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陰謀論、地政学、暗号資産——ナウファルが作った“マスク時代のニュース工場”

陰謀論、地政学、暗号資産——ナウファルが作った“マスク時代のニュース工場”

2025年12月12日 20:32

「マスクの耳」に届く最短ルートは、ニュースではなく“返信”なのか

X(旧Twitter)を買収して以降、イーロン・マスクの投稿はビジネスの発表から地政学、国内政治まで、もはや“超巨大メディア”そのものになった。そこで起きているのは、単なる発信ではない。**「誰に返信し、誰を引用リポストするか」**が、次の話題、次の主役、次の世論のうねりを決めてしまう現象だ。


その渦中で急浮上したのが、レバノン系オーストラリア人のインフルエンサー/起業家 マリオ・ナウファル(Mario Nawfal) である。報道によれば、米大統領選後の一定期間だけでもマスクがナウファルの投稿に対して行った反応(返信・リポスト等)は1,311回に達し、他アカウントを上回る水準だという。ナウファル側もX上で約260万人規模のフォロワーを抱え、マスクの“反応”がその成長エンジンになっている、と描かれる。 マネーコントロール


ここで問うべきは人物評価だけではない。なぜ、どのようにして、ひとりのインフルエンサーが「世界一影響力のある返信」を引き出せるのか。そして、その仕組みが民主主義・情報空間・ビジネスに何を起こすのか、だ。



1)ナウファルとは何者か:キッチン家電から“市民ジャーナリズム”へ

AFP/L’Orient Todayは、ナウファルを「インフルエンサー/“市民ジャーナリスト”」と呼び、Xの音声番組「Roundtable(ラウンドテーブル)」を軸に、マスクやRFK Jr.、アンドリュー・テイト、ベラルーシ大統領ルカシェンコら幅広い人物へ接近してきたと整理する。 L'Orient Today


別報道では、彼は2016年にドバイへ移り、2017年に暗号資産のマーケティング会社 IBC(International Blockchain Consulting Group) を設立。かつてはキッチン用品販売などを手掛けたのち、暗号資産領域へ軸足を移し、X上での露出と番組を“商品化”していった流れが語られる。 マネーコントロール


このプロフィール自体は珍しくない。だが、決定的に違うのは、「マスクとの結びつき」そのものがビジネス資産になった点だ。



2)転機は「FTX崩壊」と“10分の参加”

報道が共通して強調するのは、2022年の暗号資産取引所FTX崩壊をめぐるXスペース(音声配信)で、マスクがナウファルの配信に突然参加した出来事だ。記事によれば滞在は“およそ10分”ほど。それでもフォロワーは数週間で約3倍になり、IBCの単価(売り値)も跳ね上がったという。 マネーコントロール


SNS時代の成長譚としては、いかにも“偶然のバズ”に見える。だが、同じ報道はこう続ける。ナウファル側の営業資料では、マスクへの言及が20回以上も登場し、マスクがナウファルを持ち上げるスクリーンショットが並ぶ。パッケージ料金は6万ドル超〜20万ドル近いレンジまで示される。 マネーコントロール


つまり転機は偶然でも、その後は**「偶然を再現可能な仕組み」**に変えられた、という描像だ。



3)政治領域へのピボット:右派インフルエンサーד番組工場”

次の段階は、暗号資産から政治・社会争点への転換だ。報道では「Roundtable」が政治色の強いゲストへシフトし、ロバート・F・ケネディJr.、タッカー・カールソン、アレックス・ジョーンズ、アンドリュー・テイト、さらには白人至上主義者として知られる人物まで出演した、とされる。 マネーコントロール


この“番組化”を支えるために、ナウファルはリサーチャー、ゴーストライター、アカウント運用担当などグローバルスタッフ体制を組み、投稿が「1時間に数百件」規模になることもある、と描かれる。メディア部門として Citizen Journalism Network(CJN) を組織し、報道では約80人規模、暗号資産側を含めるとさらに多数の人員がいるともいう。 マネーコントロール


さらに、CJNをめぐってはBusiness Wireのリリースで、CJNが「分散型メディア」「言論の自由」「Xの“街の広場”という理念」に沿う存在として説明されている。 ビジネスワイヤ


ここまで来ると、もはや“個人インフルエンサー”ではない。編集部と制作部を持つ、準メディア企業である。



4)「マスクの耳」に届くと何が起きるか:ルーマニア事例

象徴的に語られるのが、ルーマニアの強硬右派政治家をめぐる一件だ。報道によれば、当人がナウファルへ電話し、その録音をナウファルがXへ投稿。するとマスクが関連投稿を多数拡散し、国際的に知名度の低かった政治家が“右派圏の話題”として急浮上した、とされる。 マネーコントロール


ここには現代的な“広報の最短距離”がある。
政府要人や政治家が、新聞社の編集局ではなく、マスクがよく反応するアカウントに近づく——。それが成功すれば、次に起きるのは「世界一影響力のある引用リポスト」だ。



5)地政学と“権威主義の正当化”懸念

Guardianは2025年4月の記事で、ナウファルがプーチン政権の同盟関係にある首脳級・高官級へのインタビューを行い、マスクが短期間にナウファル投稿を多数リポストした、と報じる。記事は、セルビア大統領、ロシア外相ラブロフ、ベラルーシ大統領ルカシェンコ、スロバキア首相などの名を挙げ、専門家の見方として「ロシアのプロパガンダは“米国の本音を代表する人物”を装う語り口を利用する」趣旨の指摘も紹介している。 ガーディアン


もちろん、インタビュー自体はジャーナリズムの手法でもある。問題は、質問の切れ味・検証・反証可能性・文脈提示が弱い場合、視聴者が“報道”ではなく“正当化動画”として消費してしまう点だ。AFP/L’Orient Todayも、ルカシェンコへの対応を「うなずきが多く、深掘りが少ない」印象として描写している。 L'Orient Today



6)批判:誤情報、ボット疑惑、そして“過去の商売”

影響力が膨らむほど、批判も増える。報道は主に3つの論点を挙げる。


(a) 誤情報・未検証情報の拡散
ナウファルのフィードが「不正確または未検証の素材」を繰り返し共有してきた、という指摘がある。一方で本人は、投稿量が膨大であることを理由に「エラー率は低い」と主張する構図も描かれる。 マネーコントロール


(b) エンゲージメントの“水増し”疑惑
別報道では、イスラエル企業Cyabraのレビューとして、ナウファル投稿に反応するアカウント群に“偽活動”が相当量含まれる可能性を指摘した、とされる。本人は否定している。 マネーコントロール


(c) 金銭面の疑惑・過去の行政処分
AFP/L’Orient Todayは、2015年に豪州当局が、ナウファルのキッチン家電販売会社に対し「誤解を招く表示」を理由に罰金を科した件や、暗号資産領域での「パンプ・アンド・ダンプ」疑惑をめぐる主張・訴訟などを“申し立て”として整理する(本人は当時、違法行為を否定しつつ、ミスは認め、返済を約束したとされる)。 L'Orient Today


ここで重要なのは、事実認定を読者が早合点しないことだ。多くは「告発・申し立て・報道上の指摘」であり、確定した断罪とは別物である。ただし、マスクの拡散が“信頼の印”として機能してしまう瞬間がある以上、疑惑が晴れていない事項を含む人物が巨大な増幅装置を得るリスクは残る。



7)SNSの反応:称賛と嫌悪が同時に伸びる構造

SNS上の反応は、きれいに二分されるというより、同じ投稿が「称賛」と「批判」を同時に増幅させる。


称賛側:「既存メディアの終わり」「俺たちがメディアだ」
豪メディアB&Tは、X上の新番組「69 Minutes」(表記ゆれ含む)をめぐり、ナウファルが「レガシーメディアに釘を刺す」といった趣旨で煽り、毎週配信を打ち出した流れを紹介する。番組は豪州の司会者エリン・モランがホストを務め、ナウファル側が“次の一撃”“We are the media now(私たちがメディアだ)”といった言い回しで推進していると報じられる。 Bandt


これは「反・既存メディア」感情に刺さる。疑念や怒りを抱える層にとって、巨大資本×SNS番組は“反撃の装置”に見えるからだ。


批判側:「出典が薄い」「検証がない」「コミュニティノート案件」
一方、批判は情報の作法に向かう。元Guardian編集者によるMedium記事は、ナウファルの投稿がリンクを付けないことが多く、出典の確認が難しい点や、コミュニティノートが介入した事例などを挙げ、誤情報の温床になりうると論じている。 Medium


“見世物化”する反応
さらにCrikeyは、モラン司会の番組初回が陰謀論に親和的な話題を広範に扱った、と皮肉混じりに書き、番組が「何にでも食いつく」タイムライン消費向けだという印象をにじませる。 Crikey


要するに、SNSの反応はこうなる。

  • 反・既存メディア層:痛快/代弁者/“真実に近い”

  • 検証重視層:危うい/誤情報/権威主義の宣伝装置

  • ウォッチャー層:プラットフォーム設計(返信・アルゴリズム)の問題

そしてこの分断自体が、エンゲージメントを増やす。炎上でも称賛でも、数字が伸びれば次のゲストが来る。数字が伸びれば、マスクがまた見つける——この循環が、ナウファルの“強さ”でもある。



8)結局これは「個人の問題」ではなく「設計の問題」

ナウファルの台頭が突きつけるのは、SNS時代の権力構造だ。
新聞の一面は編集会議で決まる。テレビの特番も編成で決まる。だがXでは、オーナーの“反応”が編成権になる。しかも、その反応はアルゴリズムで加速される。


Business Wireの資料が示すように、ナウファル側は“言論の自由”や“街の広場”という理念をまとい、メディア事業を拡張する構えを見せる。 ビジネスワイヤ

同時に、Guardianが提示する懸念のように、権威主義国家の語りを“西側のインフルエンサー”が届ける構図は、プロパガンダ研究の文脈でも警戒される。 ガーディアン


このギャップを埋める鍵は、規制でも思想でもなく、まずは透明性だろう。

  • 収益モデル(広告・スポンサー・暗号資産案件)の明確化

  • 出典リンクの徹底と訂正履歴

  • 取材・編集プロセスの説明

  • プラットフォーム側のアルゴリズム影響の可視化


「市民ジャーナリズム」を名乗るなら、従来メディアの弱点(偏り、遅さ、利害)を叩くだけでなく、**自分の弱点(検証、責任、訂正)**をどう扱うかが問われる。マスクの“耳”に届く人ほど、その問いから逃げられない。



参考記事

イーロン・マスクが夢中になっているオーストラリアの右派インフルエンサー
出典: https://www.smh.com.au/business/companies/the-australian-right-wing-influencer-who-has-elon-musk-s-ear-20251208-p5nlm7.html?ref=rss&utm_medium=rss&utm_source=rss_business

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