熟年再婚×相続トラブルの落とし穴──義理親子間で増える「争続」と遺言検認のリアル

1. はじめに──「争続」という社会課題

「争続（そうぞく）」とは、相続に関する争いのこと。特に熟年再婚によって生まれる義理の親子関係では、血縁関係がないため感情的な対立に発展しやすくなります。こうした争いは単なる金銭の問題にとどまらず、家族間の信頼関係を崩壊させ、法的トラブルに発展するケースもあります。

2. データで見る熟年再婚と検認件数の増加

日本では熟年再婚が増加傾向にあります。70～74歳の男性の再婚件数は2000年の約800件から2020年には約1300件へ、女性も同様に増加しています。


それに伴い、自筆証書遺言の検認申立件数は2012年の14,996件から2021年には19,576件へと30％近く増加しています。これは高齢化と家族構成の複雑化が進んでいることを示しています。

3. ケーススタディ──義父の遺言トラブル

ある事例では、再婚した義父が遺言を自筆で残したにもかかわらず、前妻の子どもたちが遺言内容に納得せず、検認手続を家庭裁判所に申し立てました。遺言の内容が不明瞭であったため、遺産分割協議が難航し、最終的に弁護士を介した調停にまで発展しました。

4. 日本の相続制度の基礎

日本では法定相続人として、配偶者と子どもが中心です。再婚相手とその連れ子には法定相続権はなく、被相続人が遺言で明記していなければ相続はできません。また、自筆証書遺言には家庭裁判所による検認が必要であり、形式不備があると無効になることもあります。

5. 熟年再婚が抱える特有のリスク

熟年再婚では、相続以外にも介護、住居、年金、生命保険といった複数の問題が同時に発生することがあります。特に、配偶者が介護したにもかかわらず、前妻の子どもたちが相続を全て主張するといったケースが発生しています。

6. 海外のプロベート手続との比較

アメリカやヨーロッパでは、遺言検認（プロベート）制度は日本よりも発達しており、信託制度を利用して相続をスムーズに行う例が一般的です。共同名義財産やトラストにより、「争続」を未然に防ぐ仕組みがあります。

7. 争続を防ぐ５つの対策

1. 公正証書遺言の作成：検認不要で、法的効力が強い

2. 自筆証書遺言保管制度の活用：法務局に保管することで安全性が向上

3. 遺言執行者の指定：感情的な争いを避け、スムーズな執行を促進

4. 生命保険・信託の併用：確実に受取人へ資産を渡せる

5. 家族会議の定期開催：事前の意思共有でトラブルを防止
   
   
   
   

8. 専門家に聞く──弁護士・税理士のアドバイス

「相続で一番多いのは“感情的な対立”です。被相続人が明確な意思表示をしないと、必ず誰かが不満を持ちます。遺言の形式だけでなく、内容の丁寧な説明や家族への事前共有が重要です。」（弁護士）

「税制も変わる中、相続税対策を含めた資産管理が求められます。税理士との連携も忘れないでください。」（税理士）

9. まとめ──「円満な第二の人生」のために

熟年再婚は人生の再スタートである一方で、相続問題という深刻なリスクも伴います。義理の親子間での相続トラブルは、残された人々に深い傷を残すことも少なくありません。だからこそ、法的制度を正しく理解し、専門家の力を借りながら透明性の高い計画を立てることが、「争続」を防ぎ、家族の絆を守る鍵となります。

参考記事一覧

• 朝日新聞デジタル「熟年再婚で義理親子の『争続』が勃発　遺言トラブルで検認が増加」 (2025-06-21)asahi.com

• 裁判所「遺言書の検認」手続案内（サイトマップ）courts.go.jp

• 司法統計年報（令和5年版）家事事件統計「遺言検認申立件数」lawyers-kokoro.com

• 超高齢未来観測所「若年層は再婚件数が減少、高年齢層は微増」 (2025-05-30)ageingfuture.com

• 厚生労働省「人口動態統計月報年計（概数）の概況」令和6年版 (2025-05-30)mhlw.go.jp

• ベリーベスト法律事務所コラム「自筆証書遺言書は検認が必要！」 (2023-11-13)tennoji.vbest.jp