“減害”の前提が揺らぐ? 加熱前から“毒性” ─ 電子タバコのリキッド、何が起きているのか

“減害”の前提が揺らぐ? 加熱前から“毒性” ─ 電子タバコのリキッド、何が起きているのか

「電子タバコは“燃やさない”から安全」——そんなイメージが、世界中で一人歩きしてきた。ところが今回、ブラジルの研究が突きつけたのは、もっと手前の段階、つまり**“加熱する前のリキッドそのもの”**に潜む危険性だ。PUC-Rio(ポンティフィシア・カトリカ大学リオ校)とFURG(リオ・グランデ連邦大学)の研究者らは、違法に流通するeリキッドを分析し、加熱前でも細胞にダメージが出る可能性を示した。 InfoMoney


「吸う前」から始まるダメージ——研究は何を見たのか

研究チームが注目したのは、通常“吸引リスク”として語られがちなエアロゾル(蒸気)ではなく、**未加熱の液体(eリキッド)**そのもの。ブラジル国内で違法に出回る製品を、ユーザーからの提供で集め、ラベル表示や申告された由来(ブラジル、中国、欧州、パラグアイ、米国など)で分類した。InfoMoney


毒性評価では、eリキッドを酵母(Saccharomyces cerevisiae)ラット細胞に、濃度を変えて曝露。すると、濃度や化学組成に応じて、細胞の増殖・代謝・細胞の健全性が損なわれ、酸化ストレスに関連する兆候も調べられたという。ポイントは、「どこの国の製品か」「現地で規制されているか」といった“建て付け”よりも、中身の配合と濃度が毒性を左右するという示唆だ。 InfoMoney


なぜ「加熱前」が重要なのか:吸わない曝露シナリオ

「加熱しなければ大丈夫」と思われがちだが、現実には“吸う以外”の接点がある。例えば——

  • カートリッジの液漏れで皮膚につく

  • 取り扱い中に手に付着し、食事や口元経由で微量摂取

  • 子どもやペットの誤飲(海外では注意喚起が多い)

  • リキッドが周辺物に付着し、間接的に触れる


今回の研究は臨床(人の体)での影響を直接示すものではないが、少なくとも「リキッド=単なる“原料”」ではなく、それ自体が細胞レベルで負荷になりうるという問題提起になっている。 InfoMoney


eリキッドの“基本セット”が抱える矛盾

eリキッドは主に**植物性グリセリン(VG)プロピレングリコール(PG)**をベースに、ニコチン、香料、清涼剤(クーラント)など多様な添加物が加わる。研究の要約報道でも、これら添加物が毒性を強める可能性が触れられている。 jornaldachapada.com.br


さらにやっかいなのは、加熱すると別種の化学物質が生まれ得ることだ。ブラジル呼吸器学会の専門家は、電子タバコが生むのは“水蒸気”ではなくエアロゾルで、そこには多数の物質が含まれうると指摘している。Revista Pesquisa Fapesp
つまり、未加熱でもリスク/加熱で別リスクという二段構えになりかねない。


「禁止なのに広がる」ブラジルの現実

ブラジルでは、電子タバコ(DEF:Dispositivos Eletrônicos para Fumar)は2009年から製造・販売・輸入・広告などが禁止され、近年の見直しでも禁止が維持されている。Serviços e Informações do Brasil


それでも違法市場は存在し、使用は若年層で目立つ。ブラジルの公的データでは、PNS 2019で「15歳以上の現使用0.64%=約100万人規模」とされ、15〜24歳の比率が高いことも示されている。Serviços e Informações do Brasil


規制があるから“安全”なのではなく、規制があるのに流通してしまう構造が、品質のばらつきや表示の不確かさを増幅させる。今回の研究は、その「違法市場の中身を、まず細胞レベルで確かめた」点に意味がある。


研究の限界も、正面から見る

ここは冷静に押さえたい。報道によれば、分析対象は15検体で、しかも臨床研究ではない(=人体での影響を直接測ってはいない)。jornaldachapada.com.br


ただし、限界があるから無意味という話でもない。むしろ「どこから手を付けるべきか」を示す一次スクリーニングとして機能する。実際、研究者側は今後、金属の存在バイオマーカーなど、より踏み込んだ検討を進める意向が報じられている。Rádio Metrópole - Metro 1


また、研究に関与していない専門家からも「電子タバコは無害ではない」「“減害”という思い込みを崩す材料になる」といった評価が出ている。jornaldachapada.com.br


SNSの反応:驚き、懐疑、そして規制論へ

この種のニュースは、SNSで一気に“解釈”が広がる。実際、ブラジルのコミュニティ系掲示板(Redditのr/brasil)でも関連スレッドが立ち、見出しの時点で「加熱前でも毒性」という点が論点化していることがうかがえる。Reddit


またInstagramでも、研究内容を引用しつつ「緊急性」や「専門家と行政の連携」を訴える投稿が確認されている。Instagram


反応は大きく3タイプに分かれやすい。

  1. 驚き・不安型:「吸う前から毒性?」「漏れたらアウトでは」

  2. 懐疑型:「細胞実験=人体ではない」「条件次第で結論が変わる」

  3. 規制・社会問題型:「禁止でも流通するのが問題」「若者向けフレーバーをどうする」


どの立場にも一理はあるが、少なくとも言えるのは、話題が“喫煙者の嗜好”を超えて、流通(違法市場)・表示・若年層の入口・健康教育まで含む社会課題として語られている、ということだ。 Serviços e Informações do Brasil


これから何が問われるか

今後の焦点は、(1)どの成分の組み合わせが毒性を押し上げるのか、(2)金属など他の汚染要因はどれほど関与するのか、(3)実際の使用環境・曝露量で人体にどう影響するのか、の三つだ。Rádio Metrópole - Metro 1


そして政策面では、取り締まりだけでなく、若年層の使用実態に即した予防、禁煙支援、オンライン空間での宣伝・拡散への対策がセットで問われる。


ブラジル当局(Anvisa)は、DEFの健康リスクとして呼吸器疾患や心血管系、毒性物質・金属への曝露、ニコチン依存などを整理している。Serviços e Informações do Brasil


「未加熱でも毒性」という今回の報告は、そのリストに“新しい入口”を付け足した格好だ。



参考記事

「研究によると、加熱前の電子タバコの液体に毒性があることが示されました」
出典: https://www.infomoney.com.br/saude/estudo-aponta-toxicidade-em-liquidos-de-cigarros-eletronicos-antes-do-aquecimento/