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イタリアのクマが進化中!村の近くで小型化と穏やかさを獲得

イタリアのクマが進化中!村の近くで小型化と穏やかさを獲得

2025年12月16日 07:39

“村の隣”がクマを変えた——小型化と「温和化」をゲノムが示す

野生動物との共存というと、私たちはつい「人間が我慢して、動物が慣れて、うまく折り合う」物語を想像しがちだ。ところが、イタリア中部のアペニン山脈周辺に暮らす**アペニンヒグマ(Ursus arctos marsicanus)**をめぐる新しい研究は、共存が“性格”や“体つき”にまで影響しうることを、遺伝子の痕跡から示した。結論は挑発的だ——村の近くで生きるクマは、より小さく、より攻撃性が低い方向へ進化してきた可能性がある。 Phys.org


この個体群は、そもそも条件が特殊だ。研究によれば、アペニンヒグマは他のヨーロッパのヒグマ集団から約2,000〜3,000年前に分岐し、少なくともローマ時代以降、長期にわたり強く隔離されてきたとされる。人の歴史と地続きで、森の開墾や農地化、人の密度増加が隔離を深めた可能性が示唆されている。 Phys.org



何が起きている?「小さい体」「独特の顔」「低い攻撃性」

アペニンヒグマは、他地域のヒグマと比べて体が小さく、頭部・顔つき(頭骨形態)にも特徴があり、行動面でも攻撃性が低いとされてきた。 Phys.org


今回の研究は「そう見える」という観察に留まらず、なぜそうなったのかを、ゲノムの比較から追いかけた点が肝だ。



研究のやり方:参照ゲノム作成+他地域個体群との比較

研究チームはまず、アペニンヒグマの染色体レベルの高品質参照ゲノムを構築し、複数個体の全ゲノムを再シーケンス。比較対象として、ヨーロッパの別集団(スロバキアの個体群)や、既報データとして北米のヒグマのゲノムも用いている。 Phys.org


結果は、保全の文脈では“想定どおりに厳しい”。アペニンヒグマは遺伝的多様性が低く、近交(近親交配)の程度が高い。さらに論文の要旨では、他集団より実現した遺伝的負荷(genetic load)が大きいことも報告されている。小さく隔離された個体群が抱えやすい、絶滅リスクの典型だ。 Phys.org


しかも推定個体数は約50頭規模とされ、偶然(遺伝的浮動)で遺伝子頻度が揺れやすい条件でもある。 OUP Academic



それでも見えた「選択」の痕跡——攻撃性に関わる遺伝子領域

ここからが本題だ。研究は、単なる“劣化(多様性低下)”だけでなく、適応(選択)らしきシグナルも拾っている。論文の要旨では、アペニンヒグマにおいて攻撃性の低下に関連する遺伝子(例:DCC、SLC13A5 など)に選択の痕跡が見られたと述べられる。 OUP Academic


注目すべきは、その変異の多くがタンパク質配列を直接変える場所(コーディング領域)ではなく、非コード領域に位置し、一部はスプライシング因子の結合部位に影響しうると予測された点だ。つまり「攻撃性」という複雑な性質が、遺伝子の“ON/OFFのされ方”や“読み替え”の調整で動く可能性を示している。 OUP Academic



なぜ“温和化”が起きるのか:人間が作った選択圧という仮説

研究が提示する筋書きはこうだ。長い時間軸で見ると、人里近くで生き延びる個体は、人間との衝突を起こしにくい性質を持つほど有利になる。逆に言えば、衝突を起こしやすい=“より攻撃的”な個体は、人間により排除されやすい。論文およびPhys.org記事は、より攻撃的な個体が人間によって取り除かれてきたことが、低攻撃性の方向への選択につながった可能性を指摘している。 Phys.org


ただし重要なのは、これは「人間がクマを優しく“躾けた”】【美談】ではないということ。背景には、森林開墾や土地利用変化などによる個体群縮小・隔離(=ゲノムの侵食)があり、論文は数千年前の強いボトルネックが、農業拡大や森林減少と整合的だと議論している。 OUP Academic


共存の“結果”として温和化が起きたとしても、それはしばしば
生存のための消極的な適応
であり、同時に絶滅リスクを引き上げる条件と表裏一体だ。



保全への含意:「補充放獣(restocking)」は万能ではない

ここで話が現実に接続する。個体数が少ないと、「他地域から個体を入れて遺伝的多様性を増やす」案が浮上しやすい。だが研究は、たとえ人為で強い圧力を受けた集団でも、衝突を減らす方向の遺伝的バリアントを“保持しているかもしれず”、それを安易に希釈すべきではないという示唆を述べている。 Phys.org


つまり保全とは「数を増やす」だけでなく、「その土地で共存してきた性質をどう扱うか」という難問でもある。



SNSの反応:共感と罪悪感、そして“一般化”へのツッコミ

この話題は、発表直後からSNSでも静かに拡散している。少なくともPhys.org本体のコメント欄は掲載時点でコメント0だが、Redditでは進化系コミュニティに投稿され、いくつかの典型的な反応が見えた。 Phys.org


1)「人間が自然を変えすぎた」系の感情
「Man we really killed nature huh(俺たち自然を殺しちゃったな)」のように、事実関係というより“感情の総括”として受け止める声がある。 Reddit
研究が示すのが“温和化”であっても、その背景に縮小・隔離がある以上、こうした反応は自然だ。


2)“攻撃性遺伝子”への好奇心・説明要求
「選択の痕跡って具体的にどういうこと?」と、ゲノムから行動形質を語る難しさに踏み込む質問も出ている。 Reddit
これは健全な反応で、論文側も「行動は可塑性(学習・環境要因)か遺伝か」という古典的論点を正面から扱っている。 OUP Academic


3)“どうせ全部そうなる”という一般化
「文明圏の近くで生き残った動物は全部同じ傾向になるはず」と、結果を広く一般化するコメントもある。 Reddit
ただ、地域・種・管理方針で選択圧は大きく変わる。今回のケースは、長期隔離・小集団・人との近接という条件が重なった“強い実例”として読むのが妥当だろう。


なお同じPhys.org記事が、クマ好きコミュニティ(r/bears)でもリンク共有されており、関心自体は専門コミュニティ外にも広がっている。 Reddit



日本に引き寄せて考えると

日本でも、ツキノワグマの出没や人身被害がニュースになるたびに、「駆除か保護か」の二択で語られがちだ。だが今回の研究が突きつけるのは、私たちの行為が**“その瞬間の個体”だけでなく、長い時間をかけて“個体群の性質”**まで変えうるという事実だ。


衝突を減らす管理は必要でも、どんな個体が生き残り、どんな性質が次世代に残るのか——そこまで含めて設計しないと、共存は偶然任せになる。



まとめ:共存は「優しさ」だけでは成立しない

アペニンヒグマの“温和化”は、希望の物語というより警告に近い。人間の拡大が生んだ圧力は、個体群を縮め、遺伝的多様性を奪い、絶滅リスクを高めた。その一方で、衝突を避ける形質が選ばれる余地も生んだ。 Phys.org


私たちが受け取るべき教訓は、「クマが優しくなってよかった」ではなく——共存は、環境・管理・進化が絡む長期戦であり、結果はいつも代償つきだ、という現実なのだ。



参考記事

研究によると、村の近くに住むイタリアのクマは、より小型で攻撃性が低いように進化していることがわかりました。
出典: https://phys.org/news/2025-12-italian-villages-evolved-smaller-aggressive.html

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