「男の日傘元年」——5年で7倍に跳ね上がったメンズ日傘市場と“抵抗感”を超える次の常識

「男の日傘元年」——5年で7倍に跳ね上がったメンズ日傘市場と“抵抗感”を超える次の常識

1 “恥ずかしい”から“命を守るギア”へ

かつて日本の街角で日傘といえば女性用の華奢なレース張り──そんな固定観念が崩れたのは、2018年夏の猛暑以降だ。気象庁統計では2018〜24年に35 ℃超の真夏日発生日数が平均30%増加し、東京都内の熱中症搬送者は約1.6倍に膨張した【環境省速報値】。体調管理の切り札として日傘に注目が集まったが、男性は“抵抗感”を口にして手を伸ばせずにいた。

転機は2019年、流通大手イオンが男性専用売場を設けたことだった。プライベートブランド「トップバリュ」でユニセックスな黒・紺を投入し、売上は5年で約7倍へ急伸したという。ライブドアニュース流通ニュース

2 数字で読み解くメンズ日傘市場

  • 市場規模: 国内傘市場1,500億円のうち日傘は400億円。男性向けはまだ10%弱だが成長率は年25%以上。

  • 販売本数: ワールドパーティー「Wpc. IZA」シリーズ累計140万本(2025年3月末時点)。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES

  • 気温相関: 平均気温が前年より+1 ℃になると日傘販売は15〜18%増加する(メーカー調査)。

  • 価格帯: 3,000〜6,000円がボリュームゾーン。高機能モデルは1万円超も。

3 ヒットの背景——4つの時代要因

  1. 猛暑の常態化:IPCC第6次報告書が警告する極端高温日の倍増見通しが、買い控え心理を崩した。

  2. 健康志向の高まり:紫外線による皮膚がん・白内障リスク啓発が男性にも波及。

  3. ジェンダーレス化:Z世代男性の42%が「日傘は性別を問わない」と回答(博報堂2024年調査)。

  4. ワークスタイル変革:リモート明けで外出再増。ビジネスシーンでの“涼しげ演出”が評価指標に。

4 主要ブランド最前線

ブランド特徴主な価格主力機能
Wpc. IZAメンズ専用設計。耐風骨+完全遮光3,500〜5,500円遮光率100%、UPF50+
トップバリュ(イオン)GMSならではの低価格と在庫力2,980〜4,378円自動開閉、防水撥水5級
LOGOS SOLAR BLOCKアウトドア技術を転用4,000〜6,000円テント素材で耐水圧5,000 mm
KiUフェス好き若者に人気3,000〜4,500円軽量カーボン骨、シームレス印刷
Sa傘(テレビ東京特集)車の乗降に最適化5,000円前後逆折り構造、撥水ナノコート

(※価格は税込参考。2025年7月現在)トラベル WatchTVでた蔵流通ニュース

5 技術革新で“ガジェット”化する日傘

  • 素材進化:裏面PU多層コーティングで表面温度−15 ℃。

  • 骨組み:高弾性グラスファイバー+形状記憶合金により風速20 m/sでも形状復元。

  • IoT連携:BLE温度センサー付きハンドルがスマホに熱中症アラートを送る実証テスト(Wpc. Lab)。

  • 環境配慮:再生ポリエステル生地、バイオマス樹脂ハンドル採用モデルが登場。

6 マーケティング戦略——“傘をさす男はカッコいい”

ワールドパーティーは21年のブランド立ち上げから俳優・窪田正孝、モデル・今田美桜らを起用し、TVCM・SNSで「This is COOL」を訴求。広告投下量は前年比180%増とされる。アドタイ さらにインフルエンサーと協業した「#日陰を持ち歩こう」ハッシュタグ企画はTikTok再生数2.3億回を突破。イオンは店頭POPで日焼け後肌温度のサーモグラフィ比較を掲示し、“機能値”を可視化した。

7 行政と社会の追い風

国土交通省の2024年「路面温度抑制」指針では、日傘を含む遮熱対策が列挙され、東京都はビジネス街で日傘シェアリング実証を実施。貸出し総数のうち4割が男性利用だった。自治体の熱中症予防リーフレットにも男性が傘を差すイラストが採用され、心理的ハードルを下げている。

8 海外の“男傘”事情

台湾では政府高温警報時に男女問わず日傘推奨。韓国ではK-POPアイドルが白い日傘を愛用し、若年層に浸透。欧州ではパリ五輪を控え、フランス気象庁が“UV parapluie”運動を展開。国際比較から見ても、日本の男性日傘市場は後発ながらキャッチアップが早い。

9 購入ガイド:失敗しない5つのチェックポイント

  1. 遮光率は99 %以上か

  2. 骨の材質と耐風試験値

  3. 重量は300 g以下が携行しやすい

  4. 収納時の長さ(出張用バッグに入るか)

  5. 開閉方式とワンプッシュ安全構造

10 ビジネスチャンスと課題

  • 小売:メンズコーナーの平米効率はレディース比140%。

  • メーカー:秋冬の閑散期に“遮光+防寒”両用モデルで通期販売を狙う動き。

  • 課題:供給が追いつかず夏本番に欠品が続出。加えて折りたたみ機構の修理インフラが未整備。

11 今後の展望

専門家は「2028年にはメンズ日傘比率が市場全体の25%に達する」と予測。街の風景は“男も日傘”が当たり前になり、ファッションとしての差別化が次のテーマになるだろう。そのとき“抵抗感”という言葉は辞書から消えているかもしれない。


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