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「男だから」と笑われる痛み ─ DVは女の問題だけじゃない? 男性被害を語ることがすべての被害者を救う理由

「男だから」と笑われる痛み ─ DVは女の問題だけじゃない? 男性被害を語ることがすべての被害者を救う理由

2025年11月23日 22:06

「男なら我慢しろ」「情けない」「被害者は女でしょ?」

そんな言葉が、男性被害者の口をふさぐ“見えない手錠”になっている――。
アイルランドのトリニティ・カレッジ・ダブリンが行った「MENCALLHELP2」プロジェクトは、その現実を数字と証言で可視化しました。Phys.org



アイルランドの男性向けDVホットラインに寄せられた7,132件の声

研究チームが分析したのは、男性向け支援団体「Men's Aid Ireland」に2022年の1年間で寄せられた7,132件の問い合わせデータです。そのうち1,232件は、実際にドメスティック・バイオレンス(DVA)の被害を訴えるものでした。加害者の93.1%は女性パートナーであり、被害男性の85%が複数の種類の暴力を経験していたと報告されています。Phys.org


最も多かったのは「感情的虐待(86.1%)」「心理的虐待(69.3%)」といった、殴る・蹴る以前の“見えにくい暴力”。続いて「身体的虐待(36.9%)」「コントロール(30%)」「親による子どもの引き離し=パレンタル・エイリアネーション(26.3%)」「経済的虐待(20.3%)」と、多様な形で男性たちの生活と心が削られていました。Phys.org


研究では、メールや通話記録、対面のメモなど約2,200件の詳細ノートも分析され、男性被害者が抱える問題は、住宅・子ども・法的トラブル・メンタルヘルス…と複雑に絡み合っていることが浮かび上がっています。Phys.org



「男の弱さは笑いもの」という文化バイアス

研究を率いたメラニーサ・コーバリー准教授は、
「家父長制的な社会では、男性の弱さはしばしば笑いのネタにされる。そのため、虐待を受けている男性が助けを求めるのは非常に難しくなる」と指摘します。Phys.org


政治家や支援団体の代表も、「男性のDV被害は“見えていないだけ”で、恥や嘲笑への恐怖が沈黙を強いている」とコメント。Phys.org


つまり「男は強くあるべき」「泣くなんて情けない」という古いジェンダー規範が、暴力そのものと同じくらい、男性を追い詰めているのです。



日本のデータが示す“沈黙する男性被害者”

この問題は決してアイルランドだけの話ではありません。日本政府の調査でも、「結婚経験のある人のうち、女性の27.5%、男性の22.0%が配偶者から暴力を受けた経験がある」とされています。男女共同参画局


しかし被害を受けた人のうち、どこにも相談していない人は44.2%。男女別に見ると、女性36.3%に対して男性は57.2%と、男性の方がより沈黙しがちであることが分かります。内閣府


また、近年の報道では、日本における男性からのDV相談件数が過去20年で約170倍、直近5年でも1.5倍に増加しているというデータも紹介されています。JAPAN Forward


増えているのは「被害」そのものというより、「ようやく声を上げる人が増え始めた」というほうが近いかもしれません。



SNSにあらわれる三つの反応パターン

男性被害や今回のような研究が報じられると、SNS上ではおおよそ次の三つの反応パターンが見られます(ここでは実際の投稿ではなく、典型的な言説パターンを要約しています)。


1. 共感と支援の声

まず目立つのは、被害男性に寄り添う声です。

  • 「男性だって被害者になりうる。性別に関係なく支援が届いてほしい」

  • 「自分も元パートナーからのモラハラで心を壊された。『男だから弱音を吐くな』という空気が一番つらかった」

過去に似た経験をした男性や、その家族・友人と名乗る人たちが、「ようやく言ってくれた」「もっと早くこういう研究が欲しかった」と反応するケースは少なくありません。


2. 「女性被害を相対化するな」という懸念

一方で、こんな意見も根強く存在します。

  • 「男性被害も大事だけど、女性への暴力の方が圧倒的に多い現実をぼかしてはいけない」

  • 「予算や支援リソースが限られる中で、女性向け支援がさらに削られないか心配」

つまり、「男性被害を可視化すること」と「女性被害への支援」を対立構造で捉えてしまう不安です。ジェンダー暴力の議論が“ゼロサムゲーム”になってしまうと、当事者同士が対立し、結果として加害者だけが得をする構図になりかねません。


3. ネタ化・冷笑・バックラッシュ

そして最も厄介なのが、「男性被害」を笑いのタネにする投稿や、“逆差別だ”と攻撃的になるバックラッシュです。

  • 「DVされる男ってどんだけヘタレなんだよw」

  • 「どうせ女を殴り返さない優しいオレって設定でしょ?」

こうした言葉は、被害者の沈黙をさらに強固にします。
「弱さ」を笑い飛ばす文化が残る限り、男性も女性も、ジェンダーに関係なく“言い出せない被害者”を生み続けてしまうでしょう。



男性被害を語ることは、誰かの「逃げ道」を増やすこと

アイルランドの研究が示したのは、単なる統計以上のメッセージです。
それは「男性被害を語ることは、女性被害を軽視することではない」ということ。


むしろ、暴力の本質――相手をコントロールし、尊厳を奪う行為――に焦点を当てれば、性別に関わらず、被害者が助けを求めやすい社会設計が見えてきます。研究チームは、男女問わず比較可能なDVAの定義の整備や、匿名相談者にも継続的支援につながるIDを付与する仕組みづくりなどを提案しています。Phys.org


これは日本でも応用可能な視点です。
「配偶者から暴力を受けた経験がある」と答えた人のうち、男性の57.2%が誰にも相談していないという事実は、相談窓口の増設だけでは解決できない“文化的な壁”の存在を示しています。男女共同参画局



SNS時代の私たちにできる、三つの小さな実践

最後に、私たち一人ひとりがオンライン/オフラインでできることを、あえてシンプルに三つに絞ってみます。

  1. 「男のくせに」「女のくせに」というフレーズを手放す
    たった一言が、被害者の口をふさぐ決定打になることがあります。

  2. 被害談を聞いたとき、性別よりも“安全の確保”を優先する
    「本当に?」「どっちもどっちでしょ」と真偽をジャッジする前に、まずは安全確認と情報提供を。

  3. SNSで冷笑的な投稿を見かけたら、いいねも拡散もしない
    無視する、あるいは丁寧に異議を唱えることも立派なアクションです。


男性の弱さを笑いものにする文化は、いずれ女性や子ども、マイノリティの弱さにも向けられます。
「誰がどのくらい傷ついているのか」を競うのではなく、「誰も傷つけずに済む社会に近づけているか」を問い直すこと――それこそが、今回の研究とSNSの議論が私たちに投げかけている宿題ではないでしょうか。



参考記事

現代社会では、男性の脆弱性がいまだに嘲笑されており、虐待を受けた男性が支援を求めることが難しくなっています。
出典: https://phys.org/news/2025-11-male-vulnerability-ridiculed-contemporary-societies.html

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