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ミツバチとアリの性決定メカニズムを解明!養蜂と保全に効く基礎科学:“二倍体オス”が教えてくれたこと

ミツバチとアリの性決定メカニズムを解明!養蜂と保全に効く基礎科学:“二倍体オス”が教えてくれたこと

2025年11月12日 10:20

「雌雄を決めるスイッチ」は、ハチとアリで共有されていたのか

地球上の生物は多くが雌雄を持つが、“何が雌雄を決めるのか”は種ごとに驚くほど多様だ。中でもハチ・アリ・ハバチなど膜翅目の多くは半数体-二倍体(haplodiploidy)と呼ばれる仕組みを持ち、通常は受精卵(2n)が雌、未受精卵(n)が雄になる。だが、雌雄のカスケードを“押し始める”一次スイッチの中身は長らく謎が残っていた。ニュースサイトPhys.orgが伝えた最新成果は、その核心に一歩踏み込むものだ。赤レンガハキリバチの性決定座位が長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA) ANTSR と重なること、そしてこの遺伝子がアリでも性を決めると先行研究で示されていた事実を結びつける。これにより、ハチとアリが共通の“スイッチ”を持つ可能性が濃厚になった。Phys.org


研究の要点:2kbの“狭い領域”に収斂したCSD座位

ウプサラ大学のチームは、庭の「ビー・ホテル」でもおなじみの赤レンガハキリバチ(Osmia bicornis)の巣管を多数スクリーニングし、体の大きい二倍体オスという稀な個体を見つけ出した。二倍体なのに雄――それはCSD座位がホモ接合になったサインであり、ゲノム上の位置を逆算する“道標”となる。全ゲノム比較と連鎖解析の結果、CSDは約2キロ塩基の非常に狭い領域へとファインマッピングされ、そこがANTSRと重なることが判明した。さらに、この座位には極端に高いハプロタイプ多様性があり、頻度依存的選択によって多型が維持されていることを示唆する。DOI Resolver


この所見は、アルゼンチンアリ(Linepithema humile)で報告されたメカニズムと響き合う。2024年の研究は、CSD座位のヘテロ接合がANTSR発現を上げ、既知の性決定カスケード(transformer → doublesex のスプライシング制御)を雌ルートへ導くことを示した。つまり、ANTSRはタンパク質を作らないRNAでありながら、一次スイッチとして働く。PubMed


1.5億年前から続く“共通スイッチ”という仮説

今回のPLOS Biology論文は、ANTSR(あるいはその座位)が少なくとも5属のハチ・アリに広く保存され、1億5千万年以上前(アポイド類とアリ類の共通祖先の時代)に遡る可能性を示した。これは、「ハチとアリの性決定は、古くから共通の仕組みで動いてきた」ことを意味する。興味深いのは、ミツバチ(Apis mellifera)だけがタンパク質コード遺伝子 csd を一次スイッチに用いる“例外”である点だ。なぜミツバチだけが別ルートを採ったのか――論文の著者らも**「依然として謎」**だと述べている。DOI ResolverPLOS


「二倍体オス」から見えてくる保全・養蜂の示唆

CSDの世界では、母父が同じCSDアリルを共有すると、受精卵がホモ接合になり二倍体オスが生まれる。多くは生殖不能で、群れにとって遺伝的コストになる。今回、座位の多型性が非常に高かったことは、自然集団が**“同型受精”のリスクを減らす方向に進化していることの反映だろう。逆に言えば、小集団や近交の進んだ飼育条件では二倍体オスの発生が増え得る。


ANTSRという具体的な指標を得たことで、将来的には
多様なハプロタイプを維持する繁殖設計や、近交回避に基づく飼養管理の最適化が現実味を帯びる。これは在来ポリネーターの保全**にも通じる。DOI Resolver


lncRNAが“主役”になる時代

多くの読者にとって、「タンパク質を作らないRNAが雌雄を決める」という事実は直感に反するかもしれない。だが、アルゼンチンアリの研究はANTSRノックダウンで雄化が起こることを示し、赤レンガハキリバチの研究はそのゲノム座位の対応を突き止めた。**非コードRNAが“スイッチ”**になり、トランスフォーマー(tra)など古典的な遺伝子のオルタナティブ・スプライシングを上流で制御する――膜翅目の性決定は、コード遺伝子だけでは語り尽くせない段階に入った。PubMed


方法の妙:現場の観察 × 全ゲノム解析

この成果の裏には、巣管を1本ずつ開け、コクーンを量り、個体を識別していく地道な現場仕事がある。そこから二倍体オスを見つけ、全ゲノムの比較で座位を追い込み、公開データ(複数属のゲノム)も横断して多型の分布を検証する。狭い2kb領域に至るファインマッピングは、現場×計算の組み合わせがあってこそだ。DOI Resolver


ミツバチはなぜ違うのか――次の論点

ハチ・アリの“共通スイッチ”という仮説が強まるほど、ミツバチだけがcsdを使う理由は目立つ。進化のどこかでスイッチの付け替えがあったのか、ANTSRとcsdの相互作用が環境・社会構造で変わったのか。いずれにせよ、保全や家畜化の歴史と絡めた比較は今後の焦点だ。論文は**“なぜミツバチだけが違うのかは未解明”**と明記する。DOI Resolver



SNSの反応と初期の広がり(観測メモ)

  • 学術配信での露出拡大
     ウプサラ大学のプレスリリース(EurekAlert!)が公開され、専門メディアBioengineer.orgなどにも転載。ANTSRがハチとアリで共通の性決定遺伝子である可能性、1.5億年以上の保存といったキーフレーズが拡散した。EurekAlert!

  • プレプリント段階での注目
     2025年夏のbioRxiv版は、プレプリントのニュースレターやハイライト記事(the Node など)で取り上げられ、**「ハチとアリをつなぐANTSR」**という視点が早期に共有されていた。thenode.biologists.com

  • Altmetricの初期値
     PLOS BiologyのMetrics欄では、公開直後の“議論(Discussed)”はまだ大きくない。論文公開から数日〜数週で伸びるのが通例で、今後の追跡が必要だ。PLOS

  • 研究者コミュニティの受け止め(総観)
     昆虫・進化クラスタでは**「ハチとアリの共通化」への驚きと、「ミツバチは例外」という逆説的な面白さに注目が集まる一方、養蜂・保全クラスタでは近交回避や繁殖設計への応用可能性に関心が寄せられている――というのが現時点の定性的な傾向**だ(上記の配信・ハイライトとコメント欄の動向からの筆者整理)。

※個別ポストの直接引用は控え、公的リリースや媒体の配信・プレプリントの話題化・論文プラットフォームのメトリクスを根拠に、初期の温度感を概説しています。



何が“実務”に効くのか

  • 近交回避の設計
     CSD座位(ANTSR)のハプロタイプ多様性維持がカギ。小規模繁殖や人工環境ではアリル被りのリスクを下げる交配設計が有効だろう。DOI Resolver

  • モニタリングの新指標
     将来的に、ANTSR座位の多型パネルが整えば、二倍体オスの予測や群集の健全性評価に使える可能性がある。DOI Resolver

  • 教育・広報の素材
     「非コードRNAが主役」「ハチとアリの共通祖先から続くスイッチ」というメッセージは、市民科学や学校教育の教材化に向く。PubMed


研究の限界と次の一手

  • 対象種の拡張:赤レンガハキリバチとアルゼンチンアリを越え、多系統での機能検証が必要。DOI Resolver

  • 分子機構の決着:ANTSRがどの分子経路でtra/dsxスプライシングを制御するのか、結合因子やクロマチン環境の同定が今後のテーマ。PubMed

  • ミツバチの“例外”解明:csd採用の進化史、ANTSRとの関係、環境要因との相互作用を比較ゲノミクスで追う必要がある。DOI Resolver


参考記事

ミツバチとアリの性決定遺伝子が特定される
出典: https://phys.org/news/2025-11-sex-gene-bees-ants.html

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