トランプ氏、スペインへの関税を2倍に!? 関税のハンマー再び：トランプ vs. スペイン、EU 通商戦線の最前線

1. ハーグが揺れた 60 秒――発言の瞬間

6 月 25 日、NATO 首脳会議の共同記者会見でトランプ大統領はスペイン首相ペドロ・サンチェスを名指しし、「君たちは唯一 5% を払わない国だ。ならば貿易で 2 倍払ってもらう」と語気を強めたndtvprofit.com。米大統領の脅しは会場を一瞬凍りつかせただけでなく、ライヴ配信を通じて世界中のマーケットにも電流を流した。

2. NATO「5% ルール」とスペインの拒否

今回の首脳会議では、ロシアの長期的脅威と中東・極東シフトを理由に、国防費を 2035 年までに GDP 比 5% へ引き上げる新枠組みが採択されたapnews.com。しかしスペインは社会保障との両立を理由に 2.1% での上限を主張し、「能力目標は達成できる」と譲らなかったelpais.com。

3. 市場の即時反応

トランプ発言直後、マドリード IBEX35 は下落幅を 1.5% に拡大し、欧州全体の STOXX600 も 0.6% 安を記録したndtvprofit.com。関税が現実化すれば、自動車・食品・観光を中心にスペイン企業の北米売上は大打撃を受けるとの見方が強い。

4. スペイン政府と EU の応酬

経済・通商相カルロス・クエルポは「対米交渉は欧州委員会の専権事項であり、二国間での譲歩はない」と即座に声明を出し、一歩も退かない姿勢を示したelpais.com。ブリュッセルも報復関税リスト（総額 950 億ユーロ）の更新を示唆し、「加盟国一丸で対抗する」と強調した。

5. 法的・制度的論点

米国が EU 加盟国だけを狙い撃ちする「国別関税」を導入する場合、WTO の最恵国待遇原則に抵触する可能性がある。一方、米国通商拡張法 232 条や国際緊急経済権限法（IEEPA）は安全保障を理由に大統領へ広範な裁量を与えており、トランプ政権は過去にも鉄鋼・アルミで同条項を乱用してきた経緯がある。

6. トランプ流「ハンマー外交」の系譜

2018 年の第一次政権期、フランスへのデジタル課税報復やカナダへの乳製品関税など、「要求→拒否→関税」というパターンは既に確立されていた。今回も同じ脚本で、国内向けには「強硬さ」を演出しつつ、最終的に 5～10% 程度の恒久関税を残すとの観測が強い。

7. SNS での炎上とミーム化

• Reddit／r/europe では「トランプはワントリック・ポニー。問題？関税。解決？関税」など皮肉が急上昇コメントにreddit.com。

• スペイン語圏 X（旧 Twitter）ではハッシュタグ #NATO5NoEsJusto がトレンド入りし、「教育費より戦車を買えと言うのか」といった反発が散見されたeleconomista.es。

• 米国内でも保守派から「関税でインフレを煽るな」との批判が増え、イーロン・マスクや JD・バンス副大統領の冷ややかな反応が報じられているpolitico.com。

8. 専門家が見る 3 つのシナリオ

（欧州シンクタンク Bruegel 試算を基に筆者作成）

9. スペイン国内政治への波紋

汚職疑惑で支持率が伸び悩むサンチェス首相にとって、「対トランプ強硬」は左派連立への求心力維持に不可欠とみられる。一方、保守野党・国民党（PP）は「国際信用を損ねた」と批判し、早期総選挙を要求している。

10. おわりに

トランプ大統領の関税カードは、NATO の「5% ルール」を事実上の“徴兵税”へ転化する狙いも透ける。関税と安全保障をパッケージ化する外交手法は、EU の内部結束を試すリトマス試験紙となるだろう。7 月 9 日の通商期限まで残された時間はわずか。スペインだけでなく、欧州全体が「次の一手」を急ピッチで探る夏になりそうだ。