体脂肪率が高いほど誤差が拡大? スマートウォッチ研究が突きつけた不都合な事実

体脂肪率が高いほど誤差が拡大? スマートウォッチ研究が突きつけた不都合な事実

腕に表示された「500kcal」は、測定値ではなく推定値

運動を終えた瞬間、スマートウォッチに「500kcal消費」と表示される。頑張りが数字になった達成感から、「これならデザートを食べても大丈夫」と考える人もいるだろう。しかし、その500kcalは体内で直接測った値ではない。心拍数、腕の動き、年齢、性別、身長、体重などを材料に、メーカー独自のアルゴリズムが算出した推定値だ。

この違いは、単なる言葉の問題ではない。表示を運動の目安として眺めるだけなら多少の誤差は許容できるが、減量中の摂取カロリーを決める「予算」として使えば、誤差がそのまま食事量のずれになる。新たな研究は、そのずれが機種によって異なるだけでなく、体脂肪率によっても広がる可能性を示した。


4つの人気モデルを“呼気ガス”と比較

フロリダ国際大学の研究チームが検証したのは、Apple Watch Series 8、Fitbit Sense 2、Samsung Galaxy Watch 5、Garmin Forerunner 955の4機種だ。対象は18〜50歳のヒスパニック系成人58人で、平均年齢は23歳。参加者はリカンベント式の自転車をこぎ、2分ごとに中強度と高強度を切り替える10分間の運動を行った。その前後には各5分間の安静・回復時間が設けられ、腕時計の運動モードはこの合計20分間作動していた。

基準になったのは、呼吸に含まれる酸素と二酸化炭素を分析してエネルギー消費を求めるCOSMED K5という代謝測定装置だ。手首から得た間接的な情報ではなく、呼気ガスから代謝を評価するため、研究室での比較基準として使われている。

研究チームは、腕時計の値から基準値を引いた「バイアス」、正負を問わず差の大きさを見る「絶対誤差」、基準値に対する誤差の割合である「絶対パーセント誤差」を調べた。ここを区別しないと、「平均では合っているのに、一人ひとりでは大きく外れる」という現象を見落としてしまう。


GarminとSamsungは過大評価、Appleは比較的小さなずれ

データ品質の基準を満たした測定を比較すると、平均バイアスはAppleがプラス21.6kcal、Garminがプラス68.6kcal、Samsungがプラス56.8kcalだった。つまり、この条件では3機種とも平均的には実際より多く表示し、とりわけGarminとSamsungの過大評価が大きかった。

Fitbitの平均バイアスはプラス3.1kcalで、一見すると最も優秀に見える。しかし、この数字だけで「Fitbitが正確」と結論づけることはできない。Fitbitでは基準値の450%を超えるなど不自然な値が7件発生し、これは同機種の試行のおよそ13%に当たる。これらを除外した後の平均がプラス3.1kcalであり、除外前では平均バイアスがプラス128.6kcalまで膨らんだ。値が出なかった測定もあった。

また、参加者の平均体脂肪率におけるモデル推定の絶対誤差は、Appleが約25.2kcal、Fitbitが約18.8kcal、Garminが約47.9kcal、Samsungが約41.0kcalだった。Fitbitの値が小さいのは、問題の大きな外れ値を除いた分析である点に注意が必要だ。研究全体では、典型的な絶対パーセント誤差の中央値が機種によりおおむね15〜25%だったと報告されている。

ただし、これは「Appleなら常に正確」「Garminはいつでも約70kcal多い」というランキングではない。対象モデル、短時間の自転車運動、参加者の属性という限られた条件で得られた結果だ。屋外ランニング、筋力トレーニング、日常生活、別世代の端末では結果が変わり得る。


体脂肪率が高いほど、全機種で誤差が増えた

今回の研究で最も注目されるのは、体脂肪率が高くなるにつれて、4ブランドすべてでカロリー推定の誤差が増えたことだ。誤差の増え方はブランドごとに異なり、パーセント誤差はFitbitとGarminでAppleより急に拡大し、絶対誤差ではGarminとSamsungの増加が目立った。

なぜ体脂肪率が影響するのかは、この実験だけでは断定できない。多くの腕時計は、皮膚に光を当てて血流変化を読む光学式心拍センサーと加速度センサーを組み合わせている。皮下組織の厚さや血流、運動中の軟部組織の動き、手首への密着度が信号に影響する可能性がある。さらに、アルゴリズムを学習・調整したデータに体格の多様性が十分含まれていなければ、特定の体型で誤差が大きくなることも考えられる。

一方、今回調べたフィッツパトリック分類III〜Vの範囲では、肌タイプと誤差の明確な関係は確認されなかった。ただし、最も色素の濃いV型は4人しかおらず、I、II、VI型は対象外だった。「肌の色は精度に影響しない」と一般化できる結果ではない。


見出しの「ダイエットに害」は、研究が直接証明したわけではない

重要な点がある。この研究が測ったのは運動中の消費エネルギー推定の精度であり、スマートウォッチを使った人が実際に太ったか、減量に失敗したかを追跡したわけではない。したがって、「スマートウォッチがダイエットを害する」と断言するのは一歩踏み込んだ解釈だ。

それでも、リスクの筋道は理解できる。たとえば、時計が消費量を多めに見積もり、その分を毎回そっくり食事で取り戻せば、本人が想定したカロリー赤字は小さくなる。誤差が同じ方向に積み重なれば、「計算上は減るはずなのに体重が動かない」ということが起こり得る。研究責任者も、表示を正確な数字として扱えば、週単位で数百kcalのずれになり、赤字のつもりが黒字になる可能性があると警告している。

逆に、誤差を恐れて食事を極端に減らすのも危険だ。回復や継続的な運動にはエネルギーが必要であり、表示が不正確だからといって大幅な摂取制限が正当化されるわけではない。問題は腕時計を使うこと自体ではなく、推定値を精密な会計数字のように扱うことにある。


SNSでは「やはり信用できない」と「自分には合う」が同居

この研究は2026年7月末に発表されたばかりで、公開検索で確認できた範囲では、研究そのものへのSNS上の反応はまだ限られている。そこで関連するユーザー投稿まで広げて見ると、議論は大きく三つに分かれる。

 

一つ目は、「絶対値は信用せず、目安として使う」という現実派だ。Apple Watchのカロリー表示に疑問を呈したRedditの投稿では、腕時計の数字を無視して体感を重視するという声や、胸部ストラップと併用しながら時計は一定の基準線として見るという意見があった。「ラボ以外では推定にすぎない」と割り切る姿勢は、研究者の提案とも重なる。

二つ目は、ブランドを替えた際の大きな差への戸惑いだ。Apple WatchからGarminへ移行したユーザーが、1日の表示で300〜400kcalほど差が出たと報告したスレッドでは、「Garminは自分の実測に近い」という人がいる一方、「自分の総消費量より約500kcal低い」という反対の体験談も出た。個人差が大きく、SNSの一例だけでは優劣を決められないことがよく分かる。

三つ目は、「比較している数字の定義が違うのでは」という指摘だ。Apple WatchとFitbitで778kcalの差が出たという投稿には、アクティブカロリーと基礎代謝を含む総消費カロリーを混同していないか、表示項目を確かめるべきだとの反応が寄せられた。同じ「消費カロリー」という言葉でも、アプリや端末によって対象範囲が異なる。ブランド間のスクリーンショット比較が、そのまま精度比較になるとは限らない。

また、「食事記録と体重変化を照合すると、自分の場合は時計の推定がかなり合っていた」という利用者もいる。これは十分あり得るが、個人の体験は統制された検証ではない。SNSは、誤差の多様さやユーザーの使い方を知る材料にはなるものの、母集団を代表する調査でも、製品ランキングの根拠でもない。今回の実験結果と矛盾するように見える体験談があること自体、絶対値より個人内の長期傾向を見るべき理由になる。


スマートウォッチをダイエットに生かす5つのルール

第一に、表示カロリーを「食べてよい追加分」と一対一で結びつけない。運動で表示された分を毎回100%食べ戻す方法は、過大評価が続く人には不利になる。ただし、一律に何割差し引くべきかを示す根拠も十分ではないため、極端な補正は避けたい。

第二に、体重、身長、年齢などのプロフィールを最新にし、運動内容に合うワークアウトモードを選ぶ。ベルトは手首の上でずれない程度に密着させ、センサーを清潔にする。メーカーも、装着状態、皮膚の血流、寒さ、タトゥー、手首を曲げ続ける運動などが心拍測定に影響すると説明している。更新や校正で改善できる部分はあるが、アルゴリズム固有の限界まで消えるわけではない。

第三に、異なる機種同士の数字を単純比較しない。同じ端末、同じ運動モード、似た条件で継続し、「先週より活動量が増えたか」という相対変化を見る。研究論文も、絶対値の精度が低くても、個人内の変化を追う用途まで否定されるわけではないとしている。

第四に、減量の判断は数週間の体重推移、食事記録、空腹感、運動パフォーマンスなど複数の情報で行う。日々の体重は水分で揺れるため、単日の増減より移動平均や週平均を見る方がよい。時計の数字は、その判断材料の一つにとどめる。

第五に、糖尿病などの持病がある人、医療目的でエネルギー管理をしている人、摂食障害の既往がある人は、ウェアラブルの表示だけで食事を増減せず、医師や管理栄養士に相談する。消費カロリー表示は医療機器による診断値ではない。


小規模・単一条件の研究であることも忘れない

研究の強みは、4機種を同じ参加者に装着し、呼気ガス分析と直接比較した点にある。一方で限界も多い。参加者は58人と小規模で、平均23歳のヒスパニック系成人に限られた。運動はリカンベント式自転車の1回だけで、日常生活や長期利用は検証していない。複数の端末を同時装着したため、ベルトの位置や密着に影響した可能性もある。

さらに、端末が利用者を長期的に学習・再調整する仕組みがあるとしても、1回の実験では評価できない。外れ値除外は事前に予定されていたが、具体的な数値基準はデータ確認時に確定され、Fitbitでは除外の影響が特に大きかった。調べたのも2022年前後の世代の端末であり、最新モデルや現在のソフトウェアに結果をそのまま当てはめることはできない。

それでも、過去の研究でも「心拍数は比較的測れても、エネルギー消費は難しい」と繰り返し報告されてきた。今回の結果は、問題が解消していないことに加え、体格によって誤差が偏る可能性を具体的に示した点で意味がある。


結論――数字を捨てるのではなく、役割を変える

スマートウォッチの価値は、カロリーの絶対値だけではない。運動時間を残し、心拍ゾーンを確認し、座りすぎに気づき、継続のきっかけをつくる道具としては有用だ。だから必要なのは、時計を外すことではなく、数字の役割を変えることである。

消費カロリーは「精算に使う金額」ではなく、「活動の大まかな方向を示す指標」と考える。同じ端末で長期傾向を追い、食事と体重の実測で現実を確かめる。腕に表示される数字に従うのではなく、数字を一つの材料として使いこなすことが、スマートウォッチと賢く付き合う最も現実的な方法だ。


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※SNS上の投稿は利用者個人の体験・意見であり、製品の精度を統計的に示す証拠ではない。本文では反応の傾向を紹介する目的で使用した。