14.04億人でも減り続ける:中国の出生792万人が示す“高コスト社会”の限界

14.04億人でも減り続ける:中国の出生792万人が示す“高コスト社会”の限界

「また減った」で済ませられない重みが、今回の統計にはある。中国の人口減少は2025年で4年連続。しかも出生率は、統計が整備された1949年以降で最低水準に落ち込んだ。政策側は“出産を増やすためのアイデア総動員”に踏み込んでいるのに、出生の底割れが止まらない――そこに、この問題の難しさが凝縮されている。



1)数字が示す「人口減の加速」

中国国家統計局の発表によると、2025年末の総人口は140,489万人(約14.04億人)で、前年比339万人減。出生は792万人、死亡は1,131万人。出生率は5.63‰、死亡率は**8.04‰で、自然増加率は-2.41‰**と明確なマイナスだ。


あわせて高齢化も進む。60歳以上は32338万人(総人口の23.0%)65歳以上は22365万人(15.9%)。人口が減るだけでなく、「支える側(現役世代)」と「支えられる側(高齢層)」の比率が、より急な角度で変わっていく。



2)政策は“やれること全部”へ:現金給付から税制まで

今回のニュースが注目されるのは、人口動態そのものに加えて、政策がかなり踏み込んだ段階に入っているからだ。


代表例が、3歳未満の子ども1人につき年3600元(非課税)の育児手当。政府系発表では、2026年の全国申請受付を開始し、オンライン(Alipay/WeChat等)でも申請できるとされる。さらに2025年は中央予算から900億元を充当予定だったとも記されている。


一方で海外報道では、行動を“後押し”するだけでなく“誘導”する施策として、避妊具(コンドーム)への課税や、マッチメイク(仲人)や保育施設の税優遇といった、かなり象徴的な例も紹介されている。


さらにロイターは、こうした出生支援策の財政負担が総額1800億元規模に達し得るという試算を報じ、IVF(体外受精)を含む医療費の全額償還方針などにも触れている。



3)それでも出生が戻らない理由:最大の敵は“構造”

政策が増えるほど、「じゃあなぜ増えないのか」が際立つ。海外報道で繰り返し出てくる論点は、ざっくり言えば次の3つだ。

① 生活コスト:特に住宅と教育

子どもを持つ判断は、単発の給付ではなく、十数年〜二十数年の“固定費”を引き受ける判断に近い。住宅費、教育費、保育費が高止まりする限り、給付が「安心の設計図」にはなりにくい。

② 雇用と将来不安:景気の空気が意思決定に直結

結婚・出産は「先の見通し」が前提になる。家計が将来不安を強める局面では、出生は最も後回しにされやすい。

③ ジェンダーと職場:出産が“キャリア罰”になっていないか

APは、住宅・仕事・教育などの構造問題が大きく、そこを動かさない限り出生数の大きな反転は難しいという専門家コメントを紹介している。また、育児で不利益を被らない職場環境が必要だという指摘も強い。



4)「人口が減る」以上に効く、経済への副作用

人口減少の怖さは、労働者数が減ることだけではない。消費の伸びが鈍る一方で、年金・医療・介護などの支出は増えやすい。ロイターは、高齢化が国内消費の拡大や債務抑制といった政府目標を複雑にすると報じ、定年年齢の段階的引き上げにも触れている。


要するに、国としては

  • 出生支援に投じるほど財政は重くなる

  • 投じなければ人口減の痛みが早く深くなる
    という板挟みに近い状況だ。



5)SNSの反応:冷笑・皮肉・諦め、そして「まだ下がる」という声

この話題はネットでも拡散し、反応はかなり生々しい。

中国語圏SNSで話題化:「減って良い」「皮肉が刺さる」

日本語で中国SNSの反応を紹介した記事では、出生792万人が話題になり、

  • 「人が少ないほうが高品質なのでは?」といった**“人口の質”スローガンを逆手に取る皮肉**

  • 「まだ多い」「もっと下がる余地がある」といった冷めた見方

  • 長時間労働(いわゆる“996”)や残業環境が続く限り難しいという働き方への不満
    などが並んだとされる。

海外SNSでも拡散:「給付の額だけで動く問題ではない」

海外記事の共有投稿(報道機関の公式投稿など)を起点に、出生支援の“額”や“職場文化”に焦点が当たるのは定番の流れだ。背景には、東アジア諸国で少子化対策に多額の支出をしても成果が限定的だったという認識があり、「簡単に戻らない」という空気が最初から混ざっている。



6)今後の焦点:「出生を増やす」より先に、暮らしの設計を変えられるか

出生率は命令できない。だからこそ、次の焦点は“政策の種類”ではなく、“生活の前提条件”をどこまで動かせるかに移る。

  • 育児支援が「単発の補助」から「長期の安心」になっているか

  • 住宅・教育・保育のコスト圧力を下げられるか

  • 出産・育児がキャリア不利益にならない制度と慣行を作れるか


統計は冷たい。しかしSNSの声が生々しいのは、人々が「数字の裏側の暮らし」を直感的に知っているからだ。人口減少は“ニュース”である前に、“生活の条件設定”の結果でもある。



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