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300冊の濡れた本が語る、ルーヴル老朽化危機 — 宝石強奪から1か月、世界一の美術館に何が起きているのか

300冊の濡れた本が語る、ルーヴル老朽化危機 — 宝石強奪から1か月、世界一の美術館に何が起きているのか

2025年12月09日 09:57

世界で最も有名な美術館、パリのルーヴル。その地下で、誰にも注目されないまま「知の宝庫」が水に沈みました。


11月末、エジプト古代遺物部門の図書室で給水パイプが漏水し、300〜400冊の本や資料が被害を受けたと、ルーヴルの副館長フランシス・シュタインボック氏がフランスのテレビ局に明かしました。Reuters


被害を受けたのは、エジプト学の専門誌や調査報告書など、主に研究者が日常的に使う19〜20世紀の資料です。館側は「世界に一つしかないような貴重書ではない」と説明していますが、現場のスタッフや専門家は「研究の歴史そのものが傷ついた」と受け止めています。The Times


何が起きたのか

報道を総合すると、漏水は11月27日(または26日)の夜に発生し、エジプト古代遺物部門の図書室3室のうち1室を直撃しました。天井裏を走る老朽化した配管から水が漏れ出し、本棚や床、下階のオフィスにまで水が流れ込んだとされています。オポヴォ


・被害点数:おおよそ300〜400冊(現在も精査中)
・主な内容:エジプト学雑誌、調査報告、学術資料
・年代:19世紀末〜20世紀初頭
・場所:古代エジプト部門の図書室(一部の書庫とオフィスも浸水)


資料は現在、吸水紙と除湿機を使った「救出作業」の最中で、乾燥させたのち製本の補修やクリーニングに回される予定です。館側は「取り返しのつかない喪失はない」と強調していますが、フランスや英国メディアの中には「一部はすでに原状回復が不可能」と伝えるものもあり、被害評価には温度差があります。The Times of India


放置されてきた老朽インフラ

今回の漏水で批判が集中しているのが、ルーヴルのインフラ老朽化問題です。


フランスの美術専門サイト「La Tribune de l’Art」は、問題の配管が長年危険な状態にあることは以前から指摘されていたのに、予算不足を理由に更新が先送りされてきたと報じました。Reuters


副館長自身も「この問題は数年前から分かっていた」と認めており、配管の全面更新工事は2026年9月にようやく始まる予定だったといいます。Reuters


さらにフランスの会計検査院(Cour des comptes)は、ルーヴルが2018〜2024年のあいだに約1億500万ユーロを新規作品の購入に費やす一方で、建物の維持や更新に充てた額はその4分の1程度にとどまっていると指摘しました。Reuters
「作品のための箱」が壊れつつある――そんな批判がフランス国内で高まっています。


1か月前の「宝石強奪」との連鎖

記憶に新しいのが、10月19日に同じルーヴルで起きた宝石強奪事件です。窃盗団が日中の営業中にアポロンの間に侵入し、ナポレオンゆかりの宝石など、推定1億ドル(約150億円)相当のジュエリーを7〜8分で盗み去りました。Reuters


その後の調査で、展示室周辺の警備体制や監視カメラ配置に重大な欠陥があったことが明らかになり、ルーヴルは「セキュリティが穴だらけの老朽巨大施設」というイメージを一気に背負うことになりました。今回の漏水事故は、そうしたイメージに「文化財保全のリスク」という新たな層を重ねた格好です。


「ニュー・ルネサンス」と値上げのジレンマ

ルーヴルは事態を受け、すでに発表済みだった大規模改修計画「Louvre New Renaissance(ルーヴル・ニュー・ルネサンス)」を、インフラ更新の“切り札”として前面に押し出しています。The Times


・総予算:最大8億〜11億ユーロ
・期間:およそ10年
・主な内容:
 - 老朽化した設備・配管の更新
 - 防犯・監視システムの大幅強化
 - 慢性的な混雑を解消するための新エントランス
 - モナ・リザ専用ギャラリーの新設


資金源の一つとして、2026年1月14日からEU圏外の来館者を対象に、入館料を22ユーロから32ユーロへと45%値上げする方針も打ち出されました。Outlook Traveller


年間1,500〜2,000万ユーロの追加収入を見込んでおり、その多くを改修に回す計画です。

しかしこの“外国人料金”は、「文化へのアクセスを制限する逆行だ」「財政難のツケを観光客に押し付けている」とフランス国内外で賛否を呼んでいます。Straight Arrow News


「代替可能」だから平気なのか? 専門家が見る被害の意味

館側は一貫して「今回濡れた本は、研究者が利用する実務的な資料であり、世界に唯一のものではない」と説明しています。Reuters


たしかに、ルーヴルの膨大なコレクションの中で見れば、モナ・リザやサモトラケのニケのような「アイコン」ではありません。

それでも、エジプト学の研究者から見れば、19〜20世紀の発掘報告書や古い雑誌は、当時の調査方法や発見の記録が宿る一次資料です。別の図書館に同じ号があったとしても、「ルーヴルのエジプト部門の書き込み付き別冊」「当時の学芸員が貼り込んだ写真付き」といった“個性”は、この場だからこそ生まれたものです。


英国紙などは、労働組合関係者の話として「一部の資料はすでに再生不能」と伝え、現場が感じる重さは館の公式説明よりはるかに深いことを示しています。The Times


文化財の価値は、「金銭的価値」や「世界に一つだけかどうか」だけでは測り切れません。日々の研究の積み重ねがしみ込んだ“ワーキングツール”が、一夜の水漏れで一斉に損なわれた——そのこと自体が、エジプト学の歴史にとって痛手だと言えるでしょう。


SNSに広がる怒りと嘆き(※再構成)

このニュースは、ブラジルやフランスのメディアを通じて世界中に拡散しました。記事のリンクはX(旧Twitter)やInstagram、Facebookで共有され、多くのコメントが寄せられていますが、本稿では具体的なアカウントを引用せず、報道内容と一般的な傾向をもとにした「代表的な声」を再構成して紹介します。

  1. インフラ軽視への怒り
     「何億ユーロも新しい作品の購入に使っておきながら、配管の交換は後回し? 優先順位が逆だろう」
     「ルーヴル・ニュー・ルネサンスより先に、まず雨漏りと水漏れを止めてほしい」という皮肉交じりの投稿も目立ちます。

  2. 研究者・図書館員への共感
     「“貴重書ではない”と言われても、そこで働いている人にとっては人生そのもの」
     「背表紙が波打った本を乾かす作業を想像するだけで胸が痛い」と、現場の労働に思いを寄せる声も多く見られます。

  3. 宝石強奪との“二重被害”を嘆く声
     「1か月で『宝石』と『本』、二つの宝を失った」「ルーヴルは呪われているのでは」という半分冗談、半分本気のコメントも拡散しています。

  4. 値上げへの反発と諦め
     「チケット代を45%も上げておいて、それでも水漏れを止められないなら、どこにお金が消えているの?」
     一方で、「好きな美術館だから払うしかない」「2026年になる前に行っておこう」と、実利的に受け止める旅行者もいます。

  5. 文化財保全の“グローバルな課題”として議論する声
     今回の漏水をきっかけに、「気候変動で豪雨や洪水が増える中、世界中の博物館や図書館が同じリスクを抱えている」「デジタルアーカイブと現物保全をどう両立させるべきか」といった、より広い議論もSNSで展開されています。

※ここで挙げたコメントは、実在する投稿をそのまま引用したものではなく、報道と公開された情報をもとに再構成した“典型例”です。


「水」と文化財——見えないリスクをどう減らすか

火災や盗難は目に見えやすいリスクですが、紙を中心としたコレクションにとって、最大の天敵はしばしば「水」です。

・古い配管の破裂
・空調設備の結露
・屋根や窓からの雨漏り
・消火活動での放水


どれもが、数分で何百冊もの本や資料を読み取り不能にする力を持っています。今回のルーヴルの事故では、水が階下の配電盤にまで流れ込んでいたとの報道もあり、もしショートしていたら火災を伴う大事故になっていた可能性もあります。メトロポリス


ヨーロッパには、石造りの歴史的建築物をそのまま美術館や図書館として使っている例が多く、文化財そのものだけでなく「建物の保全」も同時に行わなければなりません。そのコストとリスクは、想像以上に大きいのです。


私たちにとっての「ルーヴル水漏れ事件」

今回の出来事は、「遠いパリのハプニング」として消費してしまうには惜しい、多くの示唆を含んでいます。

  1. 華やかな展示の裏側にある“インフラの地味さ”
     有名な美術館ほど、目が行きがちな作品の陰で、配管・電気・空調・倉庫といった地味な設備がギリギリで回っていることがあります。そこにお金を回さないと、どれほど素晴らしい展示があっても足元から崩れてしまう。

  2. 「唯一無二」だけが守るべきものではない
     今回濡れたのは、世界に1冊しかない写本ではありません。それでも、研究コミュニティにとっては代替が効かない“道具”であり、時間をかけて蓄積された知の痕跡です。文化政策の議論では、こうした「地味な資料」の価値がしばしば見落とされがちです。

  3. 利用者としてできること
     私たち旅行者は、チケット値上げのニュースにため息をつきつつも、「そのお金が本当にインフラ更新に使われているか」を注視することができます。また、自国の図書館・博物館に対しても、予算削減ではなく長期的な維持更新への投資を求めていく必要があります。


ルーヴルの水漏れは、一見すれば「数百冊の専門書が濡れた」だけの事件かもしれません。しかし、そこには、老朽化する文化インフラ、観光収入に頼らざるを得ない博物館の財政構造、そして知の蓄積をどう守るかという、21世紀の文化政策の核心が凝縮されています。


モナ・リザの微笑みの裏で、静かにページをめくってきたエジプト学者たちの机の上から、本が一時姿を消しました。ページが再び乾き、棚に戻るまでに必要なのは、単なる修復費用だけではありません。文化を支える足元を見つめ直す、世界共通の視線です。



参考記事

ルーブル美術館のコレクションにある数百冊の書籍が水漏れにより被害を受ける
出典: https://g1.globo.com/mundo/noticia/2025/12/07/centenas-livros-colecao-museu-louvre-danos-vazamento-agua.ghtml

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