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爆発なき核実験は許されるのか:アメリカとロシアが繰り広げる新たな核実験の舞台裏

爆発なき核実験は許されるのか:アメリカとロシアが繰り広げる新たな核実験の舞台裏

2025年11月07日 00:09

1)「大きな爆発音のない核実験」とは何か

米国の核兵器実験は、冷戦終盤の1992年を最後に核爆発を伴う形では停止している。しかし、核弾頭の老朽化や設計改修に関するデータは今も必要だ。そこで用いられるのが「サブクリティカル実験(subcritical experiment)」である。プルトニウム試料に化学爆薬などで高圧を与え、臨界(自己持続的連鎖反応)に達しない範囲=ゼロ・イールドの基準内で、材料の応答を高速X線などで可視化する。文字どおり「核爆発を起こさない」ため、米国の核実験モラトリアムやCTBT(包括的核実験禁止条約)の趣旨と矛盾しないと説明されてきた。政府 Accountability Office


2024年5月14日、エネルギー省NNSAはネバダ国家核安全保障サイト(NNSS)の地下施設PULSEでサブクリティカル実験「Nimble」シリーズの第1回を実施したと発表。ロスアラモス、ローレンス・リバモア両国立研究所が協力した。The Department of Energy's Energy.gov


2)地下で進化する「可視化」――SCORPIUSがもたらすもの

サブクリティカル実験の鍵は「見えないものを、十分な時間分解能で見る」診断技術にある。米研究機関は地下に線形加速器SCORPIUSを配備し、プルトニウムの急速な変形を多パルスX線で連続撮影する計画を進めてきた。これにより、核弾頭一次段のインプロージョン末期の挙動を前例のない解像度で再構成し、高性能シミュレーション(例:El Capitan級スーパーコンピュータ)と相互検証する狙いだ。News Releases str.llnl.gov


SCORPIUSの本格稼働は段階的に進む見通しで、ロスアラモスは2024年以降の組立状況を公表している。これが実現すると、実験頻度は「10年末までに年3回程度」まで増やす方針が米議会調査局の資料に示された。lanl.gov


3)政治の揺らぎ――「核実験再開」発言と火消し

2025年11月初旬、トランプ大統領が「他国がやっているなら、米国も直ちに核実験を再開する」とSNSで示唆し、国際社会に衝撃が走った。報道各社は“方針転換”の可能性を大きく伝えたが、その後エネルギー長官は「爆発を伴う核実験ではなく、非臨界・非爆発のシステム試験だ」と釈明。いわば“言葉が先走った”形で、実務当局は従来のサブクリティカル枠内での計画だと強調した。The Washington Post


同時期、ワシントン・ポストやDefenseNewsは「もし米国がフルスケールの核爆発実験に踏み出せば、他国の追随を招き、非拡散レジームに深刻な打撃を与える」と専門家の見方を報じた。The Washington Post


4)国際反応――ロシアの「線引き」発言

興味深いのは、2024年の米サブクリティカル実験に対してロシア外務省報道官が「CTBT違反ではない」と認める趣旨の発言をしている点だ(ロシアは2023年にCTBTを批准撤回)。つまり、ゼロ・イールドの枠内であれば、国際的にも“核爆発実験”とはみなされにくいという事実上のコンセンサスがある。Reuters


5)科学と倫理――「代替データ」でどこまでいけるか

サブクリティカル実験は、計算科学・材料科学・放射線計測の粋を集め、実爆発がなくても武器物理の理解を深める。非爆発ゆえの環境・健康リスク低減という利点も大きい。一方で、反核の立場からは「爆発がないにせよ、兵器近代化の加速につながる」という倫理的批判が根強い。科学誌やシンクタンク記事は「最先端の実験+スーパーコンピューターによる検証で、少なくとも現状の信頼性評価は賄える」とする見解と、「いつかは実爆発データの更新が必要」という懐疑の間で揺れている。Science News


6)SNSの反応――“安全・抑止”vs.“軍拡・タブー破り”

 


今回の“核実験再開”発言と、それに続く当局の釈明を受け、SNSでも議論が沸騰した。

  • 安全保障・核管理の専門家からは「NNSAのサブクリティカルは予告どおりで、爆発を伴う核実験とは別物」との冷静な指摘。X上でも「実験は予測どおりに実施、サブクリティカルの定義内」との紹介が流れた。X (formerly Twitter)

  • 現地コミュニティや反核団体のアカウントからは「ネバダでの“実験再開”という見出し自体がトラウマを呼ぶ」「事故や漏えいのリスクはゼロではない」との懸念が目立つ。AP News

  • Redditの政治系スレッドでは、抑止の必要性を強調する意見と、軍拡競争を懸念する意見が拮抗。「臨界を越えない限りは受容可能」という容認派と、「線引きが不明瞭」とする批判派がぶつかった。Reddit

  • NGO・研究者のスレッドでは「NNSS視察で“核爆発実験の計画はない”との説明を受けた」との報告も共有され、過熱する言説へのブレーキになっている。threadreaderapp.com


7)「線の内側」を維持する条件

サブクリティカル実験が国際的理解を得るには三つの条件が重要だ。
(1) 透明性:実験目的・計測手法・ゼロ・イールドの検証方法を適切に公開すること(安全保障上の秘匿は残しつつ)。Bulletin of the Atomic Scientists


(2) 技術的堅牢性:SCORPIUSなどの多重診断で「臨界に達していない」ことを実証可能にする。News Releases


(3) 外交的整合性:CTBTの規範を損ねないメッセージと歩調。ロシアや中国の動向に左右されがちな時期だからこそ、言葉と実務を一致させる必要がある。The Washington Post


8)結論――“静かな実験”が鳴らす警鐘

「爆発のない核実験」は、技術的には賢明で環境影響も小さい。しかし、政治の言葉ひとつで国際秩序のタブーは容易に軋む。サブクリティカル実験は、核抑止の維持と軍縮規範の維持という二重の要請の、細い綱の上に成り立っている。その綱を踏み外さないための条件――透明性、堅牢な診断、外交的一貫性――を、米国自身が厳格に守れるかが、2020年代後半の核秩序を左右する。



参考・一次情報/報道

  • NNSA公式発表(2024/5/16):ネバダPULSEでのサブクリティカル実験完了。The Department of Energy's Energy.gov

  • Arms Control Today(2024/6):米国の第34回サブクリティカル実験。armscontrol.org

  • AP(2023/9報道):SCORPIUS計画で“爆発なし”の診断能力向上。AP News

  • GAO(2023/8):サブクリティカルの定義・安全措置、SCORPIUS/ZEUS計画。政府 Accountability Office

  • Sandia/LLNL/LANL資料:SCORPIUSの技術解説。News Releases

  • 直近の政治報道:エネルギー長官の“爆発なし”釈明、ワシントン・ポストの国際反応、DefenseNewsの専門家見解。AP News


参考記事

アメリカの核兵器:大爆発なしでのテスト?
出典: https://www.dw.com/de/us-atomwaffen-testen-ohne-den-großen-knall/a-74627614?maca=de-rss-de-all-1119-rdf

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