メインコンテンツにスキップ
ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア ロゴ
  • 記事一覧
  • 🗒️ 新規登録
  • 🔑 ログイン
    • English
    • 中文
    • Español
    • Français
    • 한국어
    • Deutsch
    • ภาษาไทย
    • हिंदी
クッキーの使用について

当サイトでは、サービスの向上とユーザー体験の最適化のためにクッキーを使用しています。 プライバシーポリシー および クッキーポリシー をご確認ください。

クッキー設定

クッキーの使用について詳細な設定を行うことができます。

必須クッキー

サイトの基本機能に必要なクッキーです。これらは無効にできません。

分析クッキー

サイトの使用状況を分析し、サービス向上に役立てるためのクッキーです。

マーケティングクッキー

パーソナライズされた広告を表示するためのクッキーです。

機能クッキー

ユーザー設定や言語選択などの機能を提供するクッキーです。

10人に1人が“AIの方が満足” ― チャットボットが埋める孤独と、その代償

10人に1人が“AIの方が満足” ― チャットボットが埋める孤独と、その代償

2025年12月31日 17:15

1. 「人よりAIと話す方が満足」――衝撃の数字が示すもの

米KYMA(CBS系)の短いニュースが、静かな波紋を広げている。「英国の研究で、10代の10人に1人が“人と話すよりAIチャットボットとの会話の方が満足”と答えた。さらに3人に1人は、深刻な話題では人間よりAIを選ぶ」という内容だ。KYMA


このニュースが刺さるのは、数字のインパクト以上に、私たちが薄々感じていた現実――“会話の相手が人間である必然”が揺らいでいる――を、はっきり言語化してしまったからだろう。


ただし注意したいのは、ニュースが根拠として挙げるBMJ関連の文脈だ。BMJ Groupの発表は、BMJのクリスマス号に載った「Feature/Opinion(特集・論説)」を踏まえたもので、外部査読された研究論文そのものではない。BMJグループ つまり、数字の扱いは慎重であるべきだ。


それでも、同種の傾向は他の大規模調査でも確認されている。たとえばCommon Sense Mediaの調査では、AIコンパニオン(会話相手として設計されたAI)を使ったことがある10代は72%、会話の満足度が“友だちとの会話より上”と答えたのは10%、**“同程度”が21%という結果が出ている。Common Sense Media


同調査では、AIユーザーの
33%が「重要・深刻な話を、人ではなくAIにした経験がある」**とも報告している。Common Sense Media


この“10%”は少数派に見えるかもしれない。だが、母数が大きくなれば社会的な意味は変わる。しかも、同調査では日常的ユーザーが52%、**毎日使う層が13%**という。Common Sense Media これは一過性のブームというより、生活に入り込みつつある兆候だ。


2. 背景にあるのは「孤独」と「話し相手の不足」

BMJ Groupの発表は、AIチャットが“孤独をしのぐ道具”として使われている点に警鐘を鳴らす。人間のように共感やケアを本質的に持たない存在と「情緒的な結びつき」を学習してしまうリスク、そして“問題あるチャットボット使用”を新しいメンタルヘルス上のリスクとして医療者が把握すべきだ、という主張だ。BMJグループ


孤独の問題は10代だけではない。英国では「AIを情緒的サポートや社会的交流に使った人が3分の1」という報道もあり、世代を問わず“心の空白を埋める用途”が広がっている。ガーディアン


そして米国では、10代のAI利用はすでに「一般化」している。Pew Research Centerの2025年12月の調査によれば、米国の13〜17歳の64%がAIチャットボットを利用し、約3割が毎日使う。Pew Research Center


つまり、「一部の子がAIと話している」という段階ではなく、**“クラスの多数が使っている”**という状態だ。


3. 10代がAIに惹かれる理由:「否定されない」「いつでもいる」「秘密を言える」

SNS上の反応(体感)も、この“理由”に集約される。

Common Sense Media調査が示す、利用動機の上位はかなり率直だ。

  • 「エンタメとして楽しい」30%

  • 「技術に興味」28%

  • 「アドバイスがもらえる」18%

  • 「いつでも話せる」17%

  • 「否定されない」14%

  • 「友だちや家族に言えないことを言える」12%

  • 「現実の人と話すより簡単」7% Common Sense Media


ここに、10代特有の事情が重なる。学校・家庭・部活・SNS……常に評価され、比較され、気を遣い続ける環境で、**“反論してこない相手”**は強烈に心地よい。教育系メディアEducation Weekは、AIコンパニオンが「同意的で肯定的になりやすい」設計だと指摘し、子ども向けに設計されていない点に注意を促している。Education Week


SNSでも、「人間関係に疲れたとき、AIはラク」「気まずさがない」といった声は珍しくない。逆に、AIとの関係を“安全”だと語る投稿もある(たとえば「節度があれば、人間関係より情緒的に安全かもしれない」といった趣旨)。Reddit


さらに、キャラクター型チャットのコミュニティでは「現実ではできない空想を楽しめる」「推しキャラと会話できる場」として肯定的に語られることも多い。Reddit


要するに、AIは“相談相手”であると同時に、ゲーム・推し活・日記・カウンセリングもどきを一つにした「感情のインフラ」になり始めている。


4. でも、リスクも同じだけ拡大する――依存・孤立・不適切応答・プライバシー


4-1. 依存と孤立:会話の“代替”が“置き換え”になる瞬間

BMJ側が問題視するのは、AIを友だちのように扱う、強迫的に使う、社会的孤立が増える――といった兆候だ。KYMA
Common Sense Mediaでも、ユーザーの**33%が「重要な話を人ではなくAIにした」**ことが示され、“置き換え”の入口が見える。Common Sense Media


一方で同調査は、「AIより友だちと過ごす時間が多い」が80%で、AIがすぐに人間関係を駆逐するわけではないとも示す。Common Sense Media


つまり現状は、「主役は人間、補助輪としてAI」が多い。だが、補助輪が外れないまま走り続ける人が一定数出るとき、社会は初めて“新しい孤立”に直面する。


4-2. 不適切応答:気づかないうちに境界線が崩れる

Common Sense Mediaでは、AIユーザーの34%が「AIの発言で不快になった経験がある」。Common Sense Media


さらに、米紙Washington Postは、子どもがAIコンパニオン的サービスで不適切・脅迫的・性的なやり取りに触れ、家庭が深刻な事態に追い込まれたケースを報じている。The Washington Post


“人間相手ならアウトな会話”が、AI相手だと「ただの演出」「冗談」「自分だけの秘密」として見過ごされ、境界線が麻痺する危険がある。


4-3. メンタルヘルス用途の危うさ:便利だが、責任主体が曖昧

Peopleが紹介したJAMA Network Openの研究では、12〜21歳の13%がメンタルヘルスの助言をAIチャットに求めたとされる。People.com


“敷居の低さ”は大きなメリットだ。だが同時に、誤った助言、緊急時の対応、依存、個人情報の扱いなど、医療・福祉の領域に近いリスクが一気に増える。


その流れを受け、米国では規制も動いている。Reutersによれば、ニューヨーク州はAIコンパニオンに自殺念慮の検知や危機対応、非人間であることの定期的な表示などを求める枠組みを導入し、カリフォルニア州でも2026年1月1日施行の法律で、青少年保護や危機対応の透明性、報告義務などを求める動きがあるという。Reuters


5. SNSの反応は二極化:「救い」か「危険な代替」か

今回のKYMAの数字(10人に1人がAI会話をより満足)に対して、SNS的な反応は大きく3タイプに分かれる。


(A)共感・現実肯定:「そりゃそう」

  • いつでも返事が来る、否定されない、気を遣わない。

  • 人間関係の摩耗が強いほど、AIは“避難所”になる。
    → これは調査の利用理由(「いつでも」「否定しない」「簡単」)とも一致する。Common Sense Media


(B)危機感:「人間関係の練習機会が減る」

  • 深刻な話ほどAIに向かうと、現実の助けを求める回路が弱るのでは。

  • “都合のいい肯定”に慣れると、現実の摩擦に耐えられない。
    → 教育現場では実際に「学校が先回りして方針を作るべき」との動きが紹介されている。Education Week


(C)親目線の不安:「止め方がわからない」

  • 依存や恋愛感情に近い執着を心配する声。

  • どう距離を取らせるべきか、家庭が孤立する。
    → 関連コミュニティでは、家族が困惑していることがうかがえる。Reddit


重要なのは、AもBもCも「極端な話」ではなく、同じ家庭・同じ子の中で併存しうることだ。AIは役に立つ。でも、役に立つほど手放しにくい。


6. では、どう向き合うべきか:禁止より「使い方の設計」

結論から言えば、全面禁止は現実的ではない。Pewの数字が示す通り、すでに多数派が触れている。Pew Research Center
必要なのは、家庭・学校・サービス側で**“使い方の設計”**を共有することだ。


家庭でできること(例)

  • 用途を分ける:「雑談OK」「悩み相談は大人/専門家へ」など“線引き”を先に合意する

  • ログではなく体験を聞く:「何を相談した?」より「話してどう感じた?」で振り返りを促す

  • 個人情報ルール:本名・住所・学校名・写真・位置情報を入れない(“匿名の安心”は誤解になりやすい)Futurism

  • 危機サイン:睡眠・食欲・学校回避・孤立が重なったら、AIの利用状況も含めてケアを検討(BMJも“スクリーニング”の必要性を示唆)BMJグループ


学校・自治体でできること(例)

  • AIリテラシーの必修化:AIが「共感しているように見える」仕組み、誤情報、誘導、プライバシーを扱う

  • 相談導線の整備:AIが“最初の窓口”になるなら、そこから人へつなぐ導線(保健室、スクールカウンセラー)を明確に

  • ルールづくりの透明化:禁止ではなく、目的別のガイド(学習/雑談/メンタル用途)を提示する Education Week


7. 「10人に1人」を、社会がどう読むか

10人に1人がAI会話を「人間より満足」と答える――この数字は、“人間が劣った”という話ではない。むしろ逆で、人間の会話が持つ面倒くささ(誤解・衝突・沈黙・気遣い)を引き受ける余裕が、社会から削られているというサインかもしれない。


AIは、孤独の穴を埋める。だが本来、その穴を小さくするのは、家族、学校、地域、医療、友人関係、そして「失敗しても戻れる居場所」のはずだ。AIがその代わりになるとき、私たちは便利さと引き換えに、どんな“人間の筋肉”を落としてしまうのか。

ニュースは短い。けれど問いは長い。KYMA


参考記事

10人に1人のティーンエイジャーが人との会話よりもAIチャットボットを好む
出典: https://kyma.com/news/national-world/2025/12/29/one-in-10-teens-prefer-ai-chatbots-over-human-conversation/

← 記事一覧に戻る

お問い合わせ |  利用規約 |  プライバシーポリシー |  クッキーポリシー |  クッキー設定

© Copyright ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア All rights reserved.