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不安を煽る政治 vs. 不確実性を楽しむ心:不安の時代に「右派票」を減らすのは、意外にも“心の持ちよう”だった

不安を煽る政治 vs. 不確実性を楽しむ心:不安の時代に「右派票」を減らすのは、意外にも“心の持ちよう”だった

2025年11月21日 00:09

1. 不確実性が“右派票”を生むメカニズム

パンデミック、戦争、エネルギー危機、気候変動――ここ数年、世界は「想定外」が当たり前になりました。明日の仕事や生活すら読めない感覚は、多くの人にとってじわじわとしたストレスです。そうした不安を背景に、ヨーロッパ各地で右派ポピュリスト政党が支持を伸ばしてきたことは、数多くの研究が指摘してきました。MDPI


恐怖や怒りといった強い感情は、「敵」と「味方」をはっきり分ける単純な物語と相性が良く、「移民のせいだ」「エリートが国を売っている」といったメッセージに人々を惹きつけます。政治心理学のレビューでは、保守的な立場の人ほど脅威への感受性が高い傾向があるものの、その強さは状況に左右されやすい、とも報告されています。MDPI


では、不安に満ちた時代に右派ポピュリズムの影響力を弱めることはできるのでしょうか。その鍵を「不確実性の捉え方」に見いだしたのが、今回のETHチューリッヒの研究です。ETH Zürich



2. 「不確実性マインドセット」を測る実験とは?

研究チーム(タキザワ・ルリら)は、「不確実性マインドセット(uncertainty mindset)」という概念に注目しました。簡単に言えば、

  • 不確実性を脅威・危険とみなすか

  • 不確実性をチャンス・学びとみなすか

という“心のレンズ”の違いです。PubMed


2024年12月から2025年3月、ドイツ連邦議会選挙(2025年2月)に合わせて、18〜80歳の市民745人を対象にオンライン実験が行われました。参加者は教育・性別・所得・地域などの点でドイツ全体を代表するように構成されています。ETH Zürich


  • 実験群(391人):本調査の前に約7分半のスライドプレゼンを視聴

  • 統制群(354人):プレゼンなしで同じ質問票に回答

このプレゼンには、科学研究から取り出した「不確実性が新しい発明やキャリアの転機を生んだ例」や、スティーブ・ジョブズの有名なスタンフォード卒業式スピーチの一節など、「先が見えないからこそ道が開ける」というストーリーが並びます。ETH Zürich


その後、参加者は

  • 不確実性をどの程度「機会」とみなせるか

  • 社会の多様性(移民や少数派)をどれだけ肯定的に捉えるか

  • 社会変革にどれだけコミットしたいか

  • 次の選挙でどの政党に投票する可能性が高いか

といった項目に答えました。PubMed



3. たった一度の“7分プレゼン”が変えたもの

結果はかなりはっきりしていました。プレゼンを見た実験群では、統制群と比べて次のような傾向が確認されています。フィジオールグ

  1. 不確実性を「チャンス」とみなすスコアが上昇

  2. 社会の多様性を「生産的」「プラスになる」と感じる度合いが高い

  3. 異なる集団との接触を避ける傾向が弱まり、社会変革への意欲が強い

  4. 右派ポピュリスト政党(ドイツではAfD)に投票すると答える割合が低い

この効果は単なる一時的な気分の変化ではなく、少なくとも1カ月後の追跡調査でも持続していたと報告されています。ETH Zürich


研究チームは、右派ポピュリスト政党が69議席を獲得し第2党に躍進したドイツ選挙の文脈で、「不確実性をどう扱うか」が民主主義の安定性にとって重要な要素になり得ると指摘します。research-collection.ethz.ch


もちろん、この実験だけで「7分のスライドを見せれば右派票が減る」と結論づけることはできません。サンプルはオンライン調査に協力する市民であり、実際の投票行動と自己申告が完全に一致するとも限らないからです。ただ、それでも**「不確実性の意味づけ」は意外と柔らかく、短い介入で変えられる**ことを示した点は大きなインパクトがあります。PubMed



4. SNSはこの研究をどう受け止めたか

論文がオンライン公開され、ETHチューリッヒやPhys.orgがニュースとして取り上げると、心理学コミュニティや研究関連アカウントを中心にSNSで拡散されました。フィジオールグ

 



  • パーソナリティと社会心理学の学会アカウント(SPSP)が、
    「不確実性をチャンスとみなすマインドセットが、多様性への肯定的態度と右派ポピュリズム支持の低さにつながる」
    と研究のポイントを紹介し、記事リンクを共有。X (formerly Twitter)

  • LinkedInでは、政治コミュニケーションや組織開発の専門家がこの研究を引用し、「変化の時代に必要なのは恐怖ではなく、未知を学びの場と見る視点だ」とコメントを添えてシェアしていました。LinkedIn

一方で、ポリティカル・サイコロジーとポピュリズム研究の文脈では、「不確実性を利用して支持を集めてきたのは右派だけでなく、あらゆる政治勢力だ」とする指摘や、「投票選好を変える心理的介入はどこまで許されるのか」という倫理的な疑問も投げかけられています。これは、脅威感受性や不確実性と政治志向の関係を扱った既存研究でも繰り返し議論されてきた論点です。MDPI


典型的な反応イメージ(※実在の投稿ではなく傾向をモデル化したもの)

肯定的な側

「不安を煽る政治に対抗するには、感情レベルでの“免疫”が必要。この研究は、教育やメディア現場にとってヒントになりそう。」


慎重な側

「“右派ポピュリズムを減らすためのマインドセット介入”と聞くと、一歩間違えばプロパガンダにもなり得る。誰がどの目的で使うのか、透明性が重要だ。」


現場目線

「7分のスライドで世界が変わるとは思わないけれど、『不確実だからこそやってみる』という視点を若い世代に共有する価値はありそう。」


ここで重要なのは、SNS上の議論が**「右派が悪い/左派が正しい」といった単純な二項対立ではなく、「不確実性との付き合い方をどう社会に埋め込むか」というメタな問いに向かいつつある**点です。



5. 不確実性を“恐怖”から“資源”へ:何ができるのか

タキザワらの研究は、あくまで心理学的な実験であり、特定の政党やイデオロギーを推奨するものではありません。研究者自身も、「世界を一変させることはできないが、世界の見え方を少し変えることはできる」と慎重なトーンで語っています。ETH Zürich


それでも、この知見から読み取れる示唆はいくつかあります。

  1. 教育現場

    • キャリア教育や市民教育の授業で、「予定調和の人生」ではなく「予測不能な選択から生まれた物語」を扱う。

    • 失敗や方向転換を肯定的に捉えるストーリーテリングは、単に生徒を励ますだけでなく、不確実性に対する耐性を育てる可能性がある。

  2. メディアと情報リテラシー

    • 危機や不安をセンセーショナルに報じるだけでなく、「不安定さの中で起きている前向きな変化」も同時に伝える構成を工夫する。

    • 読者が「世界はただ悪くなっているだけではない」と感じられるようなバランスが、不確実性をチャンスとみなす視点を支えるかもしれない。

  3. 職場・組織

    • イノベーションやDXの文脈で、未知への挑戦を「失敗すれば評価が下がるリスク」ではなく、「学びのプロセス」として位置づける文化づくり。

    • こうした経験の積み重ねが、政治だけでなく日常生活レベルでの“不確実性マインドセット”を形づくる可能性があります。


ここで注意したいのは、不確実性をポジティブに捉えることが、必ずしも「リスクを軽視する」ことではないという点です。気候危機や社会格差など、現実の問題は深刻で、適切な危機感は不可欠です。ただ、「怖いから現状維持」「敵を見つけて責任転嫁」という方向だけが唯一の反応ではなく、「怖いからこそ一緒に新しいやり方を探す」という道もある――その可能性を示したのが今回の研究だと言えるでしょう。PubMed



6. これからの選挙と“不確実性マインド”

2020年代は、おそらく「不確実性の時代」として記憶されます。デジタルニュースの調査でも、多くの人が政治や経済の将来を悲観的に見ており、ニュースへの不信感も高まっていると報告されています。reutersinstitute.politics.ox.ac.uk


そんな中で、

  • 不確実性を恐怖として利用する政治

  • 不確実性を一緒に引き受け、試行錯誤の余白として提示する政治

どちらに人々が惹かれていくのかは、今後の選挙を左右する大きな要因になりそうです。今回の研究は、その分岐点に「個々人のマインドセット」という心理的な層が存在することを可視化しました。


私たち一人ひとりにできるのは、「未来が読めないからこそ、話し合い続ける」「自分の不安が、誰かへの攻撃や排除の欲求にすり替わっていないかをときどき振り返る」といった、小さなセルフチェックかもしれません。


不確実性そのものは消せません。しかし、その意味づけが変わることで、社会の空気と民主主義の強さが少しずつ変わっていく――今回の研究は、そんな希望をデータで裏打ちした一歩といえそうです。ETH Zürich



参考記事

研究によると、不確実性を肯定的に評価する人々は、右派ポピュリストに投票する可能性が低いことが示されています。
出典: https://phys.org/news/2025-11-people-uncertainty-positively-vote-wing.html

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