「あと数週間で価格は跳ね上がる!?」ホルムズ海峡封鎖で世界の石油在庫が限界へ ガソリン価格は再び急騰するのか

「あと数週間で価格は跳ね上がる!?」ホルムズ海峡封鎖で世界の石油在庫が限界へ ガソリン価格は再び急騰するのか

原油市場に迫る“在庫切れショック” Exxonが警告する150ドル時代の現実味

原油市場に、静かな緊張が広がっている。

米石油大手Exxon Mobilの幹部が、世界の石油在庫について異例の強い表現で警告した。中東紛争とホルムズ海峡の閉鎖によって供給が大きく乱れ、在庫は今後数週間で「本当に、本当に低い水準」に落ち込む可能性があるというのだ。

この発言が注目される理由は、単に石油会社の幹部が価格上昇を予想したからではない。現在の原油先物市場が、危機の規模を十分に織り込んでいないように見えるからである。

CNBCが報じたところによると、Exxon Mobilのシニア・バイスプレジデントであるNeil Chapman氏は、ニューヨークで開かれたBernstein主催の会議で、石油在庫が「聞いたこともないような水準」に近づいていると述べた。同氏は、在庫が最低水準に達する時期について「2週間か3週間か、あるいは3〜4週間かは議論できる」としながらも、いったんその水準に達すれば「価格は跳ね上がる」と警告した。

同氏の見立てでは、在庫が過去最低水準に近づいた場合、現物のブレント原油価格は1バレル150〜160ドルまで上昇する可能性がある。これは現在の市場価格から見ても極めて大きな上振れだ。

興味深いのは、足元のブレント原油先物が100ドルを下回っている点である。CNBC記事では、7月限のブレント原油先物が木曜日に1バレル94ドル未満で取引を終えたとされている。市場は、米国とイランの交渉が進展し、ホルムズ海峡が再開される可能性に期待している。つまり、投資家は「危機は近く収束する」というシナリオに賭けている。

しかし、Exxon側の警告はそれとは対照的だ。たとえ外交交渉が進んだとしても、すでに失われた供給、乱れた物流、減少した在庫はすぐには元に戻らない。市場が見ているのは「合意の可能性」だが、石油業界が見ているのは「在庫の物理的な減少」である。

この違いは大きい。

原油市場では、価格はニュースや期待で動く一方、実際の供給は船、港湾、パイプライン、製油所、備蓄といった現実のインフラに制約される。ホルムズ海峡のような要衝が閉ざされると、単に一部の船が遠回りすれば済むという話ではない。中東からアジア、欧州へ向かう原油の流れそのものが詰まり、代替ルートにも限界が生じる。

国際エネルギー機関、IEAは、ホルムズ海峡を通過する原油・石油製品が2025年時点で日量約2,000万バレル、世界の海上石油貿易の約25%に相当していたと説明している。これほど大きな流れが止まれば、世界中の在庫を取り崩して穴を埋めるしかない。

CNBC記事によると、IEAは今回の混乱で市場からすでに10億バレル超の供給が失われたとみている。各国の備蓄放出によってこれまで価格上昇は一定程度抑えられてきたが、Chapman氏は「それは永遠には続かない」と指摘している。

IEA加盟国は3月、過去最大規模となる4億バレルの石油備蓄放出に合意した。これは市場のパニックを抑えるための緊急措置だった。しかし、備蓄とは本来、危機時に使うための保険であり、恒久的な供給源ではない。放出を続ければ、当然ながら備蓄そのものが減っていく。

Reutersは5月中旬、IEAの分析として、世界の観測可能な石油在庫が3月と4月に合計2億4,600万バレル減少したと報じている。これは記録的なペースであり、危機が単なる一時的な価格変動ではなく、実需と在庫の問題に移行していることを示している。

ここで重要なのは、原油価格が上がるだけでは済まないという点だ。

原油はガソリンやディーゼルの原料であるだけでなく、航空燃料、船舶燃料、化学製品、プラスチック、肥料、物流費、食品価格にも波及する。原油が150ドル台に上昇すれば、消費者はガソリンスタンドだけでその影響を感じるわけではない。スーパーの食品、配送費、航空券、日用品、農業コストにも遅れて反映される。

Chapman氏は、価格が一定水準まで上がると「需要破壊」が起き、市場は再び均衡に向かうと述べている。需要破壊とは、価格が高すぎるために消費者や企業が購入を減らす現象である。家計でいえば、車での移動を減らす、旅行を控える、冷暖房の使用を抑えるといった行動がそれに当たる。企業でいえば、輸送量の削減、生産調整、値上げ、あるいは投資延期につながる。

つまり、原油価格が急騰した場合、最終的には需要が落ち込み、価格上昇にブレーキがかかる。しかしそれは、経済に痛みが生じた結果としての調整である。価格が自然に落ち着くというより、消費者や企業が耐えきれなくなって需要を削ることで均衡するという意味だ。

SNS上でも、このニュースにはさまざまな反応が出ている。

CNBCがXで同記事を投稿すると、多くの返信が集まり、エネルギー価格の上昇を懸念する声が目立った。特に米国では、ガソリン価格が生活実感に直結するため、「また燃料価格が上がるのか」「夏の旅行シーズンに直撃する」といった不安が出やすい。ThreadsやLinkedInでも、エネルギー市場関係者や投資アカウントが、Exxon幹部の「2〜3週間」という時間軸と「150〜160ドル」という価格見通しを取り上げていた。

一方で、懐疑的な反応も少なくない。X上では、ExxonやCNBCの報道を「過度に危機を煽っている」と受け止める投稿も確認できる。石油メジャーが価格上昇を警告する場合、それが需給分析なのか、それとも市場心理に影響を与える発言なのかを慎重に見るべきだという意見である。

この懐疑論には一定の理由がある。原油市場では、地政学リスクが高まるたびに価格急騰の予測が出るが、その後に外交交渉や増産観測、需要鈍化によって価格が下がることも珍しくない。実際、足元の先物市場が100ドル未満にとどまっているのは、投資家が「最悪のシナリオ」をまだ基本ケースとして見ていないからだ。

しかし、今回の特徴は、価格よりも在庫の問題が前面に出ていることだ。

市場価格は期待で上下するが、在庫は実際に減る。備蓄の取り崩しで短期的に価格を抑えられても、在庫が底に近づけば、買い手は現物の確保を優先せざるを得ない。先物価格が比較的落ち着いている間に、現物市場では需給がひっ迫していく可能性がある。

Reutersは、米国のシェール業界にも即応力の限界があると報じている。掘削済みだが未完成の井戸、いわゆるDUCの在庫が記録的低水準にあり、米国の生産者が短期間で大幅に供給を増やすことは難しいという。中東からの供給が滞る中で米国産原油への需要が高まっても、すぐに十分な量を追加できるとは限らない。

これは、2010年代のシェール革命期とは異なる局面を示している。当時は原油価格が上がれば、米国のシェール企業が比較的早く増産し、価格上昇を抑える役割を果たした。しかし現在は、掘削・完成済み井戸の余力が限られ、人件費や設備費、資本規律の問題もある。投資家は、石油会社に対して無制限の増産よりも収益性と株主還元を求めている。

また、ホルムズ海峡が仮に再開されたとしても、問題はすぐには解決しない。船舶の運航スケジュール、保険料、港湾処理、積み荷の再配分、製油所の原油調達など、物流の正常化には時間がかかる。ChevronのMike Wirth CEOも、海峡再開後の流れは「ゆっくり進み、停止と再開を繰り返す可能性がある」と述べたと報じられている。

そのため、投資家や消費者が見るべきポイントは、単に「米国とイランが合意するか」だけではない。より重要なのは、合意後にどれだけ早く実際の供給が戻るのか、そして減った在庫をどのペースで補充するのかである。

在庫の補充もまた、価格を押し上げる要因になり得る。危機時に備蓄を放出すれば、危機後にはそれを買い戻す必要がある。Wall Street Journalが取り上げたCapital Economicsの見方では、危機後の備蓄補充によって9億5,000万〜12億バレル規模の追加需要が発生する可能性がある。これは短期的に一気に出る需要ではないとしても、数年にわたって原油市場を引き締める要因になり得る。

つまり、今回の危機は「海峡が開けば終わり」という単純なものではない。供給ショック、在庫減少、備蓄放出、物流混乱、補充需要という複数の段階を経て、エネルギー市場に長く影響を残す可能性がある。

では、日本にとってこの問題は何を意味するのか。

日本は原油の大半を輸入に依存しており、中東依存度も高い。ホルムズ海峡の混乱は、米国以上に日本経済へ直接的な影響を与えやすい。原油価格が上がれば、ガソリン、電気代、物流費、食品価格、航空運賃などに波及する。円安が重なれば、輸入コストの上昇はさらに大きくなる。

企業にとっても、エネルギー価格の上昇は利益率を圧迫する。製造業、運輸業、航空業、化学産業、農業、外食産業などは特に影響を受けやすい。価格転嫁ができる企業はまだよいが、消費者の節約志向が強まる中で値上げできない企業は、コスト増を自社で吸収せざるを得ない。

一方、エネルギー関連企業や資源権益を持つ企業にとっては、価格上昇が収益を押し上げる可能性もある。投資家の間では、原油価格上昇を見込んでエネルギー株や資源関連銘柄に注目する動きも出やすい。ただし、価格上昇が需要破壊を招けば、景気全体にはマイナスとなり、株式市場全体の重荷になる可能性がある。

 

SNS上で反応が割れているのも、この問題が単なる「原油高は良いか悪いか」という話ではないからだ。エネルギー企業にとっては収益機会であり、産油国にとっては財政収入の増加につながる。一方、消費国や家計にとってはインフレ圧力であり、企業にとってはコスト増である。投資家にとっても、短期的なエネルギー株上昇と、長期的な景気悪化リスクを同時に考えなければならない。

今回のExxon幹部の発言は、危機を煽るだけのものとして片づけるべきではない。少なくとも、石油市場の専門家が「在庫」という最も基礎的な指標に強い警戒を示していることは重い。

原油価格が100ドル未満にとどまっているからといって、危機が去ったわけではない。むしろ市場は、外交交渉への期待と、現物需給の悪化という二つの現実の間で揺れている。もし在庫が本当に最低水準に近づけば、価格はある日突然、先物市場の楽観を裏切るように跳ね上がるかもしれない。

今後の焦点は三つある。

第一に、ホルムズ海峡の再開が実現するかどうか。第二に、再開されたとして実際の原油輸送がどれだけ早く正常化するか。第三に、世界の在庫減少がどの段階で価格に本格的に反映されるかである。

ガソリン価格や電気代の上昇は、消費者にとって最もわかりやすいシグナルになる。しかし、その背後では、世界の石油在庫という見えにくい安全弁が急速に薄くなっている。

Exxonの警告が正しければ、今後数週間は原油市場にとって重要な分岐点になる。市場が期待する外交的解決が間に合うのか。それとも、在庫の限界が先に来るのか。

その答えは、エネルギー市場だけでなく、世界経済と家計の負担を大きく左右することになる。



本文末尾出典URL

CNBC:Exxon Mobil幹部Neil Chapman氏による石油在庫低下と原油価格急騰に関する発言、ブレント原油価格、ホルムズ海峡閉鎖、IEAの供給 disruption に関する記述の参照元。
https://www.cnbc.com/2026/05/28/oil-inventory-exxon-strait-hormuz-iran-war.html

IEA:2026年3月、IEA加盟国が中東紛争による供給混乱に対応するため、過去最大規模の4億バレルの緊急備蓄放出に合意したこと、ホルムズ海峡を通過する石油量に関する公式情報。
https://www.iea.org/news/iea-member-countries-to-carry-out-largest-ever-oil-stock-release-amid-market-disruptions-from-middle-east-conflict

IEA Oil Market Report March 2026:IEAの月次石油市場レポート。緊急備蓄放出、世界在庫、供給混乱に関する背景情報。
https://www.iea.org/reports/oil-market-report-march-2026

Reuters:IEAが、世界の観測可能な石油在庫が3月・4月に記録的ペースで減少したと指摘したこと、4億バレルの備蓄放出と5月時点の放出状況に関する報道。
https://www.reuters.com/business/energy/iea-chief-birol-commercial-oil-inventories-depleting-rapidly-only-weeks-left-2026-05-18/

Reuters:米国シェール業界の掘削済み未完成井戸、DUCの在庫が低下し、短期的な増産余力が限られていることに関する報道。
https://www.reuters.com/business/energy/record-low-us-shale-well-backlog-curbs-fast-output-gains-amid-export-surge-2026-05-29/

CNBC公式X投稿:元記事に対するSNS上の反応を確認するために参照。
https://x.com/CNBC/status/2060108105266954416

Barchart公式Threads投稿:Exxonの警告がSNS上で投資・市場系アカウントに共有されている例として参照。
https://www.threads.com/@barchartofficial/post/DY7Jhxtmwg_/exxon-mobil-warns-oil-inventories-will-hit-dangerously-low-levels-in-the-coming/

LinkedIn投稿:エネルギー・投資関係者がExxon幹部発言を共有し、150〜160ドルの原油価格見通しに注目している例として参照。
https://www.linkedin.com/posts/prandelligiacomo_exxons-just-said-oil-inventories-will-activity-7465893527080677376-mz-l

X投稿:ExxonやCNBCの報道に対する懐疑的な反応の一例として参照。
https://x.com/ExSenatorMike/status/2060360770420875483