最初から5kmを目指さない。「走る+歩く」で始める運動習慣 - 長く続くランニングの始め方

最初から5kmを目指さない。「走る+歩く」で始める運動習慣 - 長く続くランニングの始め方

「まだ走れる」が落とし穴?ランニング初心者に必要な“休む勇気”

久しぶりに走ってみたら、思ったより気持ちがよかった。何回か続けるうちに息切れも減り、いつもの道が短く感じられるようになった。

そんなとき、次に浮かぶのは「もう少し距離を延ばそう」「明日も走ろう」という気持ちだろう。

ところが、この手応えが、そのまま体全体の準備完了を意味するわけではない。

ドイツのニュースサイト「op-online」が2026年10月4日に掲載した記事では、理学療法士でパーソナルトレーナーのニルス・シュテュッツァー氏が、ランニング初心者に向けて負荷の増やし方や休養の重要性を説明している。

その話から見えてくるのは、頑張る気持ちを長く保つためにこそ、最初は頑張りすぎないほうがよい、という考え方だ。


息が上がらなくなっても、脚の準備が整ったとは限らない

走り始めの変化は、意外と早く感じられる。

同じ道を以前より楽に走れる。呼吸が落ち着くまでの時間が短くなる。ぎこちなかった動きが少しずつ自然になる。

シュテュッツァー氏は、こうした変化の背景に、エネルギーを使う仕組みや心肺機能、動作を調整する神経系の適応があると説明する。一方、腱や靱帯、骨などが新しい負荷に慣れるには、より長い時間がかかるという。

原記事では適応の目安として数週間から数か月という期間が挙げられている。ただし、これを「何週間たてば誰でも安全に距離を増やせる」という期限として読むべきではない。運動歴や体調、走る量によっても事情は異なる。


覚えておきたいのは、呼吸の余裕だけでは、体が受け止められる負荷を判断しきれないという点だ。

同氏は、意欲的に走り始め、距離も速度も増やした結果、後になって膝や股関節、腰の不調を訴える人を診てきたという。そして、痛みを経験した人が「自分にはランニングが合わない」と結論づけてしまうことを惜しんでいる。

相性を判断する前に、始め方に無理がなかったかを振り返る余地はありそうだ。


週2〜3回を目安に、走らない日も予定に入れる

では、最初はどのくらい走ればよいのだろうか。

シュテュッツァー氏は、導入期のランニングを多くても週2〜3回程度とし、間に1〜2日の休養を入れる方法を勧めている。頻度を増やすことについても、約3か月は慎重に考える立場だ。

これは同氏が示す保守的な目安であり、全員に共通する唯一の正解ではない。大切なのは、走る回数を先に決めて体を従わせるのではなく、回復の様子を見ながら続けることだ。

英国NHSの初心者向けプログラム「Couch to 5K」も、週3回のランニングの間に休養日を置く構成になっている。進め方は段階的で、9週間より長くかけてもよいとしている。NHS

休養日を予定に書き込むことには、気持ちの面でも意味がある。

「今日は走れなかった」ではなく、「今日は回復させる日だった」と捉えられるからだ。予定どおり休めたことも、習慣を守れたことに含めてよい。


最初から3〜5kmを走り切る必要はない

原記事では、歩行を挟みながら3〜5km程度から始める案が紹介されている。しかし、この距離は初心者全員の最低ラインではない。

これまでほとんど運動をしていなかった人にとって、5kmは小さな数字ではない。距離を達成することに意識が向きすぎると、疲れていても引き返せなくなる。

そこで参考になるのが、短いランと歩行を交互に行う方法だ。NHSのプログラムは、最初の週に「1分走る、1分30秒歩く」という組み合わせを使う。最初から長時間走り続ける前提ではない。NHS

歩きに切り替えた瞬間を「失敗」と考える必要はない。走る時間を細かく分ければ、最初の一歩も踏み出しやすくなる。

「途中で歩いてしまった」ではなく、「予定どおり歩行を挟んだ」。

同じ行動でも、この捉え方の違いは大きい。ランニングを、限界まで耐える試験にする必要はないのだ。


SNSにもある「もっと走りたい」と「休むのが不安」

こうした迷いは、SNSの初心者コミュニティにも表れている。

以下は元記事への直接の反応ではなく、掲示板型SNS「Reddit」の「r/C25K」で確認できた、同じテーマに関する投稿やコメントの要約だ。個人の経験や意見であり、医学的な根拠や世論全体を示すものではない。

2026年4月22日の投稿では、プログラムの4週目に入った初心者が、休まず続けて走ってもよいのか、30分では短く感じるので1時間に増やしてもよいのか、と相談していた。

 

返信には、回復も体力づくりの過程に含まれることや、少ない上積みのためにけがのリスクを増やすべきではない、という趣旨の意見が寄せられていた。一方、連日走ること自体は可能だとしつつ、疲労が残った脚で走ることになると注意する声もあった。reddit.com

また、2023年8月の「3週目から先に進めない」という相談では、速度を落とすことを勧めるコメントが見られた。ある参加者は、歩くより少し速い程度でも、会話できるペースに落としたことで次の段階へ進めたと説明している。reddit.com

これらのやり取りから読み取れるのは、初心者の悩みが「やる気が出ない」だけではないということだ。

やる気があるから増やしたくなる。続けたいから休むのが怖くなる。そして、ゆっくり走ることを、能力不足のように感じてしまう。

だからこそ、「もっと頑張れ」以外の助言にも価値がある。速度を下げる、同じ段階を繰り返す、予定どおり休む。そうした選択を前向きに捉えられる場所は、習慣を支える助けになるだろう。


時計の数字は、毎回更新しなくていい

ランニングウォッチやアプリを使えば、距離、速度、心拍数などを簡単に記録できる。

前回より速かったと分かれば、うれしい。走った軌跡を眺めるだけでも達成感がある。ただ、記録を残すことと、毎回その記録を上回ることは別だ。

シュテュッツァー氏も、計測は必須ではないとしたうえで、変化を把握する道具としての活用を勧めている。

初心者なら、数字と一緒に短い感想を残す方法も考えられる。

「最後まで余裕があった」
「途中で張りを感じた」
「翌朝は普段どおりだった」

こうしたメモは、速さ以外の変化に目を向けるきっかけになる。今日は短く切り上げたほうがよかったのか、前回と同じ内容で十分だったのか。自分の体を知るための記録として使いたい。


フォームや靴にも、急いで“正解”を求めない

走り方を調べると、歩数や着地方法など、さまざまな助言に出会う。

原記事でも、歩幅を小さくする考え方や、足の着き方、靴のかかとと前足部の高低差などが取り上げられている。ただし、着地方法についての提案には、アキレス腱の状態や柔軟性などの条件も付いている。

一部分だけを切り取り、「今日から全員この走り方に変えるべきだ」と受け取るのは避けたい。

また、同氏はランニングシューズを見た目だけで選ばず、実際に履いて走り、必要に応じて店頭で相談することを勧める。同じシリーズでも、後継モデルの履き心地や設計が同じとは限らないという指摘は、買い替え時にも参考になる。

初心者にとって、すべての数字や理論を覚えることが出発条件ではない。まずは無理なく動けること、気になる点があれば相談できることを大切にしたい。


走る以外の時間も、続けるために使える

シュテュッツァー氏は、ランニングに加えて、体幹や骨盤まわり、脚、臀部の筋力や動きやすさを整えることも重視している。

英国ニューカッスルのNHS病院グループも、走る量と体の対応力の釣り合いを大切にし、補助的な筋力トレーニングなどを紹介している。回数や距離、強度を増やす一方で回復時間が不足すると、過負荷につながるという説明だ。Newcastle Hospitals NHS Foundation Trust

ただし、走らない日をすべて別の厳しい運動で埋める必要はない。「休養日にも何か成果を出さなければ」と考えると、休む予定が形だけになってしまう。

また、安静にしていても痛む、強く腫れる、痛い脚に体重をかけられないといった場合は、運動を続けて様子を見るのではなく医療機関に相談したい。持病がある人も、開始前に適した運動量を確認しておくとよい。Newcastle Hospitals NHS Foundation Trust


最初の成功は、次も走りたいと思えること

ランニングを始めると、目標を数字にしたくなる。5km、30分、週3回。それらは行動を具体的にする助けになる。

一方で、数字を達成することだけが目的になると、体の反応が後回しになる。

最初の数週間は、「まだ少しできそう」というところで終える日があってよい。歩く区間が長い日があってもよい。予定した距離に届かなくても、それだけで運動の価値がなくなるわけではない。

今日の一回を頑張り抜くことより、来週も外に出たいと思えること。そのために、走る日と同じように、歩く時間や休む日を大切にする。

ランニングの第一歩は、速く走れる自分を証明することではない。今の自分に合う続け方を見つけることなのだ。



出典URL

  1. op-online:
    2026年10月4日掲載。理学療法士ニルス・シュテュッツァー氏が、初心者の練習頻度、体の適応、休養、フォーム、靴選びなどを解説。
    https://www.op-online.de/welt/laufen-fuer-anfaenger-wie-viel-training-ist-zum-einstieg-gesund-zr-94521806.html

  2. 英国NHS:初心者向けプログラム「Couch to 5K」。
    週3回・間に休養日を置く構成や、1分のランと1分30秒の歩行を組み合わせる導入方法を確認。
    https://www.nhs.uk/better-health/get-active/get-running-with-couch-to-5k/

  3. Newcastle Hospitals NHS Foundation Trust:ランナーのけが予防。
    過負荷と回復の関係、筋力トレーニング、医療機関への相談が必要な症状について参照。
    https://www.newcastle-hospitals.nhs.uk/services/injury-prevention-advice-for-runners/

  4. Reddit「r/C25K」:休養日を省いてよいかという相談。
    2026年4月22日の投稿。初心者の練習量を増やしたい気持ちと、それに対する回復重視の意見を紹介。
    https://www.reddit.com/r/C25K/comments/1sshgfe/skipping_rest_days_is_it_really_bad/

  5. Reddit「r/C25K」:3週目から先へ進めないという相談。
    2023年8月30日の投稿。ペースを落とす工夫や休養についての参加者の意見を紹介。
    https://www.reddit.com/r/C25K/comments/1650urt/