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赤ちゃんのオムツからセンサーまで? 菌類がインフラになる未来予想図

赤ちゃんのオムツからセンサーまで? 菌類がインフラになる未来予想図

2025年12月01日 00:18

「ただのオムツ」が未来のコンポストになる日

見た目はごく普通の紙オムツ。ところがパッケージを開けると、中には小さな粉末のサシェが一つ──中身はなんとフリーズドライされた“キノコの菌”。


この菌を使い終わったオムツにふりかけると、オムツ全体が約1年で土に戻る可能性がある、というのだからインパクトは大きい。イギリス紙ガーディアンが紹介した「Hiro」というスタートアップのプロジェクトだ。ガーディアン


世界では毎年、数百億枚のオムツが埋立地に送られ、その多くに含まれるプラスチックは数百年単位で残り続けるとされる。そこに「菌類で分解してしまおう」という発想を持ち込んだのがHiroだ。オムツに混ぜ込まれたプラスチックを、菌が分泌する酵素で分解し、最終的にコンポスト化することを狙っている。実験室レベルでは6か月未満で分解が進んだという報告もあり、現在は模擬的な埋立地環境でのテストが進行中だ。ガーディアン


もちろん課題もある。ポリエステル系やポリウレタン系など、菌が比較的分解しやすいプラスチックもあれば、ポリエチレンやポリプロピレンのように非常に手ごわい素材もある。現段階で“すべてのプラスチックがスピーディーに土になる”わけではないことを、研究者たちは冷静に指摘している。ガーディアン


それでも、「オムツが土に戻るかもしれない」というイメージは強烈だ。環境問題の象徴の一つだったオムツが、菌類の力で循環する資源へと変わるかもしれない。


5.1百万種、“第三の王国”が動き出す

なぜいま、ここまで菌類が注目されているのか。
背景には、菌類が植物でも動物でもない、独立した巨大な王国であるという認識の広がりがある。推定5.1百万種とも言われる多様な菌類の多くは、まだ詳しく研究されていないが、次々と驚くべき能力が見つかっている。ガーディアン


特に重要なのが「マイセリウム(菌糸体)」だ。地中や木材の内部などを走る細い糸状のネットワークで、私たちが“キノコ”と呼ぶ子実体よりも、むしろこちらが本体と言っていい。


マイセリウムは、農業残渣や木くずなどの低価値の有機物の上で、ほとんど放置に近い条件でもどんどん増殖する。その過程で、強度のある軽量な“菌糸ボード”を形成したり、木材や石油由来化合物、プラスチックを分解する酵素を分泌したりする。ガーディアン


要するに、マイセリウムは「材料を作る工場」であり、「分解・浄化を担う処理場」でもある。この“二刀流”が、菌類をサステナビリティの文脈で非常に魅力的な存在にしている。


食品添加物も「キノコ工場」へ

今回のFuture is Fungi Awards(フューチャー・イズ・ファンジャイ・アワード)では、Hiroのオムツだけでなく、菌類を「化学工場」に変えるスタートアップも評価された。ガーディアン


たとえばMichroma(ミクロマ)は、菌類を使って天然由来の食品用着色料をつくる企業だ。従来の鮮やかな人工色素は石油由来のものが多く、製造過程でのCO₂排出や、サプライチェーンの環境負荷が問題視されてきた。一方、菌類はもともと多様な色素や二次代謝産物を生み出す能力に優れ、発酵タンクの中で育てることで、必要な色素を比較的クリーンに大量生産できる可能性がある。ガーディアン


Mycolever(マイコレバー)は、化粧品やパーソナルケア製品に使われる乳化剤を、菌類由来の成分で代替しようとしている。乳化剤は、油と水をなじませる重要な素材だが、従来の多くは石油化学に依存している。菌類の代謝経路を活用すれば、より持続可能なサプライチェーンを構築できるかもしれない。ガーディアン


ここで面白いのは、細菌や酵母では遺伝子組換えを駆使しないと作れないような複雑な分子でも、菌類の世界には“ほぼそのまま”使える候補がすでに眠っている点だ。膨大な種数と複雑な代謝能力を持つ菌類は、バイオものづくりの“宝の山”として再評価されつつある。


家も消防も、マイセリウムで変わる?

マイセリウムの応用は、化学品だけにとどまらない。
菌糸体を型に流し込むように育てて乾燥させれば、断熱材や梱包材、建材として使える軽量ボードができる。従来の発泡樹脂のように化石燃料由来ではなく、使用後は土に還る。すでに欧米では、マイセリウム系の梱包材が実用化され始めている。ガーディアン


さらに大胆なのが、ヨルダン拠点のMetanovation(メタノベーション)が開発中の「マイセリウム消防フォーム」だ。現行の多くの消火フォームには、PFASと呼ばれる“永遠の化学物質”が含まれ、土壌や地下水を長期的に汚染してしまう問題がある。メタノベーションは、廃棄物由来の原料から育てたマイセリウムをベースに、使用後は自然分解するフォームを目指している。ガーディアン


もしこの技術が成熟すれば、「火を消したあとに環境を汚してしまう」というジレンマを大きく軽減できるかもしれない。火災対応と環境保護の両立に、菌類が新しい選択肢をもたらそうとしている。


キノコが電子回路になる?「生きたセンサー」の可能性

そして、最もSF的でありながら、じわじわと現実味を帯びているのが「菌類エレクトロニクス」の世界だ。
イギリス・ブリストルのウェスト・オブ・イングランド大学のAndrew Adamatzky教授らのチームは、マイセリウムの電気的な振る舞いを調べ、簡単な回路素子として機能させようとしている。ガーディアン


マイセリウムを含ませた素材は、外部から電圧をかけると小さな電気的パルスを発生し、一定のリズムを刻む“発振器”のようなふるまいを見せることがある。また、信号を一時的に蓄えたり、入力によって応答パターンが変わったりするなど、コンデンサやフィルタのような性質も観測されているという。ガーディアン


こうした特徴を利用すれば、光や圧力、化学物質に反応して出力が変化する「生きたセンサー」や、「自己修復するソフトロボット」の一部としてマイセリウムを組み込むことが可能になるかもしれない。使い終わったら自然分解し、場合によってはコンポストとして再利用できる“生分解性ガジェット”という、これまでになかったカテゴリーも見えてくる。


もちろん、フルスケールの「キノココンピューター」がすぐに登場するわけではない。現時点ではほとんどがラボレベルの実験だが、Future is Fungi Awardsの目的自体が、まさにこのような“突拍子もないようで筋の通ったアイデア”を後押しすることにある。ガーディアン


SNSで広がる驚きとツッコミ

こうしたニュースは、科学メディアだけでなくSNSでも拡散している。
X(旧Twitter)やMastodonでは、この記事をシェアする投稿に、さまざまな反応がぶら下がった。

  • 「オムツ替えのたびに“菌をまぶす”って、育児の新時代感すごい」

  • 「キノコがプラスチックを食べてくれるなら、うちの押し入れにも来てほしい」

  • 「菌類コンピューターって響きだけでSF映画1本作れそう」

  • 「万能の魔法じゃなくて、“適材適所のキノコ”ってところがリアルで好き」


環境意識の高いユーザーからは、「石油に頼らない色素や乳化剤が普及すれば、コスメ選びの軸が変わるかも」といった期待の声も上がる一方、「菌を外来種としてばらまかない安全設計はマスト」「分解中に出る副産物の評価も必要」と、バイオテクノロジーならではのリスクを指摘する声も見られた。


日本のユーザーからは、「味噌や醤油だって菌のチカラ。日本は元祖“菌類テック”なんだから、もっと世界と組んで仕掛けたい」といったコメントも。


長年、麹菌や酵母と付き合ってきた日本から見ると、この“キノコ革命”はどこか懐かしく、同時に新鮮でもある。


それでも菌類は「何でも屋」ではない

科学者たちは一様に、「菌類は強力な味方だが、何もかも解決してくれるわけではない」と釘を刺す。
たとえば、Hiroのオムツが広く普及したとしても、そもそものオムツ使用量を減らす工夫や、再利用可能な布オムツの選択肢拡充など、ライフスタイル側の変化が伴わなければ、ごみ問題の根本解決にはならない。ガーディアン


プラスチック分解についても、すべての素材を同じスピードで分解できるわけではないし、工業的なスケールで運用するには、安全性やコスト、規制など、越えるべきハードルが多数存在する。マイセリウム建材や消防フォームも、耐久性や規格取得、既存インフラとの互換性といった現実的な問題をクリアしなければ市場に受け入れられない。ガーディアン


重要なのは、「菌類VS石油」ではなく、「菌類を含む多様な技術のポートフォリオ」を組む発想だ。再生可能エネルギーやリサイクル技術、行動変容の施策などと組み合わせることで、初めて菌類のポテンシャルが最大化される。


足元の“キノコエンジニア”とどう付き合うか

それでもやはり、菌類が見せてくれる未来像はワクワクする。


ごみの山を削り、石油化学工業の一部を置き換え、建材やセンサーに変身する──そんなストーリーの主人公が、これまで「カビ」「腐る元」として嫌われることも多かった存在だというのは痛快ですらある。


足元の土の中では、今日もマイセリウムのネットワークが静かに伸び続けている。
その一部を、私たちが“自然のエンジニア”として正式にチームに迎え入れるかどうかは、これからの選択次第だ。


オムツ、コスメ、建材、消防、エレクトロニクス──
「キノコテック」の伸び方次第で、10年後の暮らしはかなり違う風景になっているかもしれない。



参考記事

「自然の元祖エンジニア」:科学者たちがキノコの驚くべき可能性を探る
出典: https://www.theguardian.com/science/2025/nov/29/fungi-scientists-innovations

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