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人間が消えた山で、ワシのベビーブームが起きていた ─ コロナ禍が暴いた“静けさ”の力

人間が消えた山で、ワシのベビーブームが起きていた ─ コロナ禍が暴いた“静けさ”の力

2025年12月03日 12:11

コロナ禍のロックダウンで、人の姿が消えた山々の上空を、静かに大きな翼が舞っていました。


スペイン南部アンダルシアの崖や渓谷を縄張りにするボネリークマタカ(Bonelli's eagle)は、2020年、新型コロナウイルスによるロックダウンのさなかに「ベビーブーム」を迎えていたことが、スペイン・グラナダ大学(UGR)の長期研究から明らかになりました。Phys.org


31年分のデータが示した「静けさの効き目」

研究チームは、スペイン南部グラナダ県に生息するボネリークマタカの繁殖を30年以上にわたって追跡してきました。調査対象となった繁殖試行は1,200件以上。期間はプレ・コロナ(1994〜2019年)、ロックダウン期(2020年)、ポスト・コロナ(2021〜2024年)の3つに区切られています。Phys.org


その膨大な記録を分析したところ、2020年に1つのペアから巣立ったヒナの平均数が、この31年間で最高値を記録していたことが分かりました。研究者たちは、ロックダウンにより人間の活動が急減し、ちょうど

  • 抱卵の終盤

  • ヒナの子育て期

という、繁殖にとって最もデリケートな時期と重なったことで、巣の周辺が異例の静けさに包まれたと指摘しています。Phys.org


彼らはこの状況を「自然が用意した実験(ナチュラル・エクスペリメント)」と表現し、人間活動の影響を“人がいない状態”と比較できた、非常にまれなチャンスだったと説明します。Phys.org


天敵より怖いのは「人間」という事実

興味深いのは、ロックダウンで好転した要因が気候条件や餌の量ではなく、「人間の存在だった」と結論づけられた点です。


研究によれば、ボネリークマタカの繁殖を最も妨げているのは、自然要因ではなく、次のような人間活動でした。Phys.org

  • おとりを使ったパトリッジ(ヤマウズラ)猟

    • 巣の近くでの発砲による成鳥・ヒナの誤射

    • 鉛弾による鉛中毒のリスク

  • 車両・レクリエーション活動による交通

    • ハイキング、マウンテンバイク、クライミングなどで、巣の近くを人が頻繁に通過

    • 騒音や人影が続くことで親鳥が巣を離れる時間が増え、ヒナの死亡リスクが上昇


特におとりを使ったパトリッジ猟は、南スペインで古くから続く文化的慣習でありながら、欧州法では本来禁止されている行為だと研究チームは指摘しています。Phys.org


つまり、ボネリークマタカにとって“最大の捕食者”は、他の猛禽類や自然災害ではなく、人間そのものだった――というかなりショッキングなメッセージが浮かび上がります。


ロックダウンは「理想の実験条件」だった

絶滅が心配されるような希少種を対象に、意図的に「人がいる/いない」状況を実験的に作ることは、倫理的にも現実的にもほぼ不可能です。だからこそ、今回のようなロックダウンは、科学的には非常に貴重な比較材料になりました。Phys.org


研究チームは、1990年代初頭から毎年、ボネリークマタカのなわばりをくまなく巡回し、

  • どれくらいのペアが巣立ちに成功したか

  • 1巣あたり何羽のヒナが巣立ったか

といった「繁殖成功度」の基本的な指標を地道に記録してきました。Phys.org


2020年のロックダウンでも、大学からの特別な許可を得たことで、研究者はフィールド調査を継続することができました。もしこの許可がなければ、「人が消えた風景で鳥たちがどう変わったか」を科学的に記録するチャンスは失われていたかもしれません。Phys.org


このように、長年の地道なモニタリングと、偶然もたらされたロックダウンが重なったことで、

「人がいなければ、ボネリークマタカはどれくらい繁殖できるのか」
という問いに、初めて具体的な答えが与えられたのです。


研究者たちが求める“静かな季節”

論文では、今後ボネリークマタカを守るために優先すべき対策として、次の2つが提案されています。Phys.org

  1. おとりを使ったパトリッジ猟の禁止

    • 欧州法ですでに違法であることを明確にし、実効性のある取り締まりを行うこと。

  2. 繁殖期の巣の近くへの立ち入り制限

    • おおよそ12月〜5月にあたる繁殖シーズンには、ハイカー、サイクリスト、クライマーなどの立ち入りを規制・誘導すること。


研究チームは、「どんな対策が一番効率的かは、これまでは推測でしか語れなかった。だが今回の研究で、優先順位を科学的に示せた」と述べています。Phys.org


そして最後に、

これを実行する責任は環境行政だけではなく、社会全体にある
と強調し、自然を“使う”だけではなく“共存する”ためのルールづくりを呼びかけています。Phys.org


SNSで広がった「静けさの記憶」と「人間へのブーメラン」

このニュースが報じられると、SNS上でもさまざまな反応が広がりました。ここでは、実際に見られたタイプの声を要約して紹介します(具体的なアカウント名は伏せ、内容をリライトしています)。


  1. 「やっぱり人間が一番のストレス源だったんだ…」という自省系ポスト

    ロックダウン中、街中でも鳥の声がよく聞こえたのを思い出した。あれは気のせいじゃなかったんだな。
    自分たちが自然に与えているストレスを、改めて突きつけられたと感じる人が多く、「次の休みに山へ行くときは、もっと静かに歩こう」といったコメントも目立ちました。

  2. 「ロックダウンを再現するわけにはいかないけど…」という現実派コメント

    もう一度ロックダウンするわけにはいかない。でも、テレワークの推進とか、繁殖期だけトレイルを迂回させるとか、部分的に“静かな時間”を作ることはできるはず。
    社会・経済を止めずに、どうやって“ほどよい静けさ”を自然に返せるか、現実的なアイデアを考える投稿も多く見られました。

  3. 猟文化をめぐる賛否両論のスレッド
    おとりを使ったパトリッジ猟の禁止案については、議論が白熱しました。

    • 「違法なら即刻やめるべき」という声

    • 「伝統文化を一方的に悪者にするな」という反論

    • 「文化として残すなら、鉛弾の廃止や場所の制限などルールのアップデートが必要」という折衷案
      といった立場が入り混じり、スレッドが長く伸びているケースも。

  4. 都市の野鳥との“リンク”を語る声
    一部のユーザーは、北米やヨーロッパの都市部でも、ロックダウン中に鳥の出現頻度が増えたという先行研究を引用し、「ボネリークマタカだけの話じゃない」と指摘していました。Popular Science
    ロックダウン中に世界各地で報告された「自然のカムバック」と、このベビーブームを重ね合わせる議論です。

  5. 「次のパンデミックはいらないけど、この教訓は残したい」というまとめ
    最後に目立ったのは、

    もう二度とあんなロックダウンは嫌だけど、あのとき自然が嬉しそうだったのも確か。
    今度は、意図的に“ちょっとだけ静かな世界”を作れないかな。
    といった投稿でした。
    病気と引き換えではなく、政策やライフスタイルの変化によって、野生動物にとって優しい環境を作っていくべきだ、という前向きなまとめです。


ロックダウンの「副作用」から、これからのルールを考える

もちろん、パンデミックそのものに戻りたい人はいません。
しかし、この研究は、社会がほぼ強制的にブレーキを踏んだあの数カ月間が、「自然にとってどれほどのインパクトを持っていたか」を具体的な数字で示してくれました。Phys.org


ここから私たちが学べることは、例えばこんなポイントです。

  • テレワークやオンライン化は、自然保護にもつながりうる

    • 通勤や移動が減れば、山や海への“ついでのレジャー”も減り、野生動物が休める時間帯が生まれる。

  • レジャーの「時間帯・季節・ルート」を少し工夫するだけで、絶滅危惧種を助けられる

    • 繁殖期だけ特定のトレイルを閉鎖したり、巣から一定距離を空けたルートに誘導したりすることで、鳥たちには“静かなコアエリア”を確保できる。

  • 伝統的な猟やアウトドア文化も、科学的知見に基づいてアップデートできる

    • 完全な禁止か存続かという二択ではなく、鉛弾をやめる、繁殖期は自粛する、など「共存のためのルール」を一緒に作るという選択肢もある。


ロックダウンは、私たちに多くの痛みと損失をもたらしましたが、一方で、

「人間が少し引くだけで、野生はここまで息を吹き返す」
ということを見せてくれました。


ボネリークマタカのベビーブームは、その象徴的な一例です。


次のパンデミックを待つのではなく、あの“静かな空”を思い出しながら、日常の中で少しずつ自然にスペースを返していくこと――それが、この研究が私たちに突きつける、静かだけれど強いメッセージなのかもしれません。Phys.org


参考記事

COVIDロックダウン中にボネリーノスリの「ベビーブーム」が発生、人間活動の影響が明らかに
出典: https://phys.org/news/2025-12-baby-boom-bonelli-eagles-covid.html

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