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移植は心だけでなく“私”も変えるのか ─ 科学が迫る「人格変化」の正体

移植は心だけでなく“私”も変えるのか ─ 科学が迫る「人格変化」の正体

2025年08月19日 00:18

問いは古く、新しい──「移植は“私”を変えるのか」

8月17日、UOLの健康メディアVivaBemが公開した記事は、心臓移植を中心に語られてきた“人格変化”の話題を、最新の科学と生理学に結びつけて紹介した論考の邦訳だ。寄稿元は英メディアThe Conversationで、執筆者は解剖学者のアダム・テイラー。ポイントは二つ。第一に、変化は心臓に限られない可能性。第二に、その背景は心理だけではなく、生物学的な機序でも説明しうるという視座だ。UOLtheconversation.com


89%という数字の“読み方”

2024年にMDPIの専門誌で公表された小規模調査(n=47)は、心臓を含む様々な臓器の移植受者の89.3%が「何らかの人格変化」を自己申告したと報告した。心臓と他臓器で大まかな傾向は類似し、統計的に明確な差は「身体的属性の変化」程度にとどまる。ただし、募集方法がFacebookやサポートグループ中心で、変化を感じた人が参加しやすい“選択バイアス”を筆者ら自身が強調している。したがって「移植で人格が必ず変わる」と断じる根拠にはならず、「変化を感じる人が少なくない」ことを示す手がかり、と捉えるのが妥当だ。MDPI


心から脳へ──ホルモンと神経の回路図

生理学の観点では、心臓は循環ポンプ以上の存在だ。心房・心室はANP/BNPなどのペプチドホルモンを分泌し、体液バランスや電解質、交感神経活動(いわゆる“闘争・逃走反応”)に影響する。心移植後はこれらのペプチドが高値で推移しやすいことが報告され、完全な正常化はしないとのデータもある。神経支配は手術でいったん断たれるが、時間とともに部分的に再連結する可能性も示されている。こうした“心—脳—内分泌”のループが、気分や行動傾向の変化に波及しうるという仮説だ。UOLPubMedajconline.org


体の中の“他者性”──微少キメリズムという事実

移植後の体内には、ドナー由来の細胞やDNAが少量ながら長期にわたり存在しうる。これは微少キメリズムと呼ばれ、古くはNEJMなどで報告がある。免疫学的意義(寛容や拒絶との関連)はいまも研究途上だが、「他者の生体情報が循環する」状態が持続しうるのは事実だ。だからといって“記憶”が転送されると断言できるわけではないが、免疫活性や慢性炎症が気分・性格特性に影響しうるという心理神経免疫学の文脈では、無視できない要素になる。ニューイングランドジャーナルオブメディスンPubMed


心理と薬理──“体験”と“治療”がもたらす影響

人格や気分の変化を語るうえで、心理社会的要因と薬剤効果は外せない。移植という極限状況をくぐる過程で、抑うつ・不安・PTSD様症状のリスクは上がる。加えて、ステロイドやカルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)などの免疫抑制薬は、量や個人差により気分・思考に影響を及ぼすことがある。従って“なぜ変わるのか”の答えは単一路線ではなく、生理学・免疫学・薬理学・心理学の重ね合わせとして理解するのが現実的だ。PMCFrontierspsychiatry-psychopharmacology.com


SNSの反応マップ──驚きと懐疑、そして当事者の声

  • 驚き派(ロマン):「89%が性格変化」の数字はSNSで強く拡散し、海外掲示板でも話題に。直観的な“セルラー・メモリー(細胞記憶)”に惹かれる声が目立つ。Reddit

  • 懐疑派(ファクトチェック):同じスレッドで、サンプル規模や選択バイアスへの指摘が相次ぐ。論文本文でも著者がバイアスを認め、前向き研究の必要を強調している。MDPI

  • “怪談化”の周辺:一部のタブロイドは「ドナーの記憶を受け継いだ」といった見出しで煽り、クリックは稼げても科学的な含意を過剰化する。The Sunニューヨーク・ポスト

  • 当事者コミュニティ:移植者や家族の掲示板では、「性格が変わった」よりも、薬の副作用や親密性の変化、不安感への対処がリアルな話題になりやすい。Reddit

  • 拡散の観察:Instagram等でも“89%”の数字だけが切り出されて再生産されがちで、文脈(調査方法や限界)が脱落することが多い。インスタグラム


メディア・リテラシーの三つの鍵

  1. 数字は“設計”とセットで読む:n=47、自己申告、募集経路──この3点は、解釈にブレーキをかける。MDPI

  2. 機序は“候補の束”として眺める:ホルモン、神経再支配、免疫・炎症、薬理、心理的外傷は互いに影響しあう。単一原因に還元しない。UOLPubMed

  3. “記憶の継承”は未証明:微少キメリズムは事実だが、人の自伝的記憶が臓器から移るという主張は、いまだ推測の域を出ない。ニューイングランドジャーナルオブメディスン


実務への含意──説明と伴走のアップデート

MDPI論文の著者らは、移植候補者が「人格が変わるのでは」という不安を抱く現実に触れ、事前説明でこのテーマを適切に扱うことが拒絶や服薬アドヒアランスにも良い可能性があると述べる。心理支援、服薬調整、家族教育をチームで回す――これが現場のベストプラクティスに近い。MDPI


それでもこの話が人を惹きつける理由

臓器移植は、医療と人間観が交差する。私たちの“私らしさ”が、どこまで身体に支えられているのか。科学は少しずつ輪郭を描きつつあるが、センセーショナルな物語の誘惑も強い。必要なのは、驚きを手放さずに慎重さを学ぶ態度だ。結論は未決。しかし、不安への丁寧な説明と心理的な伴走は、今この瞬間にも出来る。



参考記事

臓器移植は本当に誰かの性格を変えることがあるのか? - UOL
出典: https://www.uol.com.br/vivabem/noticias/redacao/2025/08/17/um-transplante-de-orgao-pode-realmente-mudar-a-personalidade-de-alguem.htm

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