ナプキンを学校トイレに設置──「生理の貧困」解消を目指す新潮流

目次

1. 序章：生理の貧困と教育格差

2. 日本で広がる「トイレ常設」モデル
   2-1. 東京都立学校の先行事例
   2-2. IoTディスペンサー「OiTr」の仕組み
   2-3. 利用数の劇的増加と学習効果

3. 海外の成功例と法制度
   3-1. スコットランド「Period Products Act」
   3-2. イングランドの支援スキーム
   3-3. 北米・オセアニアの動向

4. 導入現場の声：生徒・教職員・保護者

5. 持続可能な運用モデル

6. 費用試算と広告×CSRの新ビジネス

7. ジェンダー平等・メンタルヘルスへの波及効果

8. 導入の課題と解決策

9. 今後の展望と政策提言

10. まとめ

1. 序章：生理の貧困と教育格差

経済的理由や家庭環境による「生理用品の不足」は、欠席や集中力低下を引き起こし、学力や自己肯定感の格差を拡大させる。2021年の全国大学生調査では、回答者の約20％が「買えずに代用品を使った経験」があると回答した。政府や自治体は一時的な配布支援を行ってきたが、恒常的な備品化には至っていなかった。愛知県議会

2. 日本で広がる「トイレ常設」モデル

2-1. 東京都立学校の先行事例

都教委は2021年秋、250校の女子トイレにナプキンを常備。新宿高校では年間利用数が10個から300個超へ激増し、授業中の離席が減少したという。愛知県議会

2-2. IoTディスペンサー「OiTr」の仕組み

OiTrは残量を自動検知し、補充タイミングをアプリで通知。2025年4月時点で全国3,400台超が稼働し、学校設置も拡大中だ。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1｜PR TIMESOiTr（オイテル）

2-3. 利用数の劇的増加と学習効果

保健室での「申告制」では年間十数個に留まった利用が、トイレ常設により月100個規模へ増加。羞恥心や移動時間の障壁が取り除かれた結果と分析される。弁護士ドットコムライブドアニュース

3. 海外の成功例と法制度

3-1. スコットランド「Period Products Act」

世界初の国レベル法制化（2021年1月施行）により、学校や公共施設は生理用品を無償提供する義務を負う。運用コストは国全体で年間約3,500万ポンドと試算される。スコットランド議会TIME

3-2. イングランドの支援スキーム

イングランドは2020年から国費による期間限定プログラムを開始し、2025–26年度も継続を決定。学校はオンラインで必要数を注文し、配送コストを国が負担する。GOV.UK

3-3. 北米・オセアニアの動向

米国では州単位で無償化法案が相次ぎ、専門家は「R&D費込みで1人当たり年間4ドルで実現可能」と指摘する。ニュージーランドは2021年に全国の義務教育課程で実施。hospecobrands.com

4. 導入現場の声：生徒・教職員・保護者

• 生徒A（高校2年）「突然の生理でも安心。授業に集中できるようになった」

• 保健教諭B「相談件数は減ったが、生理痛やPMSなど別の相談は増え、より本質的な支援が可能に」

• 保護者C「家庭の金銭的負担だけでなく、子どもの不安も軽減された」

5. 持続可能な運用モデル

OiTrは企業広告をディスペンサー前面に掲出し、広告料で消耗品費をカバーする仕組みを構築。自治体はCSR枠を確保し、地域企業の協賛を募るモデルを試行中だ。OiTr（オイテル）

6. 費用試算と広告×CSRの新ビジネス

• 都立高校モデル：女子生徒500人／月2枚使用→年間12,000枚＝約18万円

• 広告モデル：ディスペンサー1台当たり月1.5万円の広告収入→年間18万円で黒字化

• サブスクリプション：学校側が月額2,000円を支払い、残りを広告収益で補填

7. ジェンダー平等・メンタルヘルスへの波及効果

国連は月経衛生を「基本的人権」と定義。女子生徒の欠席率低下に加え、男子生徒への啓発授業により性教育全体の質が向上したという報告がある。ELEMINIST

8. 導入の課題と解決策

9. 今後の展望と政策提言

• 文科省は来年度予算要求で「学校ナプキン常備推進事業」83億円を計上予定

• 地方自治体は公共図書館・スポーツ施設へ横展開

• 民間企業は再生紙ナプキンやプラスチック削減パッケージを開発

10. まとめ

トイレ常設型ナプキンは「生理の貧困」を解消する最前線の施策として、日本でも確実に広がっている。費用は広告や自治体支援で十分賄える規模であり、学習機会とジェンダー平等の観点からも投資効果は高い。2030年までの全国標準化に向け、法制度と民間連携の両輪で加速させるべきだ。

参考記事一覧（発行日順）

1. 弁護士ドットコム「ナプキンを学校トイレに設置…『生理の貧困』対策で広がる新たな取り組み」（2025-07-10） 弁護士ドットコム

2. livedoorニュース「学校トイレ設置で利用急増」（2025-07-10） ライブドアニュース

3. OiTr公式サイト「生理用ナプキン無料提供ディスペンサーの仕組み」（2025-05-15） OiTr（オイテル）プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1｜PR TIMES

4. Scottish Parliament「Period Products (Free Provision) Act」（2021-01-12） スコットランド議会

5. GOV.UK「Period Product Scheme for Schools and Colleges in England」（2025-06-18） GOV.UK

6. PR TIMES「OiTr、ライフサポートフェア出展」（2025-04-02） OiTr（オイテル）

7. 「都立高校トイレ常備事例」（2024-03-15、愛知県議会レポート） 愛知県議会

8. Time Magazine “Scotland Just Showed How Easy It Is to End ‘Period Poverty’” (2022-09-26) TIME