たった3語で、子どもの心がほどける。「信じてるよ」が効く理由

たった3語で、子どもの心がほどける。「信じてるよ」が効く理由

子どもが泣きながら「学校に行きたくない」と言ったとき。兄弟げんかのあとに「ぼくはやってない!」と叫ぶとき。あるいは、夜になって急に「怖い夢を見る」と打ち明けてくるとき。


親はつい、状況を整理しようとして質問を重ねがちだ。「何があったの?」「本当?」「あなたはどうしたの?」——もちろん必要な問いかけだ。でも、子どもの心が揺れている瞬間にまず欲しいのは、取り調べではなく“安全”かもしれない。


そこで注目されているのが、たった3語の短いフレーズだ。ドイツの複数メディアで紹介された心理専門家の提案はこう言う。
「Ich glaube dir.(直訳:私はあなたを信じる)」
日本語なら「信じてるよ」「あなたの言うことを信じるよ」に近い。


なぜ「信じてるよ」が子どもを強くするのか

このひと言が効く理由は、子どもに“自分の感覚は尊重される”という経験を積ませるからだ。子どもは大人ほど言語化が上手ではない。出来事の説明が飛び飛びになったり、順序が前後したり、言い間違えたりもする。そこを即座に疑われると、子どもは「話すと損をする」「どうせ分かってもらえない」と学習してしまう。


一方で、親が「信じてるよ」と最初に土台を置くと、子どもは“話していい空気”を受け取る。
・自分の体験が軽んじられていない
・感情を出しても拒絶されない
・困ったら相談してよい

こうした感覚は、自己肯定感だけでなく、将来の対人関係にも影響しうると言われる。大げさに聞こえるかもしれないが、子どもにとって「信じてもらえる」は“世界は安全だ”というメッセージでもある。


「信じてるよ」=何でも鵜呑み、ではない

ただし誤解してはいけない。これは“事実を全肯定する呪文”ではない。子ども同士のトラブルや兄弟げんかでは、話が食い違うのが普通だ。親が片方の言い分をそのまま採用してしまうと、もう片方は「自分は信じてもらえない」と傷つく。


ここで使えるのが、同じ発想を“段階化”する方法だ。ポイントは、**事実(ファクト)感情(フィーリング)**を分けること。

たとえば、こう言い換える。

  • 「何かが起きたのは信じるよ。今、すごく嫌だったんだね。」

  • 「怒ってる気持ちは分かった。いったん落ち着いて、どうしたらいいか一緒に考えよう。」

  • 「あなたの見え方を大事にしたい。だから順番に聞かせて。」

これなら、真偽が未確定でも“体験の重み”を尊重できる。


使いどころは「弱さを見せた瞬間」

特に効果が出やすいのは、子どもが不安・恥ずかしさ・怖さなど、弱い部分を見せたときだ。大人でも、心細いときに「それ本当?」と言われると、心の扉が閉じる。子どもならなおさらだ。

  • 「怖い」と言えた

  • 「嫌だった」と言えた

  • 「助けて」と言えた
    この“言えた”瞬間に、「信じてるよ」を置く。すると次の一歩——具体的な状況説明、解決策の相談、助けを求める行動——につながりやすい。


家庭での実践イメージ(典型例の再構成)

ここからは、使い方を具体化するための“よくある場面”を再構成してみる。

ケース1:学校の出来事を打ち明けた

子:「今日ね、○○くんに変なこと言われた」
親(反射で):「え、本当? 何て言われたの?」
——この返しでも会話は進むけれど、子どもが敏感なタイプだと「疑われた」と感じることもある。


親(提案形):「そうだったんだ。信じてるよ。言いにくかったよね」
そのあとで:「どこで?」「先生は近くにいた?」と事実を聞く。
順番が逆になるだけで、子どもの話し方が落ち着き、情報も増えることがある。

ケース2:兄弟げんかで真偽が分からない

子A:「Bが先に叩いた!」
子B:「ちがう!Aが押した!」
親がどちらかに「信じてるよ」とだけ言うと火に油だ。

親(段階化):「2人とも、何かが起きたのは分かった。嫌だった気持ちは信じる。今は責めるより、ケガがないか確認して、どうやったら次は止められるか考えよう」
“感情の承認”は両方に配り、“事実の確定”は後回しにする。


ケース3:子どもが自分を責めている

子:「どうせ私なんか、できない」
親:「そんなことないでしょ!」(励ますつもりでも、子には否定に聞こえることがある)
親(提案形):「そう感じるんだね。信じてるよ。できないって思うくらい、難しかったんだ」
そのあとで、「どこが一番むずかしかった?」と一緒に分解する。


“気持ち”を信じてもらえると、子どもは次の作戦を考える余裕が出やすい。


SNSの反応:共感と“注意点”が同時に広がる

このフレーズは、SNSでもさまざまな角度から語られている。

1)「子どもに言ってあげたい」「まず受け止めるの大事」

ニュースとして紹介されると、「すぐ試してみたい」「叱る前に一呼吸おけそう」という共感が集まりやすい。短い言葉だからこそ、忙しい家庭でも取り入れやすい、という反応も出やすい。

2)「それ、何でも信じるってこと? 子どもが嘘をついたら?」

同時に必ず出るのがこの疑問だ。ここは丁寧に線引きしたい。
「信じてるよ」は“無条件に事実認定する”というより、子どもの体験を尊重し、話を続けられる状態を作るための言葉だ。真偽の判断が必要なら、段階化して「何かがあったこと」「嫌だった気持ち」を先に受け止めるやり方が現実的だ。

3)「『I believe you』は人生を変えた」——子どもに限らない力

SNSでは、子ども以外の文脈でも「I believe you(信じる)」が救いになった、という体験談が見つかる。例えば、医療や心理支援の場面で「誰も信じてくれなかったのに、専門家が『信じる』と言ってくれた」という投稿は少なくない。そうした声は、この3語が単なる子育てテクではなく、“人が安心して語るための土台”にもなりうることを示唆している。


明日から使える「ワンフレーズ」集

最後に、家庭でそのまま使える形に整えておく。

  • 「信じてるよ。まず聞かせて」

  • 「そう感じたんだね。信じるよ」

  • 「何かが起きたのは分かった。気持ちは信じる」

  • 「今は味方だよ。落ち着いて一緒に考えよう」

  • 「あなたの見え方を大事にしたい。順番に教えて」


大事なのは、完璧に言うことではない。親も人間だ。つい強い口調になったなら、あとから「さっき急に聞き詰めちゃったね。ごめん。信じてるから、もう一回聞かせて」と言い直していい。言い直しもまた、信頼を育てる行為になる。


子どもは、親の“正解”よりも、親が自分の話を大切に扱おうとする姿勢を見ている。たった3語でも、その姿勢は伝わる。だからこそ、この短い言葉は、案外長い効果を残すのかもしれない。



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