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がんは進化に負けない? ― 急速に進化した動物ほど「悪性腫瘍が少ない」という発見

がんは進化に負けない? ― 急速に進化した動物ほど「悪性腫瘍が少ない」という発見

2025年11月13日 00:10

「速く変わった体」は、がんにも強かった?

「体が大きい動物ほどがんになりやすいとは限らない」――長年の通説(ペトのパラドックス)に揺さぶりをかけてきた比較腫瘍学に、また一つ新しいピースが加わった。体サイズが速く進化した動物ほど、悪性腫瘍の頻度が低いというのだ。研究はロンドン大学(UCL)、レディング大学、ジョンズ・ホプキンス大学らのチームによるもので、**PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences)**に2025年11月6日付で掲載。一般向けの解説記事も11月11日にPhys.orgで公開された。oro.open.ac.uk


研究の要点:良性と悪性で“進化の力学”が分かれた

解析は、鳥類77種と哺乳類87種における剖検ベースの腫瘍データを、体サイズ(体重)、体サイズ進化の速度、そして**系統の多様化率(種分化の速さ)**と結び付けてモデル化したもの。結果は明快だ。

  • 悪性腫瘍:体サイズ進化が速い系統ほど有病率が低い(鳥・哺乳類で共通)。

  • 良性腫瘍:同様の低下は見られない。

  • 鳥類:多様化率が高い系統ほど良性・悪性とも腫瘍が増える傾向。哺乳類では有意な関係は見られず、群間で様相が異なる。
    著者らは、体サイズが急速に変わる過程でがん特異的な防御機構(例えば転移や浸潤を抑える仕組み)が選択され得る一方、細胞増殖のゆるい乱れとして現れやすい良性腫瘍は強い淘汰圧を受けにくい、と解釈する。鳥類側の“多様化=腫瘍増”という逆風は、鳥のゲノムが小さくコンパクトで、染色体再編成など種分化に伴う不安定化の影響を受けやすいという仮説で説明される。フィジ.org


どうやって確かめたの?

統計的にはベイズ多変量系統GLMMを用い、系統間の共通祖先による非独立性を制御。剖検数などの観測努力の違いもモデルに組み込んだ。因果を断言するものではないが、「体がどれだけ大きいか」に加え、「どれくらいの速さで大きく(小さく)なったか」という進化のスピードを軸にすると、悪性腫瘍だけが選択圧の影響を強く受けている兆候が浮かぶ。oro.open.ac.uk


背景:2025年に相次いだ“通説の再検証”

同じ著者らは2025年2月の別報で、「大型動物ほど腫瘍が多い」という、従来の“パラドックス”に再考を促す結果を発表している。今回の報告は、その延長線上で**「大きさ」だけでなく「大きさの変わり方」**を鍵に、悪性と良性を分けて捉え直した点が新しい。University College London


進化学からがん研究への“橋”

「がんは細胞の暴走だけでなく、進化の文脈で見える」とする視点は、治療抵抗性の理解にもつながる。進化が速い系統で強化される“がん特異的”防御は、転移や休眠、環境適応といった腫瘍の進化的性質を標的にする発想と相性が良い。実際、著者らは“悪性だけが下がる”という縦割りの結果を、転移抑制のようなプロセス特異的防御の表れと解釈している。人の医療に直結させるには飛躍があるものの、進化速度という軸は、なぜ一部の動物ががんに強いのかを探る手掛かりになる。oro.open.ac.uk


鳥と哺乳類で違いが出た理由は?

鳥類で“多様化=腫瘍増”が見え、哺乳類では見えなかった。鳥はゲノムが小さく高密度で、染色体再編や遺伝子の融合など種分化に伴う変化が腫瘍促進的に働きやすい――著者らはこう推測する。ヒト前立腺がんに見られる遺伝子融合(例:TMPRSS2–ERG)のように、情報のシャッフルが悪性度を押し上げる現象はがん生物学ではおなじみだ。進化とゲノム構造のクロストークが、群間差の鍵かもしれない。フィジ.org


ここに注意:限界と次の一手

  • データ源の偏り:多くは剖検記録に依拠し、飼育環境・観察努力・診断の粒度に差がある。

  • 良性/悪性の区別:病理の一貫性や見逃しの影響を受け得る。

  • 相関と因果:進化の速さは相関指標であり、直接の機構(免疫、DNA修復、腫瘍抑制遺伝子の冗長化など)は今後の分子レベル検証が必要。
    それでも、「悪性だけが進化のスピードと逆相関」というパターンは再現性のある強いシグナルとして報告され、11月11日号のPNAS目次にも掲載されている。oro.open.ac.uk


SNSの反応ダイジェスト(要約)

公開直後の現時点(2025年11月12日)、本件は大学の広報(EurekAlert!、University of Reading)や科学メディア(Phys.org, Bioengineer.org)経由で拡散が進行中。研究者コミュニティでは次のような論点が共有されている:

  • 「良性と悪性を分けた設計が良い」――診断学的に異なる2つを一緒くたにしない比較腫瘍学の前進。

  • 「剖検データの偏りや統計前提の吟味が必要」――特に種分化率の推定と病理の一貫性。

  • 「ヒト医療への応用は慎重に」――ただし、治療抵抗性や転移研究の発想にはプラス。
    (注:拡散の一次ソースと公式情報は以下を参照)EurekAlert!


研究を“地図”に落とす:比較腫瘍学のいま

本研究は、2025年初頭に同チームが示した**「大きい種ほどがんが多い」という再評価とも整合し、さらに「どれだけ速く大きくなったか」まで踏み込んだ。象やクジラのがん抵抗性を遺伝学的に探る潮流(p53コピー数増加、腫瘍抑制遺伝子の重複など)とも噛み合う。種のサイズ・寿命・ゲノム構造・進化速度――これら複数軸を束ねて、“がんという進化現象”**に挑む地図が描かれつつある。PMC


参考記事

研究によると、急速に進化する動物ではがん腫瘍が少ないことが判明
出典: https://phys.org/news/2025-11-cancerous-tumors-common-rapidly-evolving.html

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