ドライヤーは「毛先から」が正解?髪の絡まりを防ぐ新提案、その意外な注意点

ドライヤーは「毛先から」が正解?髪の絡まりを防ぐ新提案、その意外な注意点

洗い上がりは滑らかだったのに、ドライヤーを使い終わると毛先が絡み、表面には細かい浮き毛が出ている。整えようとブラシを何度も通し、最後は温度を上げて押さえ込む。そんな繰り返しに心当たりはないだろうか。

見直す余地があるのは、ヘアケア用品だけではない。毎晩、無意識に選んでいる「乾かす順番」も、その一つかもしれない。

英Daily Mailが2026年9月27日に掲載した記事で、ヘアケアブランドPhilip Kingsleyのブランド代表で毛髪専門家のアナベル・キングズリー氏は、髪の中間から毛先を先に乾かし、その後で根元を整える方法を提案した。

ただし、これを「これまでの乾かし方は全員間違いだった」と受け取るのは早い。提案の狙いと、その根拠の範囲を分けて読む必要がある。


根元を乾かす間、毛先はどうなっている?

キングズリー氏が注目するのは、根元を乾かしている間に起きる毛先の動きだ。

同氏の説明では、頭頂部や前側からブローを始めると、下にある髪が風でさまざまな方向に動き、湿った毛先同士が絡まりやすくなる。毛先は根元に近い部分より長い期間、日々の摩擦やスタイリングにさらされているため、傷みが蓄積していることもある。

そこで、まだ扱いやすい湿り気が残るうちに、中間から毛先の形を整える。根元は後から仕上げるという考え方だ。

狙いは、毛先を先に「熱で徹底的に乾かす」ことではない。絡んだり広がったりした状態で乾いてしまい、その修正にさらに熱やブラシの力を使う流れを減らすことにある。


「毛先から」と「風を下から」は別の話

この提案で、最も誤解しやすいのが「下から乾かす」という表現だ。

元記事が説明しているのは、先に扱う部位を中間・毛先にするという順番である。ドライヤーの風を毛先から根元へ向けて吹き上げる、という指示ではない。

英国のヘアサロンブランドHershesonsは、別の解説で、風をあちこちから当てたり、毛流れに逆らって吹き上げたりすることに注意を促している。滑らかな仕上がりを目指す際は、ノズルを毛先方向へ向け、毛流れに沿って乾かすという説明だ。

「どの部分から始めるか」と「その部分へどちら向きに風を送るか」は、別々に考えられる。毛先付近を先に整える場合でも、風まで逆向きにする必要はない。

短い見出しだけを頼りに試すと、この区別が抜け落ちる。今回の話は、まさに手順の中身まで確認したい美容情報といえる。


湿り気が残るうちに整える理由

元記事では、髪の内部にある水素結合も説明されている。キングズリー氏によると、この結合は髪がぬれると変化し、乾く過程で再び形成され、形づくりに関わるという。

同氏は、毛先が乱れた状態のまま乾くと、後から整えるために高温や強いブラッシングに頼りやすくなると指摘する。そのため、水が滴るほどぬれた状態ではなく、適度な湿り気のある毛先を低〜中温で整えるよう勧めている。

毛先を仕上げた後、根元がスタイリングしにくいほど乾いていたら、温度を上げるより軽く水を吹きかける、という提案もある。

ここで押さえたいのは、これは専門家が自身の経験をもとに示した方法だという点だ。元記事には、根元から乾かす群と毛先から乾かす群を比較し、切れ毛の減少率などを測定した試験は紹介されていない。

同氏自身も、髪は人それぞれ異なり、上から乾かしたほうが好みの結果になる人もいると認めている。新刊『Haircare: The Ultimate Guide』の紹介を伴う記事でもあり、独立した研究の発表とは区別したい。


研究が教えるのは、順番以外の大切さ

ドライヤーと髪のダメージについては、実験研究もある。

2011年に学術誌「Annals of Dermatology」に掲載された研究では、毛束に洗浄と乾燥を30回繰り返し、温度や距離の異なる条件で変化を調べた。髪の表面は高温条件ほど傷みが大きくなる傾向があった。

一方、自然乾燥の群だけで毛髪の細胞膜複合体に変化が観察されるなど、結果は単純な「自然乾燥なら安全、ドライヤーなら危険」ではなかった。

ただし、この研究は毛束を使った実験であり、今回の「毛先を先に乾かす方法」を検証したものでもない。ここから順番の優劣まで結論づけることはできない。

順番を変えさえすれば、高温を近距離から当て続けてもよいわけではない。乾燥方法を考えるときは、温度、距離、当て続ける時間も一緒に見る必要がある。


SNSと読者コメントでは、何が語られている?

今回の記事に対する反応として直接確認できたのは、提供されたDaily Mail本文に含まれるコメント欄の一部だ。そこには、むしろ髪が広がるのではないかと反発する投稿や、短く否定する投稿、「bottom up」という表現を茶化すコメントがあった。

もっとも、表示されている少数のコメントだけで読者全体の評価は分からない。また、否定した人が実際に方法を試したのか、風向きと順番を区別して読んだのかも確認できない。

 

SNSでは、今回の記事への直接の反応とは別に、髪の乾かし方そのものを巡る議論が以前から続いている。

Redditの「r/HaircareScience」には、前述の2011年の研究を取り上げた過去のスレッドがある。そこでは、湿度の高い環境では自然乾燥に時間がかかるため低温のドライヤーが合うという体験談や、髪質によって結果が変わるのではないかという意見が見られた。

一方で、個人の体験談と科学的な証拠は区別すべきだとして、追加研究や実験条件の検討を求める声もあった。

これらは「毛先から乾かす方法がSNSで支持された」ことを示すものではない。確認できるのは、乾燥方法への関心が高くても、個々の成功体験を誰にでも当てはめることには慎重な意見がある、という点だ。


試すなら、毛先を熱しすぎないことから

この提案を試す場合、まず見たいのは「普段、どの段階で毛先が絡むか」だ。根元を乾かしている間に毛先が乱れる人なら、先に中間から毛先を整える方法を比較してみる余地がある。

Philip Kingsleyの公式ガイドも、タオルで強くこすらず余分な水分を取り、低〜中温を使い、ドライヤーを髪から約15センチ離すことを勧めている。ブラシで強く引っ張らず、髪を分けて扱い、乾いた部分を加熱し続けないという注意もある。

試す際は、毛先が先に乾いたからといって、その後の根元のブロー中にも同じ場所へ熱を当て続けないようにしたい。見るべき変化は、ツヤだけではなく、指通り、絡まり、仕上げ直しの回数だ。

また、カールを生かしたい場合は、滑らかなストレートを目指す場合と手順が異なる。公式ガイドでも、カールにはディフューザーを使い、風量と温度を抑える方法が別に紹介されている。


「正しい順番」探しより、自分の髪の観察を

今回の提案が投げかけるのは、毎日のブローを惰性で続けていないか、という問いだ。

毛先が絡まるたびに温度を上げる。まとまらないから強く引っ張る。そうした仕上げ直しが増えているなら、乾かし始めから見直す意味はある。

一方、現在の方法で無理なく仕上がる人まで、話題の手順に合わせる必要はない。「毛先から」という言葉を唯一の正解にするより、乾く途中で髪がどう動き、どこに負担がかかっているかを見る。その観察こそ、毎日のヘアケアを変える出発点になりそうだ。


出典

  1. Daily Mail(2026年9月27日)。キングズリー氏による毛先優先のブロー提案、水素結合に関する説明、本人が認める個人差、読者コメント。
    https://www.dailymail.com/sciencetech/article-16156965/knots-blow-drying-hair-bottom-up.html

  2. Philip Kingsley公式「An Expert Guide To Properly Drying Your Hair」。温度、距離、タオルやブラシの扱い、カール向けの乾燥方法を確認。
    https://www.philipkingsley.co.uk/hair-guide/hair-care-styling/blow-drying-your-hair.html

  3. Hershesons(2026年9月25日)「The Hair-Drying Mistake That’s Stealing Your Shine」。毛流れに沿わせる風向きの説明を参照。
    https://www.hershesons.com/blogs/hair-stories/the-hair-drying-mistake-that-s-stealing-your-shine

  4. Leeら(2011年)「Hair shaft damage from heat and drying time of hair dryer」。毛束の乾燥条件と損傷を比較した実験研究。毛先優先と根元優先の比較試験ではない。
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22148012/

  5. Reddit「r/HaircareScience」の過去の議論。上記研究に対する体験談、髪質差への疑問、科学的根拠を求める意見を参照。今回のDaily Mail記事への反応ではない。
    https://www.reddit.com/r/HaircareScience/comments/g02763/using_a_hair_dryer_at_a_distance_of_15_cm_with/