きが悪い/許されない、という話で終わらないことだ。
“罰”を誰が、どんな手続きで、どこまで与えるのか。私たちはいつの間にか、法律と裁判の外側に「公開制裁」という巨大な回路を育ててしまった。



3. 「正義の告発」側の論理:抑止力になるという主張

議論の中で、「さらすことが抑止力になる」という立場が語られた。例として、ひろゆき氏は、法や警察の目が届かない領域を“さらし”が補う面があるとし、「さらす本屋」と「さらさない本屋」なら、子どもはさらされない店を狙うので、結果として犯罪抑止になる、という趣旨の見解を示した。NEWSjp


この主張の強みは、感情ではなく「効果」に寄せている点にある。
たとえば、駅や店舗で迷惑行為が繰り返されると、「注意してもやめない」「通報しても現行犯でなければ動けない」と感じる人が出る。そこで“公開”は、即効性のある「罰」として機能してしまう。

しかし、この即効性は同時に危険でもある。なぜなら、公開制裁は正確性・比例性・救済を確保しづらいからだ。



4. 「私刑」側の警告:事実誤認と過剰制裁は一度始まると止まらない

別の立場からは、そもそもネットでは「被害者/加害者がいつ逆転するかわからない」こと、見えている事実が全てではないこと、さらす側が逆に大きな被害を受ける可能性があることが指摘された。NEWSjp


さらに、SNSトラブルに詳しいライターの武藤弘樹氏は、さらし行為が十分に社会で議論されないまま増殖していること自体を問題視し、顔が映った状態でさらすと、バズった瞬間に制裁が投稿者の手を離れ、群衆心理で際限なく先鋭化していく――だからこそ線引きが必要だ、と警鐘を鳴らした。NEWSjp

ここで本質なのは、「悪いことをした人は叩かれて当然」ではなく、
叩く側が“無限の権力”を持つ仕組みになっていないか、という点だ。



5. 法的リスク:さらした側も責任を問われうる

SNSで個人の顔や情報を拡散する行為は、内容や状況によって、名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害などの問題になり得る。実際、議論の中でも「相手がマナー違反でも、拡散はプライバシー侵害や名誉毀損に問われ得る」というリスクが語られている。NEWSjp


日本の刑法上も、名誉毀損(刑法230条)や侮辱(231条)といった枠組みがあり、ネット上の誹謗中傷との関係が整理されている。法務省
また、侮辱罪の厳罰化を含む議論では、正当な表現との線引き(公正な論評など)も論点として扱われてきた。法務省+1


さらに「映像」には、文章以上に強い個人特定性がある。顔、声、服装、位置情報、背景、同行者――断片が積み上がれば、本人が特定されやすい。プライバシー侵害については、判例の積み重ねがある領域でもある。PPC

※ここは一般論であり、個別案件の違法性判断は専門家に確認してほしい。



6. “監視社会”の心理コスト:自由は「放っておいてもらえること」でもある

哲学者・森脇透青氏は、スマホによって「全員が監視カメラを持つ」状態になり、かつて議論されたはずの「自由とのセットで本当にいいのか」が忘れ去られている、と述べた。さらに、デジタルタトゥーによって失敗できない相互監視になり、生きづらさが増している、という問題意識を示した。NEWSjp

ここで言う「自由」は、好き勝手する自由だけではない。
**“一度の失敗で社会から永久追放されない自由”**でもある。


人は、失敗して、謝って、学んで、関係を修復していく。
その回復の余地が、公開制裁によって潰されていないか――この問いは、世界共通の課題だ。



7. 国際比較:世界でも広がる「晒し文化」と、対応の違い

「晒し」は日本特有ではない。欧米でも“public shaming”“cancel culture”“doxxing(個人情報暴露)”などの形で問題化してきた。
制度面で象徴的なのが、EUのGDPR(一般データ保護規則)にある**消去権(いわゆる“忘れられる権利”)**で、一定の条件のもとで個人データの削除を求められる枠組みが明文化されている。


ただし、現実には「一度コピーされて再投稿された情報」まで完全に消すのは難しい。だからこそ、各国で共通して問われているのは、法律だけではなく、プラットフォームの運用、通報導線、教育、そして私たちの“拡散の指”そのものだ。



8. 「さらす」以外の道:公的な通報ルートを社会に実装する

近畿大学の夏野剛氏は、法律があっても警察の目が届かない場面では「わからない」で終わり得るとしつつ、万引きなど犯罪について一定の抑止効果は必要だという考えを示した。その上で、さらすのではなく、駐車違反のようにデータを公的機関へ直接出せる仕組みを社会に組み込む発想があり得る、と提案している。NEWSjp


これはとても重要な方向性だ。
私たちは「さらす」を選びがちだが、それは多くの場合、“通報しても無駄”という諦めが背後にある。ならば、諦めを生む構造を直す――つまり、

  • どこに通報すべきか分かる

  • 証拠の出し方が整っている

  • 相談や削除要請につながる

  • 被害者が孤立しない


こうした“社会のUI”を整える方が、長期的には健全だ。



9. 私たちが今すぐできる「線引き」チェックリスト

怒りや正義感は自然な感情だ。問題は、その感情を“公開制裁”に変換する回路が、簡単すぎること。投稿する前に、次の5点だけは点検してほしい。


  1. 目的は何か?(注意喚起か、制裁か、笑いもの化か)

  2. 必要か?(通報・店員への連絡・管理者への報告で足りないか)

  3. 本人特定性を下げたか?(顔・声・位置情報・制服・ナンバー等の処理)

  4. 比例しているか?(ミスと犯罪、初犯と常習、危険度の差)

  5. 訂正と回復の道を残したか?(誤認時の削除、謝罪、情報更新)


「正義」だと思った瞬間ほど、チェックが必要になる。
正義は、しばしば最も暴走しやすい。



10. 結論:SNSさらしは“正義”にも“私刑”にもなる。だから仕組みが要る

「SNSさらし」は、ある場面では被害者の救済や抑止に見える。だが同時に、事実誤認・過剰制裁・永久標識化(デジタルタトゥー)によって、人の人生を壊す私刑にもなり得る。NEWSjp


スマホで誰もが“監視カメラ”を持つ時代に必要なのは、「さらす/さらさない」の二択ではない。
公的手段へつながる通報導線、プラットフォームの透明な運用、そして私たちの“拡散しない倫理”――この3点セットだ。

失敗できない社会は、誰にとっても息苦しい。
だからこそ、私たちは「罰の快感」より、「回復の仕組み」を選べる社会でありたい。


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