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ビールの「おいしさ」をAIで設計へ――キリン独自AIが成分を見つけ、味づくりを提案する時代

ビールの「おいしさ」をAIで設計へ――キリン独自AIが成分を見つけ、味づくりを提案する時代

2025年12月13日 15:15

1. 何が起きている?――「味の設計」に踏み込むAI活用

キリンホールディングスは、独自開発したAIをビール造りに本格活用し、狙った味わいに向けて「どの成分をどう動かすべきか」を提案できる状態を目指している。 沖縄タイムス+プラス+1

ポイントは、AIが“レシピを自動生成する”というよりも、おいしさを構成する要因を分解し、改善の当たりを付けることにある。


従来、ビールの味づくりは、分析機器で成分を測っても「その数値が、飲んだときの印象にどう効いているか」を結び付けるのが難しく、最終的には開発者の経験と試作の積み重ねで詰めていく部分が大きかった。 沖縄タイムス+プラス+1

キリンはこの“最後の難所”に、データとAIで切り込む。



2. 独自AI「FJWLA(フジワラ)」とは何か

今回の核となるのが、独自AI 「FJWLA(フジワラ)」。

キリンが蓄積してきた成分データと、サンプルを試飲してもらう**消費者調査(約20年分)**の結果を基に開発されたとされる。 沖縄タイムス+プラス+1


このAIによって、

  • どの成分が

  • どのように

  • おいしさ(苦み、コク、香りなどの評価)へ寄与しているか
    を定量化できるようにした、というのが報じられている。 沖縄タイムス+プラス+1


さらに、新商品開発で「苦みに課題がある」といったケースでは、AIが改善につながる成分の選択肢を示し、実際の比較試飲でもAI活用の方が高評価だった、とも伝えられている(報道ベース)。 下野新聞デジタル

そして成果は、2026年3月以降に発売するビールから順次反映していく方針だ。 沖縄タイムス+プラス+1



3. そもそもビールの「おいしさ」はなぜ難しいのか

ビールは、原料(麦芽・ホップ・水)と酵母、そして工程条件(温度、時間、酸素、熟成など)の相互作用で、膨大な化学成分の集合体になる。


たとえば苦みひとつ取っても、ホップ由来のα酸が煮沸で異性化して生まれるイソα酸が主要因であることが知られている。 PMC+1

香りについても、酵母やホップが生み出すエステル類や高級アルコール類などが、フルーティー/フローラルな印象を左右する。 PMC+1


ここで厄介なのは、

  • 成分Aが増えると良くなるが、成分Bが同時に高いと悪くなる

  • ある成分は「香り」には効くが「後味」では逆効果になる

  • 飲む温度や炭酸感で、同じ成分でも感じ方が変わる
    といった “組み合わせの問題” が支配的なことだ。


つまり「何を上げ下げすれば狙いの印象になるか」が、単純な足し算引き算になりにくい。



4. FJWLAは何を“提案”するのか――現場の使いどころを想像する

報道の表現を整理すると、FJWLAは次のような役割を担うと考えられる。 沖縄タイムス+プラス+1



4-1. 課題の言語化:官能評価を「成分の問題」に翻訳する

開発現場でよく起きるのが、
「苦みが立ちすぎる」
「コクが薄い」
「香りの立ち上がりが弱い」
といった“感想”を、どう設計変数に落とすか問題。

FJWLAは、この感想を起点に「寄与が大きい成分」「触るべきバランス」を提示し、議論の出発点を作る。



4-2. 打ち手の候補出し:試作の迷路を短くする

「ここを変えたら良さそう」という仮説が1つ増えるだけでも、試作回数や比較の設計が変わる。

AIが、改善につながる成分の選択肢を示す、という報道はまさにここで、試作の探索空間を狭める効果が期待される。 下野新聞デジタル



4-3. 属人性の低減:経験を“型”にする

味づくりはどうしても匠の領域が残る。
ただ、判断の理由や着眼点が共有されないと、チームとして再現できない。

FJWLAが「なぜそれが効くのか」を説明できる形(説明可能性)を伴えば、技能伝承にも近づく。



5. キリンのAI活用は“今回が初めて”ではない

実はキリンは以前から、ビール領域でAIを使った基盤づくりを進めている。



5-1. 「Brewing Takumi AI」――狙った味からレシピを逆算する発想

キリンは、機械学習を用いたビール開発支援「Brewing Takumi AI」に、狙いの味(数値指標)から逆算してレシピ候補を出す機能を追加したと発表している。 KIRIN - Kirin Holdings Company, Limited

この発表では、最終的に人間の五感が必要である一方、AIが候補を広げ、開発効率や技能継承に寄与しうる、という考え方が示されている。 KIRIN - Kirin Holdings Company, Limited



5-2. 工場計画へのAI導入――“生産の頭脳”もAIで支援

またキリンビールは、仕込・発酵工程の計画(仕込・酵母計画)をAIで自動立案するシステムをNTTデータと共同開発し、全9工場で試験運用、年間1,000時間以上の時間創出見込みなどを公表している。 KIRIN - Kirin Holdings Company, Limited+1


ここから見えるのは、

  • 研究開発(レシピ、味づくり)

  • 生産計画(仕込・発酵の段取り)
    という“両輪”でAIの実装経験を積んできたこと。


FJWLAは、その延長線上で「官能×成分×消費者評価」を束ね、次の段階に進める試みと言える。



6. 「20年分の消費者調査」をAIに食べさせる意味

FJWLAの肝は、成分データだけでなく、飲んだ人の評価データを長期で持っている点にある。 沖縄タイムス+プラス+1

ビールの評価は、専門家の官能評価(訓練パネル)と一般消費者の嗜好(好き嫌い)が必ずしも一致しない。


だからこそ、消費者調査が厚いほど、

  • どの層が

  • どういう香味の変化を

  • “おいしい”と感じるか
    の地図が描ける。

そしてその地図が、成分の動きと結び付くと、「狙う顧客価値」から逆算した設計がしやすくなる。



7. いつ、どこに反映される?――2026年3月以降の発売品から

報道によれば、FJWLAの成果は2026年3月以降に売り出すビールから順次反映される。 沖縄タイムス+プラス+1


ここで“順次”が重要で、いきなり主力の味を劇的に変えるというより、

  • 新商品

  • 限定品

  • リニューアル

  • あるいは設計思想の一部(香りの立ち上がり、後味のキレ等)
    から適用されていく可能性が高い。


また、味の領域でAIを使う際に現場が慎重になるのは、わずかな差がブランドの継続性に影響しうるからだ。
「AIが正しい」ではなく、「AIの提案を、人が責任を持って採用する」運用が前提になる。



8. メリットは“速さ”だけじゃない――品質と再現性の話

8-1. 試作回数の圧縮=開発スピードの向上

「当たりを付ける」ことができれば、試作→評価→調整のループが短くなる。

新商品を出すたびに必要な試作回数が減れば、開発のスループットは上がる。



8-2. 品質の安定に寄与する可能性

味のぶれは、工程のばらつきだけでなく、設計側が“どこを守るべきか”を明確にできていない時にも起きる。

寄与の大きい成分やバランスが見えてくれば、品質管理の優先順位付け(どこを厳しく見るか)も合理化できる。



8-3. 人材育成:勘の言語化と共通言語づくり

キリンが「人にしかできない価値創造へ時間を振り向ける」タイプのDXを語ってきたのと同じく、 KIRIN - Kirin Holdings Company, Limited+1
“属人化しやすい領域”をAIで支援することは、技能継承の面でも意味が大きい。



9. ただし課題もある――味覚AIが抱える落とし穴

9-1. データの偏り(バイアス)

20年分の調査が強みである一方、

  • 調査設計が時代で変わっていないか

  • サンプルの地域・年代・飲酒習慣が偏っていないか

  • 市場トレンド(低アル・クラフト志向)の変化をどう扱うか
    が重要になる。

古いデータが悪いのではなく、時代差をモデルがどう学習するかが難しい。



9-2. 説明可能性:なぜその提案なのか

現場が使い続けるには「この成分をこう動かすと、なぜ改善するのか」が納得できる必要がある。
ブラックボックスのままだと、採用できる範囲は限定されがちだ。



9-3. “数値化できないおいしさ”の扱い

キリン自身も、良いビールは数字だけでは表せず、最終的には人の五感が必要だという趣旨を述べている。 KIRIN - Kirin Holdings Company, Limited

ここは本質で、AIはあくまで意思決定の補助。
最後の「これで出す」を決めるのは人間である。



10. 今後の展望――ビール開発は「感性×データ」の共同作業へ

FJWLAのニュースは、食品・飲料のAI活用が“工場の効率化”から“感性価値の設計”へ広がっている象徴的な例だ。 沖縄タイムス+プラス+1

キリンは、レシピ推論(Brewing Takumi AI)や生産計画AI(仕込・酵母計画)など、既に複数のAI実装を積み上げている。 KIRIN - Kirin Holdings Company, Limited+1

さらにグループ全体でも生成AI活用を進め、社内利用率が70%に到達したとする発信もある。 KIRIN

こうした“社内のAI前提化”が、R&Dの官能領域にまで波及してきた、という見方もできる。



まとめ

  • キリンは独自AI「FJWLA(フジワラ)」で、成分データと約20年分の消費者調査を結び付け、“おいしさ”への寄与を定量化し、味づくりの選択肢を提案する。 沖縄タイムス+プラス+1

  • 2026年3月以降に発売するビールから順次反映予定。 沖縄タイムス+プラス+1

  • すでにキリンはレシピ推論AIや工場計画AIなどの実装経験があり、FJWLAは“感性領域の設計”へ踏み込む動きといえる。 KIRIN - Kirin Holdings Company, Limited+1

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