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“食欲が消える薬”が、夫婦の夜を変えた — GLP-1が揺らす親密さ

“食欲が消える薬”が、夫婦の夜を変えた — GLP-1が揺らす親密さ

2025年12月28日 00:04

「痩せたら人生が変わった」――GLP-1系の減量薬(オゼンピック、ウゴービ、マンジャロ/ゼップバウンドなど)をめぐる語りは、ここ数年で一気に日常のものになった。米国では「8人に1人がこれらの薬を試した」というデータまで語られ、“減量革命”はもはや一部の人の話ではない。PodScripts


けれど革命が変えるのは体重だけではない。自分の見え方、他人の接し方、休日の過ごし方、そして最も近い他者――パートナーとの距離感までも、静かに塗り替えていく。


今回取り上げるのは、NYTのポッドキャスト番組で語られた、ある夫婦の“その後”だ。きっかけは、番組側が一般から体験談を募る「コールアウト」。そこに届いた短い文章が、夫婦の関係の核心を突いていた。「酒量が減り、食事量が減り、健康は改善。でも妻のリビドー(性欲)に影響が出た。セックスに興味がない」。PodScripts


「60ポンド減った私」は、同じ私なのに“違う人”として扱われる

妻(番組内では仮名で紹介)は、産後うつや体重増加に長年苦しみ、「食べ物のことが頭から離れない“フードノイズ”」を抱えていた。PodScripts


健康面でも脂肪肝などが表面化し、医師にGLP-1を相談。服用後、減量は驚くほど速かった。8か月で60ポンド(約27kg)減。PodScripts


すると体は軽くなったが、社会の視線はもっと“重く”なった。職場で表に出る仕事が増え、「私は同じ人間なのに、60ポンド軽いだけで、周囲の認識が変わる」と感じるようになる。PodScripts


これ、SNSでもよく見かける感覚だ。ダイエット成功談の投稿の裏には、「急に丁寧に扱われる」「選ばれる側に回った気がする」という戸惑いが、必ずと言っていいほど混じる。身体変化は“自分の内側”だけでなく、“他人の振る舞い”を介して跳ね返ってくるからだ。


ワインが消え、夜更かしが消え、夫婦の“共通言語”が消えた

夫婦の趣味は食と酒。大きなワインセラーのある暮らしは、2人の「夢」だった。ところが妻は、薬の影響でアルコール欲求がほぼ消えた。ソファでボトルを開ける夜も、地元のブリューパブ巡りも、「もう気持ちよくない」。PodScripts


さらに、これまで“陽気で盛り上げ役”を演じてきた自分から降り、家で読書して早く寝たい、と境界線を引き始める。PodScripts

夫は「飲み仲間」を失った感覚に襲われ、会話は衝突へと変質していく。PodScripts


ここが重要だ。問題は「酒を飲まなくなった」そのものではなく、夫婦が“同じものを楽しむ”ことで保っていたリズムが、同時に崩れたこと。GLP-1はしばしば「欲求のボリューム」を下げると言われるが、欲求が下がった側と下がっていない側の間に、日常の翻訳不能なズレが生まれる。


この“欲求の変化”を裏付けるように、社会投稿を分析した研究では、GLP-1使用後にアルコール・カフェイン・ニコチン摂取をやめた/減らしたという言及が一定割合見られた。PMC
また脳の報酬系(ドーパミン)に作用し、食欲以外の衝動(飲酒やギャンブル等)も弱め得る、という仮説も語られている。Boston University


つまり「ワインが消えた」のは、性格が変わったというより、“報酬”の感じ方が変わった可能性がある。


セックスが止まったのは「薬の副作用」だけなのか

夫婦により深刻だったのは、セックスが完全に止まったことだった。夫は、柔らかな“以前の体”を恋しがり、「新しい体に触れられない」と戸惑う。PodScripts
一方、妻は「更年期」や「抗うつ薬」など、性欲に影響し得る要因も挙げつつ、核心は別にあると示唆する。PodScripts


彼女が口にしたのは、あまりに静かな言葉だった――「前は“ノー”と言わなかった」。今は境界線を引ける。「私はセックスしたくない」。PodScripts

これは“薬で性欲が落ちた”という単純な話を越えている。体が変わったことで、自己像が変わり、対人関係の力学が変わり、「相手に合わせてきた自分」を続けられなくなった。言い換えれば、GLP-1が“欲望”を奪ったのではなく、“本音にアクセスする権利”を与えてしまったのかもしれない。


この点は、ネット上の受け止めが真っ二つに割れる。

  • 「痩せて自信がつき、むしろ性の満足度が上がった」派

  • 「食欲と一緒に“何もしたくない”が来る」派

実際、Wiredの取材でも、リビドーが上がった人がいる一方、低下を訴える人も紹介され、研究自体はまだ十分ではないとされる。WIRED
さらにThe Cutでは、欲望全般が平板になる感覚(“meh, bleh, numb, flat”のような表現)が語られ、ドーパミン系への影響が示唆されている。The Cut


“SNSの反応”はどう広がっているか:体験談は「恋愛・身体・自己像」に集中

ここで、SNSやコミュニティ上の「典型的な反応」を、実際の調査・分析結果に沿って整理してみる。


1)「デートが“ご飯とお酒”前提じゃなくなる」
キンゼイ研究所の調査紹介では、GLP-1使用者が「食欲の低下」「アルコールへの関心低下」を報告し、従来の“ディナー&ドリンク”型デートが変わり得ると指摘されている。Indiana University News


2)「性生活はプラスもマイナスも、同じくらい起こる」
同調査では、GLP-1使用者の約52%が性生活への影響を報告。性欲は「増えた18%/減った16%」、性的機能は「改善16%/悪化12%」と、きれいに両極が並ぶ。Indiana University News
SNSが“成功談”に寄りがちなぶん、現実はもっとグラデーションがある。


3)「痩せた後の“体”が、新しい悩みを連れてくる」
急激な減量で余剰皮膚が残り、ボディコンツアリング(腹部・胸・腕などの手術)に流れる人が増える、という形成外科側の指摘もある。American Society of Plastic Surgeons


番組の妻も、いわゆる“マミーメイクオーバー”(腹部・胸・腕の手術)を経て、自分の体に対する感情が変わったと語る。PodScripts


4)「コミュニティの関心は“使い方と副作用対策”に偏り、リスク意識は薄くなりがち」
Reddit投稿を大規模にトピック分析した研究では、話題の中心が「減量」「用量」「保険」「副作用管理」で、健康上のリスク(無監督使用など)の話が多くは出てこない傾向が示された。サイエンスダイレクト


つまり、SNSは“実用情報”を増幅する一方で、“長期的な不確実性”を相対的に小さく見せてしまう。


5)「性欲については“増えた”という声も確かにある」
SNS投稿を材料にした混合研究では、アルコール等の摂取低下に加え、性欲/リビドーが増えたという言及も一定見られた。PMC


GoodRxも「SNSコンテンツのレビューで、性欲増加の報告があった」点を紹介している。GoodRx


そして“更新”――夫婦はどうなったのか

番組の「アップデート」で記者が1年後に再連絡すると、2人は「完全な乾き」からは脱していた。「頻繁ではないけど、している」。PodScripts


転機の一つとして妻が挙げたのが、前述のボディ手術だった。余剰皮膚を取り除き、体への恐怖や嫌悪が薄れ、「愛情深く、感謝の気持ちが湧いた」。PodScripts


その朝、彼女は「時間があるし、いま私は“その気”」と言い、夫は戸惑いながらも応じた。結果は「素晴らしかった」と2人は語る。PodScripts


ここで誤解してはいけないのは、これは“薬で夫婦関係が壊れた/治った”という教訓話ではないことだ。むしろ示しているのは、体が変わると、自己像が変わり、自己像が変わると、親密さの設計図が書き換わるという現実だ。
そしてその書き換えは、体重の増減よりずっと複雑で、時に痛みを伴う。


もしあなた(やパートナー)がGLP-1を使うなら:ポイントは「症状」より「会話の設計」

医療上の判断は必ず専門家と行うべきだが、関係性の観点ではヒントがある。

  • “食”と“酒”を共有していたカップルほど、代替の親密さが必要になる(散歩、映画、朝のコーヒー、スキンシップの再定義など)PodScripts

  • 性欲の増減を“副作用”で片付けず、睡眠・更年期・服薬・ストレス・関係性の変化も並列で見るPodScripts

  • 「同意」と「境界線」を更新する:痩せる前の“当たり前”が、今も当たり前とは限らないPodScripts


GLP-1が広がるほど、「体が変わった人」と「変わっていない人」の間の距離は、恋愛でも結婚でも、これまで以上に“ありふれた課題”になる。キンゼイ研究所の調査が示すように、GLP-1使用を理由に「デートしたくない」と感じる層も一定数いる。Indiana University News


だからこそ大事なのは、薬をめぐる賛否ではなく、変化が起きたときに2人で扱える言葉を持つことだ。体重計が示す数字より、会話が示す温度のほうが、関係の行方を決める。



参考記事

オゼンピック時代における結婚とセックス:最新情報 - ニューヨーク・タイムズ
出典: https://www.nytimes.com/2025/12/26/podcasts/the-daily/sex-ozempic-update.html

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