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高額なフード&ドリンクが“客離れ”を招く——インドの劇場で起きていることと日本への示唆

高額なフード&ドリンクが“客離れ”を招く——インドの劇場で起きていることと日本への示唆

2025年11月05日 16:18

1. 何が起きているのか:インド最高裁の危機感と現場の声

  • 最高裁の懸念
     「マルチプレックスのF&B価格が高騰し、放置すれば観客離れが進む」とインド最高裁が表明。小サイズのポップコーンで500ルピー超、フレーバー付きだと700ルピー台、50ルピーの清涼飲料が館内では400ルピー超という価格感が伝えられ、500mlの水でさえ100ルピーに達するケースがあるという。チケットが400〜1,200ルピーのレンジだと、「映画は週末のささやかな娯楽」から「ちょっとした贅沢」へと認識が変わる。Deccan Chronicle

  • 現場の実感(映画監督テージャ)
     「スナックの法外な値付けが若年層と中間層を遠ざけている。単館は“薄利多売”、マルチは“少客高利”を志向」との指摘。ポップコーンは単館で100ルピー程度でも、マルチでは500〜700ルピーに跳ね上がり、ソフトドリンク+ナチョスで家族の出費は1,000ルピー近くに。Deccan Chronicle+2Deccan Chronicle+2

  • 事業者の反論
     「上質な空間・プレミアムな食の提供には相応の価格が必要。顧客は自ら体験レベルを選べる」という立場もある。つまり**“体験価値(体験品質×時間消費)”**に対して価格をつける発想だ。Deccan Chronicle



2. 価格の心理学:観客は“総額”で判断する

  • 観客は**「チケット+F&B=総額」**の納得感で意思決定する。チケットの値上げにF&Bのプレミアムが重なると、心理的しきい値を超えやすい。

  • 価格弾力性の高い若年層・学生・家族連れは、OTT(配信)との代替や自炊・コンビニとの比較を行い、**“劇場プレミアム”**の上限を素早く見積もる。

  • 空席が目立つほど「体験の希少性」も薄れ、ネットワーク外部性(みんなで観る楽しさ)も減衰する——結果としてさらに需要が縮む。
     (以上は理論整理。実務現場の声と整合的である。)



3. 反証もある:割引やイベントでF&Bは“戻る”

  • 平日割引・再上映・企画デーの実施で、足元ではフットフォール(来場者数)が回復し、F&Bの1人当たり支出が過去最高を更新した四半期もある。インド最大手PVR Inoxは、平日割引や往年作の再上映を組み合わせ、平均チケット価格(ATP)上昇と並行してF&Bの1人当たり支出が10%増の148ルピーに達したと報じられた。Reuters

  • ナショナル・シネマ・デー(一律75ルピーなど)といった可視的な値下げイベントは、大量動員を実現し、**「いま映画館に行く理由」**を観客に与える施策として定着。The Times of India

  • ただし、作品線(ラインアップ)やOTTの早期配信など別要因も相まって需要は揺れ動く。価格だけでは説明しきれない面もある。The Times of India



4. ビジネスモデルの転換点:F&Bで稼ぐのは悪か?

  • 多くのシネコンが低い配給分配率の補填としてF&Bマージンに依存してきた。ところが、価格が“見える化”される現在では、「高すぎる」という心理抵抗がSNSを介して来場意思に直結する。

  • “少客高利”は混雑を嫌う富裕層には有効でも、層の薄い平日を埋めるには**“可処分時間×可処分所得の広い層”を取り込む必要がある。ここで供給側の価格設定と需要側の体験価値**の摩擦が強まりやすい。Deccan Chronicle



5. 日本への示唆:3つの「再設計」

(1) 総額の納得感を高める“見える化”

  • 「チケット+F&B」総額の目安を事前提示(例:2人来場の標準モデル)。

  • 透明性の高い価格理由(原材料・人件費・ブランド体験)を打ち出し、**“値付けの物語化”**を行う。


(2) バリューバンドルと価格帯の“梯子”づくり

  • ミニ・シェアセット(少量・低価格)からプレミアムセットまでの段階価格で“入口”を広げる。

  • 時間帯別の価格設計(昼・レイト)や曜日別プロモと組み合わせ、需要のシフトを狙う(例:火曜シネマ、学割ハッピーアワー)。実際、インドでは火曜割や特別価格デーが来場押し上げに寄与。The Times of India


(3) 体験の“質感”を非価格で補強

  • 香り・音・照明などマルチセンサリー演出、行列ストレスの解消(モバイルオーダー、受取ロッカー)。

  • コラボ商品やご当地食で**“ここでしか”**の説得力を作る。

  • 再来店の理由——スタンプ、来場データ連動クーポン、“映画×軽食”のシーン設計(上映前15分の“食べ時”提示など)。



6. 価格を下げずに“高くない”と感じさせる技術

  • アンカーの設計:高価格の単品を“見せる”一方で、価値/量バランスの良いミドルSKUを目立たせる。

  • プロスペクト理論に基づき、**無料の小付け(例:リフィル一回・ミニポップ)**で“得した感”を演出。

  • 支払いの分割知覚:チケット購入時にF&B前払いの少額化(プリペイド・クレジット)で痛みを分散。

  • メニュー工学:視線導線と価格帯配置で選ばせたいSKUへ誘導。



7. OTTと“二正面作戦”

  • 早期OTT化は劇場の“希少性”を減殺するため、ウィンドウ戦略の再調整が必須。“劇場で観る価値”(音・大画面・一体感)を強化しつつ、イベント化(応援上映、舞台挨拶中継)で不可替性を高める。The Times of India



8. まとめ:値付けは“数式”であり“物語”でもある

  • 高額F&B=即・悪ではない。ただし総額の納得感が崩れると観客離れが一気に可視化される。

  • 可視的な値下げイベント、段階的バンドル、非価格の体験強化、透明な価格理由が、収益確保と動員回復の両立に効く。

  • インドの議論は日本のシネコンにも直結する。「高いから行かない」と言わせない、価格と体験の再設計が鍵だ。Deccan Chronicle+2Reuters+2


参考記事

高額な飲食物が劇場の観客数を減少させる原因に
出典: https://www.deccanchronicle.com/entertainment/expensive-food-and-beverages-killing-viewership-in-theatres-1914975

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