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冬になると“脳が縮む”トガリネズミ — 可逆的な脳縮小が示す神経再生の道筋

冬になると“脳が縮む”トガリネズミ — 可逆的な脳縮小が示す神経再生の道筋

2025年09月03日 00:28

1)「冬に小さく、春に戻る」——70年越しの謎に“水”で迫る

北半球の厳しい冬を生き延びる小型哺乳類・トガリネズミは、体だけでなく脳まで季節に合わせてサイズを変える。このデーネル現象は古くから知られていたが、どうやって脳が壊れずに縮み、また元に戻るのかは長年の謎だった。最新の国際共同研究は、野外で個体を夏と冬に繰り返し捕獲してMRIで生体スキャンし、同じ個体の脳内微細構造の季節差を追跡。さらに顕微鏡レベルの細胞解析を組み合わせ、**脳体積の約9%減少は細胞数の減少ではなく、細胞内水分の減少(脱水)**で説明できると示した。


2)細胞は死なず、むしろ“詰め替え”が起きている

一般に細胞の脱水はダメージや細胞死に直結しがちだ。しかしトガリネズミでは、細胞は生きたままで、局所的には細胞数が増える所見も得られた。MRIの拡散指標(平均拡散係数の上昇や異方性の低下)からは、細胞内の水が減り、細胞外に相対的に水が増えるという水バランスの反転が読み取れる。結果として、脳は“薄く小さく”なるが、配線や機能を致命的に損なわずに冬の省エネモードへと切り替えているらしい。


3)領域ごとの“優先配分”:新皮質と小脳は例外的に守られる

縮小は一様ではない。多くの領域で水バランスのシフトが見られる一方、新皮質や小脳では水の出入りが比較的安定で、記憶や運動制御に関わる要所の“暖房”は落とさないように見える。家のエネルギー管理になぞらえるなら、「必要な部屋は暖かく、その他は節電」。この不均一な縮小こそが、小さくなった脳でも狩りや探索をやり抜く鍵だ。


4)分子の手掛かり:アクアポリン4(AQP4)

AQP4は脳のアストロサイトに豊富な水チャネルで、水の出入りを高速に制御する。今回の解析では、季節変化に伴う水輸送の中心選手としてAQP4が浮上した。ヒトの神経変性疾患でもAQP4の異常が報告されており、“水の経路”に介入する発想が、将来の治療戦略につながる可能性がある。


5)ヒトの脳にもヒントはあるが、“誤読”は禁物

研究チームは、トガリネズミの冬脳が見かけ上、ヒトの神経変性疾患の脳と似た特徴(体積減少や水分移動の所見)を示すと指摘する。重要なのは、トガリネズミではこの変化が可逆であり、春に回復する点だ。したがって**“ヒトでも季節で脳が9%縮む”という話ではない。むしろ「壊さずに縮め、また戻す」生理学的プログラムが存在するなら、そのスイッチや回路**を突き止めることが、不可逆な萎縮を食い止める道につながるかもしれない。


6)なぜ縮めるのか:エネルギー・水・危険の三角形

トガリネズミは数時間食べないだけで命取りになるほど代謝が高い。冬は餌が乏しく、脳は大食いな臓器だ。そこで**「体積と水を削って全体の維持コストを下げる」**のが合理的だと考えられる。ただし、水の出し入れは脳浮腫や脱水と紙一重。精密な制御の裏付けがなければ、機能破綻に直結する。今回の“水抜き”モデルは、エネルギー節約と神経保護の微妙なバランスを浮き彫りにする。


7)社会の反応:驚き、誤解、そして研究への期待(SNSから)

今回の報道を受け、SNSでは大きく三つの反応が見られた。

  • 驚き系:「脳が縮むのに普通に狩りできるのすごい」「生き物の可塑性は想像以上」。ミーム化して**「冬の自分の脳もこれ」**と自虐する投稿も多い。

  • 誤解・不安系:「ヒトでも季節で脳が9%縮むの?」「脱水は危険では?」といった混同。ここへのファクトチェックとして、対象はトガリネズミでありヒトではない、縮小は可逆かつ調整された生理現象という点が繰り返し共有された。

  • 応用期待系:「AQP4に介入できれば脳萎縮を止められるのか」「春の再成長フェーズの解明に注目」といった医療応用への期待。神経科学のコミュニティアカウントからも、拡散MRI(DMI)で読み解いた水の動態に注目する解説が出ている。 (例:研究を紹介する解説記事やスレッド投稿、Threadsの拡散投稿など)


8)限界と次の一手

  • 種限定性:観察された機構はトガリネズミ(主にヨーロッパの種)で検証されたもの。哺乳類一般やヒトにそのままは当てはめられない。

  • 季節と環境:寒冷や餌の乏しさなど複合要因の影響を分離する必要がある。

  • 再成長の謎:**春の「巻き戻し」**はどう起こるのか。神経新生、シナプス再配線、グリアの体積調節など多段のプロセスの寄与を切り分けることが今後の焦点。

  • 介入可能性:AQP4など水輸送の経路をいじることがヒトの神経変性疾患で有効かは未知。安全域の見極めが必須だ。


9)何が“新しい”のか(本研究のキモ)

  1. 非侵襲MRIで同一個体の季節変化を追跡し、細胞死ではなく水の移動で説明できると示した。

  2. 領域ごとの水バランスの非対称性(新皮質・小脳は比較的安定)を描き出し、機能温存の戦略を示唆した。

  3. AQP4をはじめとする分子プレイヤーに注目が集まり、再成長フェーズの分子設計図探索の出発点を与えた。


10)実務者向けまとめ(研究・医療・サイエンスコミュニケーション)

  • 研究者へ:DMIのパラメトリックマップ(MD/FA など)と免疫染色・トランスクリプトームの統合で、水代謝—細胞体積—機能の因果パスを詰めるべし。

  • 医療者へ:ヒト疾患の「見かけ上の萎縮」≠不可逆の可能性を、水代謝という視点で再評価。とはいえ臨床への短絡は禁物。

  • 広報・記者へ:「ヒトで季節に脳が縮む」ではない/「トガリネズミの省エネ戦略」という見出しの作法が誤解防止に有効。



用語ミニガイド

  • デーネル現象(Dehnel’s phenomenon):冬季に脳や頭蓋、臓器が縮小し、春に可逆的に戻る季節適応。

  • 拡散マイクロストラクチャイメージング(DMI):水分子の拡散挙動から細胞サイズや水分分布の変化を推定するMRI手法。

  • アクアポリン4(AQP4):脳の水チャネル。アストロサイトの終足に多く、水の高速移動に関与。


参考記事

MRI研究により、トガリネズミにおける珍しい季節性の脳の縮小は、細胞死ではなく水分の喪失によって引き起こされることが明らかになりました。
出典: https://phys.org/news/2025-08-rare-seasonal-brain-shrinkage-shrews.html

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