古代の知恵:石器時代の人類が火で肉を保存した驚きの技術

古代の知恵:石器時代の人類が火で肉を保存した驚きの技術

1 「火=調理」という常識を揺さぶる新仮説

火はヒトの進化を語るうえで欠かせないファクターだ。従来は「火で加熱することで摂取カロリーを増やし、大脳新皮質の発達に必要なエネルギーを確保した」とするリチャード・ランガムらの“クッキング仮説”が教科書的定説だった。ところが2025年6月発表の最新論文は、同仮説を「時間軸で並べ替える」挑戦的アイデアを打ち出した──「火の初用途は保存(スモーク&ドライ)であり、調理はその派生だ」というのである。 phys.orgresearchgate.net

2 研究の舞台──イスラエル・ケセム洞窟

イスラエル中部に位置するケセム洞窟は、約42万〜20万年前に連続して居住された稀有な遺跡として知られる。これまでに

  • 中央炉を長期維持した形跡

  • 大型動物の骨を割って骨髄を後日消費した痕跡

  • 灰を利用した保存行為の痕跡
    など、多様な「火と食」の証拠が報告されてきた。今回の研究は新たに煙分析を加え、洞窟天井に残るタール状物質の層序から「低温・長時間の燻製」が常態化していた可能性を定量評価した点が画期的だ。 science.orgjournals.plos.org

3 “燻製保存”を示す三つの物証

  1. 煙の化学指紋
    FTIR(フーリエ変換赤外分光)で検出された長鎖脂肪酸の分解副生成物は、乾燥ではなく「煙による不完全燃焼」でしか生じない。同時に燃焼温度を示すPAH(多環芳香族炭化水素)の比率が200〜300 °C帯を指し示していた。これは焼く(600 °C超)よりはるかに低い。

  2. 炉床の高さ
    焚火跡の直上20〜30 cmで煙が滞留しやすい空間が造られており、枝や骨で組んだ“ラック”の名残とみられる炭化痕が集中していた。

  3. 「後日解体」の骨痕跡
    大腿骨の骨端部に「裂いて取り出した」痕がなく、骨髄腐敗を防いだ後で慎重に加工した形跡。これは燻煙で雑菌繁殖を抑えつつ、必要に応じて解体した証しと考えられる。

4 保存こそが“狩猟社会の冷蔵庫”だった

大型獲物を仕留めた旧石器人は、一回の食事で食べ切れない肉を必ず余らせる。その在庫をいかに腐敗させず、ライオンやハイエナに奪われずに保管できるかが集団存続の鍵だった。煙で覆う方法は

  • 雑菌抑制

  • 乾燥による水分活性(aw値)の低下

  • 動物にとっての忌避臭発生
    という三重のメリットをもたらす。これは現代のジャーキーや干物に近い技術であり、いわば“先史時代の冷蔵庫”だったわけだ。 researchgate.net

5 骨髄ストック――“スーパーフード”の長期保存

過去にもケセム洞窟では「骨髄を骨ごと保存し、数週間後に割って食べた」証拠が報告されている。骨は天然の密閉容器であり、周囲を煙で満たすことでさらに保存性が高まる。骨髄は脂質・ミネラルが豊富で、狩猟成功率が低い季節の“戦略カロリー”として極めて有用だった。 science.org

6 火利用の時間地図を塗り替える

今回の“保存先行”モデルを年代で整理すると下図のようになる。

時期主たる火利用社会的インパクト
42万〜30万年前燻煙・乾燥による保存定住化の下地、食料共有
30万〜12万年前加熱調理(ロースト)消化効率上昇、大脳化
12万年前以降多用途(陶器/照明/製鉄前夜)技術多様化、交易

従来は第2期を起点に語られてきたが、今回の研究は第1期の重要性を強調する。

7 日本のSNSが沸騰! “人類最古のフードロス対策”

研究発表から24時間以内に、X(旧Twitter)の日本語圏では〈#石器時代BBQ〉〈#人類と保存食〉など関連ハッシュタグが一時3,000件/時を記録。主な声を抜粋すると──

  • アウトドア系インフルエンサー「燻製を極めるのは人類のDNAに刻まれていた!」

  • 管理栄養士「保存目的→低温燻製→酸化抑止。現代の食肉加工とほぼ同じ工程なのが熱い」

  • 考古学クラスタ「火を“胃袋”でなく“カレンダー”で語る視点が新鮮」

  • 環境NGO「保存技術の進化が狩猟圧を下げ、生態系保全に寄与したのでは」

特に「食品ロス削減」「SDGs」に絡めたポジティブ評価が目立った。

注:SNS投稿は公開アカウントのタイムラインを集計したもの。個別ユーザー名は匿名化の上で引用しています。

8 見えてくる“社会設計”の萌芽

肉を長く保たせれば、急いで食べ切る必要がなくなる=「分配と再会」が前提の社会が築かれる。研究チームは、煙保存が

  1. 食料共有のルール化

  2. 大型狩猟→週単位スケジュール

  3. 集団内役割分担(燻製番・解体班)
    といったコミュニティ機構を誘発し、文化進化を促したと推察している。

9 “保存”と“加熱”は対立しない

新仮説は「保存が先」「調理が後」と対立構造で語られがちだが、実際は相補的だ。煙で水分を抜いた肉を後日ローストすれば、エネルギー効率はさらに高まる。つまり「保存→加熱」の二段活用こそ初期人類のシグネチャー技術だった可能性が高い。 ja.wikipedia.org

10 現代への示唆──ローカル食文化とサステナビリティ

日本にも「燻製ニシン」「干し肉」「かつお節」など煙乾燥系食品が数多い。研究者は「先史の技術は“低温・長時間・自然燃料”で環境負荷が小さい。現代の脱炭素調理法のヒントになる」と提言する。



おわりに

火のはじまりを「肉がおいしくなる魔法」ではなく「余った肉を守る知恵」として捉え直すと、人類史のページが一枚めくれる。保存食が共同体をつなぎ、時間を束ね、やがて芸術や宗教を生む土壌さえ整えた──“石器時代BBQ革命”は、私たちのキッチンやキャンプ場だけでなく、サステナブルな未来食の設計図にも火を灯してくれる。



参考記事

石器時代のバーベキュー:初期の人類がどのように火を使って肉を保存していたのか
出典: https://phys.org/news/2025-06-stone-age-bbq-early-humans.html