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体温の謎に迫る!分子レベルで解明された「暑すぎる」のメカニズム

体温の謎に迫る!分子レベルで解明された「暑すぎる」のメカニズム

2025年10月26日 00:04

はじめに:温度感覚のブラックボックスが開いた

私たちが熱さを感じて手を引っ込めるまでの一瞬の判断は、皮膚や神経の中にある分子機械が担う。その中心選手の一つ「TRPM3(トリップエム3)」が、どうやって“熱”を検出し、痛みという警報に変換しているのか——この基本メカニズムが、クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)での“分子スナップショット”と電気生理学を組み合わせることで、原子レベルに迫って描き出された。研究は2025年10月24日、Nature Structural & Molecular Biologyに掲載。熱の感知は膜の外側ではなく、**タンパク質の細胞内側の領域(ICD)**が主役だという決定的な絵が示された。Nature


何がわかったのか:内側で切り替わる四量体スイッチ

TRPM3は膜に埋まったチャネルだが、今回の解析は、熱や化学アゴニスト(CIM0216)による活性化の「押しどころ」が、チャネルの細胞内ドメイン(ICD)にあることを明快に示した。四つのサブユニットから成るICDが密に組み合うと不活性、そこに熱上昇やアゴニストが入ると結合がほどけて構造がスライドし、チャネルが開口してイオンが流れる。この“同じ内部スイッチを押す”挙動は、温度と化学物質で収束的(convergent)に生じることが、構造と電流記録の両面から確かめられている。Nature


さらに、抗てんかん薬プリミドン(primidone)は、CIM0216と同じ部位(S1–S4領域)に結合しながら、逆にチャネルの活性化を「噛み込んで」阻む拮抗的作用を示す。構造と機能の対応づけにより、阻害の立体的根拠も提示された。Nature


どうやって分かったのか:cryo-EM × 電気生理の“二刀流”

研究チームは、熱を直接「観察」できないという古典的な難題を、二つの戦略で突破した。第一に、超強力アゴニストCIM0216でTRPM3を活性化した構造、逆にプリミドンで不活性化した構造をcryo-EMで撮影し、両者の違いから可動部位を特定。第二に、低温と高温での構造を比較し、熱と化学の両方でICD内部の再配列が共通して起きることを確かめた。補助線として、全細胞パッチクランプで電流の振る舞いも追い、構造の差異が機能差として現れることを裏付けている。Nature


既存像とのちがい:TRPV1だけじゃない、温度受容の多元論

「辛味受容体」として知られるTRPV1が熱痛覚の要と考えられてきた一方で、TRPM3も40–45℃前後で強く活性化し、痛覚回路の重要な分子であることは以前から示唆されてきた。今回の論文は、TRPM3が内側の折りたたみ/連結のダイナミクスを通じて温度変化に応答するという、**“内なる温度センサー”**の像を鮮明にした点で、温度感覚の分子生理に新しい整合モデルを与える。Nature


医学的含意:依存性の少ない鎮痛と神経疾患への応用

TRPM3は痛み、炎症、女性片頭痛、てんかんなどの表現型と関連づけられており、温度と化学が同じ内部スイッチに収束するという今回の知見は、選択的モジュレーターの合理設計に直結する。特に臨床薬として既に使われるプリミドンがTRPM3を強力に抑制し、熱性痛覚や炎症性過敏を軽減しうることは、前臨床研究で繰り返し示されてきた。構造に基づく阻害剤/活性化剤の最適化は、非オピオイド系の新規鎮痛の有望ルートとなるだろう。PMC


研究の限界と次の一手

  • 種差とスプライスバリアント:本研究ではラビットTRPM3を主に用いているが、人の各アイソフォームでICDの動力学がどこまで一致するかは、今後の検証が必要だ。Nature

  • 生体内コンテキスト:膜電位、脂質環境、補助因子などin vivo特有の要素が開口確率に与える影響は、さらなる統合的手法での追試が望まれる。Nature

  • 薬理の精緻化:CIM0216やプリミドンに加えて、選択性・安全性の高い化合物群の探索と、構造に基づくドラッグデザインが加速すると期待される。Nature


SNSの反応:構造“映え”と鎮痛期待に関心集中

論文公開直後のAltmetric指標は35と、分子構造の基礎研究としては上々の初速。cryo-EM図版の完成度や、オピオイドに代わる鎮痛への道筋に注目が集まった。研究室側も同日付で「NSMBに掲載」と発信し、コミュニティ内の拡散を後押ししている。加えて、年初のbioRxiv版の段階から、バイオ物理系コミュニティでの共有・言及が積み上がっていた経緯がある。総じて、「TRPV1一極」観から温度受容の多元的理解へと議論が進む手応えが感じられる。dululabs.com


実務者向けポイント(研究・創薬・メディア)

  • 創薬:ICDの動的ホットスポットを標的に、アゴニスト/アンタゴニスト双方で構造駆動の最適化が可能に。既存薬プリミドンの構造情報は、リポジショニング/新薬設計の良い出発点。Nature

  • 神経科学:温度と化学の入力が同じ内部スイッチに集約されるという統一像は、痛覚回路モデルの単純化と、温度範囲別の寄与(たとえば40–45℃帯)評価の再設計に役立つ。Nature

  • サイエンス広報:「肌の外ではなく内側で温度を感じる」という逆転の視点は一般向けにも伝わりやすい。Phys.orgや大学広報もこのフレーミングで報じている。news.northwestern.edu


参考記事

分子のスナップショットが体が「暑すぎる」と認識する仕組みを明らかにする
出典: https://phys.org/news/2025-10-molecular-snapshots-reveal-body-hot.html

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