「満月で眠れない」の正体 ― 神経内科医が解く“月と睡眠”の科学:満月前に起きる小さな睡眠変化のメカニズム

「満月で眠れない」の正体 ― 神経内科医が解く“月と睡眠”の科学:満月前に起きる小さな睡眠変化のメカニズム

「満月の夜は眠れない」。救急や警察の現場で語り継がれてきた“月夜伝説”は、2025年秋のスーパームーンでも再燃しました。では、科学は何と言っているのか。米ピッツバーグ大学の神経内科医・睡眠専門医が解説した記事をベースに、最新研究とSNSの反応を束ねて“ほんとう”を整理します。メディカルエクスプレス


結論の先取り:影響は「ゼロではないが、小さい」

満月前の数日(夕方~宵に月光が最も強いタイミング)は、平均で就寝時刻が遅くなり、総睡眠時間が15~30分ほど短く、深い睡眠もわずかに減るという傾向が複数研究で示されています。主因は“光”です。夜間の光は体内時計を後ろ倒し、メラトニン分泌を抑え、脳を覚醒方向へ振るからです。影響は電灯の少ない環境ほど強く出やすい一方、市街地では小さくとどまります。メディカルエクスプレス


この「満月前に就寝が遅れ短くなる」というパターンは、都市部/農村部や複数文化圏で確認されました(人類の睡眠が29.5日の月周期とゆるく同調している可能性)。代表的には、月齢と睡眠の同期を示した2021年のScience Advances論文です。Science.org


男女差は?――“男性の方が崩れやすい”示唆も

スウェーデン・ウプサラ大学の大規模ポリグラフ研究では、満ちていく「上弦→満月」期に男性の睡眠効率低下・中途覚醒増加が見られたと報告。女性の影響は小さめでした(観察研究で因果は未確定)。サイエンスダイレクト


メンタルヘルスとの関係――“月”ではなく“睡眠不足”が媒介

睡眠不足が不安や抑うつ、双極性障害の再燃、統合失調症の増悪リスクを高めることは確立しています。満月前の“わずかな睡眠の欠損”が脆弱な人々には増幅され得る、というのが専門医の見立てです。ただし、月齢と精神科救急や入退院の増減を大規模データで安定して結びつける証拠は弱い――インドや中国の一部研究で局所的な小さな差が示唆される程度で、世界的な一貫性はありません。メディカルエクスプレス


「引力」「地磁気」は説明にならない

月の潮汐力は海を動かすには十分でも、人間個体の生理に影響するには桁違いに弱く、地磁気や気圧の月周期変化も一貫した効果は示せていません。最も説明力が高いのは「夜の光曝露」です。メディカルエクスプレス


デイライト・セービングと月――教訓は「夜の明るさを減らす」

満月の影響は小さい一方、サマータイムの“人工的な長い夕方の明るさ”は、睡眠を遅らせ事故や心血管イベントの増加と関連するなど、はるかに大きな影響を及ぼします。結局のところ現代人の睡眠を最も乱すのは空の月ではなく「手の中の光(画面)」です。メディカルエクスプレス



SNSはどう反応したか(要点)

  • 拡散の広がり:The Conversation配信の同記事は、Chicago TribuneやSeattlePI、Yahoo! Newsなどに転載され、X(旧Twitter)やThreadsで共有が進みました。Seattle Post-Intelligencer

  • 体験談の波:「満月前はやっぱり寝付けない」「子どもが興奮気味」という実感派と、「いや、それはスマホのせい」「カフェイン/残業が原因では?」という懐疑派が並走。IGでは「満月で睡眠が悪化する決定的証拠は薄い」とする投稿も拡散しました。Instagram

  • “写真勢”の盛り上がり:議論とは別に、満月やスーパームーンの写真投稿がRedditやXで伸び、科学解説記事へのリンクと共存。関心は“眠り”だけでなく“鑑賞”にも二極化しました。Reddit

注:X/Threadsの個別リプライ数や賛否の比率はプラットフォーム制限で精査不能のため、上記は投稿内容の代表的傾向を要約しています(記事転載元と公式アカウントの投稿リンクを提示)。X (formerly Twitter)

 



実務ヒント:満月ウィークの睡眠を守る5手

  1. 就寝90分前から減光:室内照度を落とし、間接照明に。

  2. スクリーン断ち:就寝1時間前は画面を閉じ、どうしても使うなら夜間モード+距離をとる。

  3. 遮光の工夫:カーテンを二重にする、アイマスクを活用(屋外やキャンプでは特に有効)。

  4. 同じ時刻に寝て起きる:体内時計の“しぶとさ”が微弱な月効果を呑み込みます。

  5. 不調が続くなら専門医へ:いびきや日中の強い眠気、気分の波が強い場合は受診を。
    (根拠:夜間光が睡眠遅延とメラトニン低下を招くという生理メカニズムと専門医の解説)メディカルエクスプレス


研究メモ:代表的エビデンスの位置づけ

  • 月齢と睡眠の同期(前満月で短く遅い):Science Advances(2021)ほか。Science.org

  • 男女差の示唆:Science of the Total Environment(2021/2022)で男性の影響が相対的に大きい可能性。サイエンスダイレクト

  • 室内実験の古典的結果(深睡眠30%減/入眠5分遅延/総睡眠-20分):Current Biology(2013)。解釈には議論もあるが“光”仮説と整合。Cell


まとめ

満月は“まったく影響なし”ではないものの、その規模は小さく、私たちの睡眠を揺らす主犯は月光よりも夜間の人工光です。とはいえ、脆弱性の高い人(思春期、気分障害、てんかんなど)では“わずかなズレ”が不調の引き金になることも。満月ウィークは、減光・減スクリーン・起床時刻固定――この3点だけでも十分に“効く”セルフケアになります。メディカルエクスプレス


参考記事

満月は私たちの眠りを妨げるのか?神経学者が睡眠、気分、月にまつわる神話の科学を解説
出典: https://www.chicagotribune.com/2025/10/26/does-the-full-moon-make-us-sleepless-a-neurologist-explains-the-science-behind-sleep-mood-and-lunar-myths/