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GLP-1の次は“マイクロプロテイン”だ:肥満・老化治療に開く新ルート - 『1つのmRNA=1つのタンパク質』の常識が崩れる日

GLP-1の次は“マイクロプロテイン”だ:肥満・老化治療に開く新ルート - 『1つのmRNA=1つのタンパク質』の常識が崩れる日

2025年09月01日 12:07

1. 何が見つかったのか—「微小でも中枢」

“マイクロプロテイン”は100アミノ酸前後の極小タンパク質で、長らく「遺伝子のノイズ」と見なされてきた存在だ。今回サルク研究所は、その一つSLC35A4-MPが、褐色脂肪のミトコンドリア構造を保つ“要石”として機能し、寒冷や高脂肪食といった代謝ストレス下での抵抗力を左右することを、マウスで明確にした。SLC35A4-MPを欠損させると、ミトコンドリアは腫大・歪み・炎症化し、エネルギー代謝が立ち上がらない。褐色脂肪は体温維持とエネルギーバランスの中枢であるため、その機能不全は全身代謝に波及する。 Phys.org


2. 背景—「mRNAは1本1タンパク質」の時代が終わる

従来「1本のmRNAは1種類のタンパク質をコードする」という教科書的理解が支配的だった。しかしmRNAの上流にある“上流ORF(uORF)”から、独立して翻訳される小タンパク質群が続々見つかっている。SLC35A4-MPもその一つで、2024年にまず「内側ミトコンドリア膜(IMM)に定位する103アミノ酸の一回膜貫通型マイクロプロテイン」であることが報告されていた。今回の論文は、その生体個体レベルでの役割を褐色脂肪で検証し、機能的重要性を裏づけた格好だ。 PMC


3. 研究の要点—ノックアウト×褐色脂肪×代謝ストレス

研究チームは、褐色脂肪でSLC35A4-MPを欠損させたマウスを作製。寒冷曝露や高脂肪食という“負荷テスト”で、褐色脂肪の代謝応答を調べた。その結果、欠損個体では褐色脂肪ミトコンドリアの形態崩壊(腫大・クリステ異常)、機能低下、炎症亢進が観察され、熱産生に必要な代謝の立ち上げに失敗。ミトコンドリアの構造維持そのものが、代謝適応のボトルネックであることが浮き彫りになった。 Phys.orgScience.org


掲載誌:Science Advances(2025年8月29日公開)
論文タイトル(要旨):SLC35A4-MPは褐色脂肪のミトコンドリア形態と機能を調節するuORF由来マイクロプロテイン Science.org


また、プロテオミクスの生データも公開され、再解析の余地が広い点も心強い。創薬研究や他組織での検証に資する“再現性インフラ”が整いつつある。 EMBL-EBIproteomecentral.proteomexchange.org


4. なぜ重要か—GLP-1の先にある「ミトコンドリア保全」という戦略

肥満・2型糖尿病・加齢関連疾患の治療は、GLP-1受容体作動薬の台頭で地殻変動を起こした。だが食欲・摂食行動を主に標的とするGLP-1と異なり、今回の着眼点は細胞内のエネルギー工場=ミトコンドリアの健全性だ。ミトコンドリアの構造保全が崩れると、褐色脂肪は熱産生(非ふるえ熱産生)を発揮できず、代謝全体が鈍る。ミトコンドリアのリン脂質組成やUCP1制御を巡る先行研究と合わせて、**褐色脂肪の“エンジン整備”**は有望な創薬軸になり得る。SLC35A4-MPはその“整備士”候補という位置づけだ。 Science.org


5. フィールド全体の文脈—「マイクロプロテイン創薬」へ

2025年には、脂肪細胞で機能する複数のマイクロプロテインを同定するCRISPRスクリーニングの成果も報告され、脂質代謝・脂肪蓄積を微細なペプチドが制御するという像が鮮明になってきた。**見落とされてきた“暗黒プロテオーム”**に光が当たり、肥満や老化関連疾患に対する新標的の“タネ”が急速に増えている。 PNAS


6. SNSの反応—熱狂と慎重論の「温度差」

 


  • 筆頭著者のRocha氏(X):本研究が2024年のIMM局在報告の上に成り立ち、生体レベルで機能を示したことを強調。研究者コミュニティから祝福のリプが寄せられる。 X (formerly Twitter)

  • 臨床家アカウント(X):論文タイトルを紹介しつつ、マウス研究である点への注意喚起。ヒト応用へは距離があると冷静に指摘。 X (formerly Twitter)

  • メディア公式(Threads):褐色脂肪のミトコンドリア構造維持に関わる新しいマイクロプロテインとして一般向けに要点を紹介。創薬可能性に言及し注目を集めた。 threads.net

総じて、研究者・技術者層は“メカニズムの一里塚”として歓迎し、臨床寄りの層は“ヒト検証と薬理学がこれから”と慎重。健全な温度差が見て取れる。


7. ここから何が起こる?—3つの実務論点

  1. ターゲット妥当性(T):褐色脂肪以外の組織—骨格筋や肝でもSLC35A4-MPは機能するのか。局在・発現と表現型の地図作りが先決。 MDPI

  2. モダリティ選択(M):小分子で機能増強? ペプチド投与? あるいはmRNA/遺伝子治療? IMM局在タンパク質はドラッガビリティのハードルが高い。

  3. ヒト外挿(H):ヒト褐色脂肪の可塑性と違いを踏まえた検証が必要(ヒトBATは成人人でも存在し、代謝・体温調節に寄与)。前臨床で代謝・安全性の両立をどう示すか。 ニューイングランド医学誌


8. リスクと限界—「小さいけれど複雑」

  • 種差:マウスでの効果がヒトにそのまま当てはまる保証はない。

  • 作用点の複合性:SLC35A4-MPは“構造保全”に寄与するが、具体的な分子相互作用や下流ネットワークは未解明部分が残る。

  • ドラッガビリティ:内側ミトコンドリア膜は薬剤投与のアクセスが難しく、創薬設計上の工夫が不可欠。
    これらは、今回の成果が“出発点”であることを示す。 Science.org


9. まとめ—「見過ごされた小さな鍵」

SLC35A4-MPは、ミトコンドリアというエネルギー工場の**“梁(はり)”**を支える小さな職人だった。肥満・老化・ミトコンドリア病という“難所”に挑むために、私たちは巨大なハンマーだけでなく、精密なレンチ=マイクロプロテインを手に取り始めている。次に必要なのはヒトデータと、IMMに届くモダリティだ。 Phys.orgSalk Institute for Biological Studies


参考記事

研究者たちがマウスの脂肪細胞における代謝健康を制御する新しいマイクロタンパク質を発見
出典: https://phys.org/news/2025-08-microprotein-metabolic-health-mouse-fat.html

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