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「キャリアか心か」─“働きたくないわけじゃない” Z世代女性が職場から消えていく日

「キャリアか心か」─“働きたくないわけじゃない” Z世代女性が職場から消えていく日

2025年11月18日 23:44

「私の周りの女の子、みんな仕事を辞めていく」

「友だちの半分以上が、いま正社員でも学生でもない」。
そんな投稿がX(旧Twitter)で数万いいねを集めた。リプ欄には、

  • 「私も最近会社を辞めて実家に戻った」

  • 「就活で心が折れて、何もする気になれない」

  • 「仕事も学校も無理。とりあえず休みたい」

といった声が並ぶ。

日本で生まれた言葉と思われがちな「NEET(ニート)」だが、もともとは1990年代末のイギリスで生まれた政策用語だ。「教育も就業も職業訓練も受けていない若者」を指すこの指標は、その後各国に広がり、今では国際労働機関(ILO)などが世界規模で統計を取るほど一般的になっている。ウィキペディア


そしていま、イギリスでは「若い女性のNEET」が急増している。



若い女性NEETが過去最高に

英国政府の統計によると、16〜24歳の若者のうち、約100万人が現在NEET状態にある。そのうち45万人が女性で、2016年以来もっとも高い水準だ。The Independent


直近3カ月で見ると、NEET全体は2万4千人増。その内訳は「女性が2万5千人増え、男性は1千人減少」という、かなり偏った動きをしている。The Independent


なぜいま、若い女性だけが職場から押し出されているのか。
イギリスの取材記事や各国の研究を読み込んでいくと、その背景には「メンタルヘルス」「職場文化」「ケア負担」「SNS」という四つのキーワードが浮かび上がってくる。



1. メンタルヘルス:辞めざるを得なかった人たち

イギリスの慈善団体Prince’s Trustの調査では、NEETの若者のうち10人に1人は「メンタルヘルスの悪化が原因で仕事を辞めた」と答え、4人に1人以上が「心の問題のせいで応募すらできない」と語っている。The Independent


また、女性はもともと不安障害やうつ病などの「一般的なメンタルヘルスの問題」を抱えやすく、その傾向はここ10年でさらに強まっていると専門家は指摘する。The Independent


記事の中には、企業で働いていた20代後半の女性「メーガン(仮名)」の声が紹介されていた。彼女は、成果を出しても「もっとできるはず」と要求が積み上がり、上司の機嫌に振り回される毎日に疲弊し、ある日ふと「ログインボタンを押す手が震える」自分に気づく。出社前から動悸が止まらず、仕事のことを考えると吐き気がする——そうなって初めて「もう続けられない」と辞表を出したという。The Independent


SNSを見ても、似たようなエピソードは山ほど出てくる。

  • 「朝になると涙が止まらなくて出勤できない」

  • 「上司のチャット通知を見るだけで心拍数が上がる」

  • 「完璧にこなさないと存在価値がない気がして、ミスが怖すぎる」

ある女性はRedditで「 recovering NEET(ニートからの回復中)」と名乗り、「家賃と物価が上がりすぎて、一度心を壊したら立ち直るためのセーフティネットなんてない」と吐露している。Reddit


こうした声を見ていると、「サボりたいから働かない」のではなく、「働きたいのに、心と体が追いつかない」という切実さが見えてくる。



2. 職場文化のギャップ:仕事が「異世界」になってしまったZ世代

若い女性が仕事から離れていく背景には、「職場そのものが想像以上にハードだった」というギャップもある。

ジェネレーションZ(Z世代)を研究する専門家の分析によると、彼らはコロナ禍で高校・大学生活の多くをオンラインで過ごし、「アルバイト」や「インターン」で職場の空気を体験する機会が激減した。その結果、「出社して人と働く」という行為自体が、想像以上にストレスフルな“未知の環境”になっているという。The Independent


かつては当たり前だった「土曜のバイト」や「高校のインターンシップ」が消え、仕事のリアルを知る前に社会人になったZ世代。彼らは、メールの書き方から上司との距離感まで、すべてを本番環境で学ばなければならない。

ある専門家は、「若い男性の中には、分からなくてもとりあえず強気で押し通すタイプが一定数いるが、若い女性は“ちゃんとできていない自分”を責めがちで、そこで自信を失いやすい」と指摘する。The Independent


SNSでは、

「職場で“分からないことは何でも聞いてね”と言われたのに、質問すると“そんなことも分からないの?”と言われて詰む」

「リモートで入社したら、一度も直接会ったことのない上司に『もっと自信を持って』と言われて余計に萎縮した」

といったポストがバズり、「職場文化ガチャ」「上司ガチャ」という言葉が生まれた。

仕事は「成長の場」であると同時に、「ガチャに外れたらメンタルが壊れる場所」にもなっている。



3. SNSがつくる「理想のキャリア」と「理想の主婦」

もうひとつ見逃せないのが、SNSが生み出す「両極端なロールモデル」だ。

一方には、「20代で年収1000万円」「フリーランスで世界を旅しながら仕事」などのキラキラしたキャリアインフルエンサーがいる。
他方には、いわゆる「トラッド・ワイフ(伝統的な専業主婦)」と呼ばれる、クラシカルなドレスで手作りのパンを焼きながら、夫と子どもに献身する暮らしを発信するインフルエンサーがいる。The Independent


どちらの世界も、日常の地味さや葛藤はほとんど映らない。
その間にいる、ごく普通の「ほどほどに働き、ほどほどに暮らしたい人」の姿は、タイムラインからこぼれ落ちてしまう。

研究によると、若い女性は男性よりもSNS上の「いいね」や他人との比較に敏感で、そのことが自己肯定感の低下やうつ症状と強く結びついている。Centre for Mental Health


イギリスで行われた16〜17歳への大規模調査でも、女子の約3分の1が「強い不安」を抱え、7割近くがメンタルヘルスが原因で学校を休んだ経験があると回答した。進学や就職への不安、将来への展望のなさが、日常的なストレスになっている。The Times


そんな中、

  • 「どうせやるなら、やりがいがあって社会的にも意味のある仕事じゃないとイヤ」

  • 「中途半端な会社に入るぐらいなら、しばらく働かないで自分探ししたい」

と考える若者が増えるのは、ある意味自然な流れかもしれない。

しかし、現実の労働市場はそんな理想とそう簡単にはマッチしない。そこにギャップが生じると、「何も選ばない」という選択=NEET状態に陥りやすくなる。



4. ケアとお金の問題:「働きたくても働けない」母たち

若い女性のNEETには、「まだ子どもを持っていない層」と「すでに子どもがいる層」がいる。後者にとって最大の壁は、言うまでもなく「ケアの負担」だ。

イギリスでは保育料が長年高騰し続け、ようやく最近になって少し下がり始めたものの、依然としてOECD諸国の中でもトップクラスの高さだといわれる。The Independent


若い母親の就労を支援するNPO「Women’s Work Lab」の担当者は、「研修プログラムを受けたいという応募が定員の数倍届くのに、いざ面接してみると半数近くが“子どもを預ける場所がないので参加できない”と辞退せざるを得ない」と語る。The Independent


ある25歳のシングルマザーは、2年半のブランクを経てようやくスーパーの仕事を得たが、長期休暇中の学童保育費が高すぎて、「働けば働くほど赤字になる」状況に陥ったという。The Independent


欧州の調査によれば、若い女性がNEETかつ「経済的に非活動的(仕事探しすらしていない)」な状態にある場合、その多くは育児・家族介護・健康問題が原因とされ、貧困や人生満足度の低下、社会への信頼の喪失など、長期的に重い影響を受けやすい。cjex.org

つまり「働かない」ことは、しばしば「働けない」ことの裏返しなのだ。



5. SNSに現れる“賛否両論”の声

こうした状況に対し、SNSでは大きく三つのタイプの反応が見られる。


① 「自分を守るために辞めた」当事者の声

XやTikTokには、「仕事を辞めたことを後悔していない」と語る動画が数多く投稿されている。

  • 「心療内科に通いながらフルタイムは無理だった。いまはパートと実家暮らしで、やっと呼吸ができる」

  • 「ワークライフバランスより、まずは“ライフ”と“メンタル”を守るのが先」

といった言葉は、多くの共感を集めている。

Redditの「Women NEETs」スレッドでも、「 abusiveな家庭で育った人は、18歳で家を出て何とかする余地が昔よりずっと少ない」「家賃が月1600ドル以上では、一人暮らしは夢物語」といったコメントが並ぶ。Reddit


② 「甘えではなく構造の問題だ」と怒る声

一方で、

  • 「若い女性がNEETになるのは、社会が彼女たちをサポートしていないからだ」

  • 「メンタルヘルスの支援も、保育も、家賃補助も足りない。個人の“自己責任”で片付けるな」

と、構造的な問題を指摘する投稿も多い。欧州の研究やILOの報告書でも、女性NEETの増加は景気悪化や福祉削減の影響を強く受けると繰り返し警告されている。CEDEFOP


③ 「働かない女」を批判する声

もちろん逆の反応もある。

  • 「子どももいないのに仕事を辞めるなんてワガママ」

  • 「税金で支えられていることを自覚していない」

といった厳しいコメントも一定数存在し、コメント欄では激しい議論が交わされている。

イギリスのメディアがNEETの若者をインタビューした番組では、司会者が「夢の仕事にこだわるなんて現実を見ていない」と若者を責め立て、大きな炎上を招いた例もある。LinkedIn



6. 「キャリアを中心にしない」生き方は本当に甘えか?

イギリスの記事の中で、若者のキャリア支援に関わる専門家は、次のような指摘をしている。

若い女性の中には、「仕事を人生の中心にしない」と意識的に決めている人たちもいる。それ自体はポジティブだが、完全に職場から離れてしまうと、戻りたい時に戻れないリスクがある。The Independent


ここで重要なのは、「働き方を見直したい」という願いと、「経済的・社会的に孤立してしまうリスク」を同時に見つめることだろう。

  • フルタイムではなく、週3日のパートやリモートワークを選ぶ

  • 正社員だけでなく、職業訓練や短期講座など「ゆるく社会とつながる」選択肢を作る

  • メンタルが厳しい時期には、休職制度やカウンセリングを使いながら「完全に切らない」工夫をする

など、「0か100か」ではないグラデーションを社会全体で用意できるかどうかが問われている。



7. 日本への示唆:「NEET=自己責任」というラベルを貼らないために

日本でも、NEETや引きこもりの問題は長年語られてきた。ただ、議論の中心はどちらかと言えば「若い男性」に置かれがちで、「若い女性のNEET」は見えにくい存在になっている。


しかし、家族介護や家事労働、非正規雇用の多さ、そしてSNSや容姿プレッシャーがもたらすメンタルヘルスの負担を考えれば、「女性がNEETになりやすい条件」は日本にも多く当てはまる。


ILOの最新データによれば、世界のNEETのうち約3分の2は女性であり、特に中東や南アジアでは若い女性の就業率の低さが顕著だという。ILO Voices


もし私たちが「NEET=怠け者」というステレオタイプだけで語り続けるなら、そこにあるメンタルヘルスやケア負担の問題を見落としてしまうだろう。



8. 「仕事をやめたい」と思ったときにできること

最後に、もしこの記事を読んでいるあなた自身が「もう働けない」「仕事を辞めたい」と感じているとしたら、いきなり“職場からの完全撤退”以外にも選択肢があることを覚えておいてほしい。

  • まずは、信頼できる友人や家族、専門家に「しんどさ」を言語化してみる

  • 会社の産業医やカウンセリング、地域の相談窓口を調べる

  • 転職サイトだけでなく、職業訓練校やボランティアなど「低いハードルの社会参加」も視野に入れる

  • SNSではなく、オフラインのコミュニティで情報を集めてみる

NEETになること自体が「悪」なのではない。
ただ、「戻りたい時に戻れる余地を残しておく」ことが、将来の自分を守ることにつながる。


若い女性が「心と生活を守りながら働く」ことができる社会は、結局のところ、誰にとっても生きやすい社会のはずだ。
イギリスの数字は、遠い国の話ではなく、私たち自身の足元の課題を映す鏡なのかもしれない。



参考記事

若い女性が職場を離れる速度が男性よりも速くなっています。彼女たちはキャリアよりもメンタルヘルスを優先しているのでしょうか?
出典: https://www.independent.co.uk/life-style/young-women-neets-mental-health-workplace-anxiety-b2865239.html

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