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子ども時代の逆境体験が認知症リスクを高める ―ベルリン・シャリテ発・最新研究が示す脳老化の“早回し”メカニズムと日本への警鐘―

子ども時代の逆境体験が認知症リスクを高める ―ベルリン・シャリテ発・最新研究が示す脳老化の“早回し”メカニズムと日本への警鐘―

2025年06月03日 14:38

1 見過ごされてきた「幼少期」という危険因子

認知症の発症には加齢、高血圧、糖尿病、飲酒・喫煙、運動不足などさまざまな生活習慣が関与すると言われてきました。しかし、「成長のずっと前段階である子ども時代の体験が、その何十年後の脳の状態を左右する」――そんな衝撃的なデータがドイツ・ベルリンの名門大学病院シャリテ(Charité)から報告されました。研究チームは「家庭内暴力や養育放棄、家族の薬物依存・犯罪、親の死別」などの心理社会的ストレスが、分子レベルから脳構造、認知機能までを長期にわたり損なう可能性を指摘しています。



2 シャリテ研究の概要――179人の女性に焦点

今回解析されたのは 30~60 歳の女性 179 人。女性に限定した理由は、女性が男性よりアルツハイマー型認知症を発症しやすいこと、さらに更年期以降のホルモン変動が脳老化へ影響しかねない点にあります。研究者らは①詳細な半構造化インタビューで思春期以前の逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)を評価し、②血液中の炎症・神経変性バイオマーカー(GFAP、NfL など)を測定し、③高解像度 MRI で脳容積を計測、④国際標準の神経心理テストで記憶・注意・実行機能を検査しました。

pubmed.ncbi.nlm.nih.govcharite.de


3 「脳が年を取り過ぎている」――4 つの一致した所見

ACE スコアが高い女性ほど、

  1. 血液中の炎症・神経細胞死マーカーが有意に上昇

  2. 海馬や前頭葉灰白質など記憶・実行機能を担う領域の容積が減少

  3. 認知テストで語想起・作業記憶に低下傾向

  4. 加齢に伴う脳萎縮が平均 3~5 年“前倒し”という4層の悪影響が重なって確認されました。研究責任者のクリスティーネ・ハイム教授は「早期ストレスはホルモン系と免疫系を恒常的に撹乱し、慢性炎症を通じて脳の老化スピードを上げる」と述べています。bionity.com


4 エピジェネティクスと免疫暴走――分子メカニズムの最前線

幼少期の慢性的ストレスは、コルチゾール過剰分泌→脳内のミクログリア活性化→神経炎症の持続という負の連鎖を引き起こします。さらに最近のエピジェネティクス研究では、ストレス関連遺伝子(FKBP5 など)の DNA メチル化パターンが成人後も保持され、炎症促進性サイトカインの発現を高めることが報告されています。こうした「ストレスの分子刻印」が、数十年後の脳神経変性を促進する可能性が高まっています。

magazine.hms.harvard.edu


5 日本人高齢者コホートでも確認された ACE 効果

実は日本でも 60 歳以上の約 4 万人を対象にした疫学研究があり、「3 つ以上の ACE を経験した群は、経験ゼロ群に比べ将来の認知症リスクが 2.18 倍」という結果が出ています(JAGES コホート)。社会的つながりや緑茶など健康的生活習慣がリスクを一部緩和したという知見も注目されます。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


6 女性特有の脆弱性――ホルモンと社会的役割

エストロゲンには抗炎症・神経保護作用がある一方、閉経とともにその保護膜が急激に失われます。加えて家事・育児・介護といったジェンダーギャップによる多重負担がストレスを慢性化させやすい点も、女性の脆弱性を高める要因です。研究チームは「男性でも同様の関係があるかは不明だが、女性の方が ACE のダメージが顕在化しやすい」としています。


7 レジリエンス(回復力)の鍵――「傷つきやすさ」だけではない

ACE を抱えていても、すべての人が認知症になるわけではありません。心理的回復力(レジリエンス)を高める要因として、

  • 親密な対人関係

  • 意味づけや価値観を共有できるコミュニティ

  • 規則正しい運動・食生活

  • 質の高い睡眠が挙げられます。中でも社会的支援ネットワークは、脳の炎症負荷を軽減し認知機能を下支えすることが近年の研究で裏付けられています。pmc.ncbi.nlm.nih.gov


8 ライフコース全体を視野に入れた予防戦略

8-1 家庭・学校・地域が連携した「トラウマ・インフォームド・ケア」

児童虐待防止やヤングケアラー支援はもちろん、学校現場でのメンタルヘルス教育や地域子育て拠点の整備など、一次予防としての ACE 低減策が不可欠です。


8-2 成人期の「可塑性ウィンドウ」を逃さない

ACE を経験した成人は高感受性薬物治療や心理社会的介入(マインドフルネス・認知行動療法)が効果的との報告があります。二次予防として中年期からの血圧・糖質管理、認知症スクリーニングが重要です。


8-3 高齢期の社会参加を保証する環境整備

三次予防として、地域包括ケアシステム下での認知症共生社会づくり、ICT を活用したデジタルレジストリ(例:ドイツの digiDEM Bayern)によるリアルタイムモニタリングが参考になります。journals.plos.org


9 家族・当事者への具体的アドバイス

  1. 個別のリスク把握:ACE チェックリストで自分の幼少期を棚卸しし、かかりつけ医に共有

  2. 抗炎症食:魚・オリーブオイル・緑茶・大豆を中心とした和地中海型食事

  3. 習慣化された有酸素運動:週 150 分の中強度ウォーキングで脳血流アップ

  4. 睡眠とストレス緩和:就寝 90 分前の入浴、日中のマインドフルブリージング

  5. 社会的つながり:地域サークルやボランティアへの参加で孤立を防止


これらは炎症を抑え、シナプス可塑性を維持し、認知予備能を高めると報告されています。medicalxpress.com


10 まとめ――「遠い過去」は「遠い未来」を左右する

  • ACE と脳老化・認知症リスクの関連はエビデンスが積み重なりつつあり、今回のシャリテ研究は血液バイオマーカー・脳画像・認知テストを組み合わせてその因果連鎖を裏付けた点で画期的。

  • 日本でも同様の関係が確認され、人生早期の介入が認知症対策の新たなフロンティアになる。

  • 女性はホルモン変化と社会的役割の重複で影響を受けやすく、ジェンダー視点での対策が不可欠。

  • レジリエンスを高める生活習慣と社会的支援は、既に ACE を経験した人のリスクを軽減しうる。

子どもを取り巻く環境をより安全で健やかなものにすること――それは将来の高齢社会を支える「最高の医療投資」と言えるでしょう。

本記事はドイツ『Fuldaer Zeitung』による 2025 年 6 月 2 日付報道、およびシャリテ大学病院プレスリリースほか最新の国際・国内研究成果をもとに執筆しました。



参考記事

子供時代のトラウマが認知症リスクを高める - 研究者が過小評価されていた要因を発見 - フルダー新聞
出典:https://www.fuldaerzeitung.de/ratgeber/gesundheit/kindheit-unterschaetzter-faktor-alzheimer-demenz-risiko-berlin-charite-trauma-in-der-93747199.html

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