韓国発!1秒で止血する魔法のスプレー、その技術の全貌とは?

韓国発!1秒で止血する魔法のスプレー、その技術の全貌とは?

出血は、命を奪うまでの時間がとにかく短い。交通事故、災害現場、刃物や転倒による深い裂傷──「止血が遅れた数分」が生死を分ける場面は、救急の現場に限らず日常にも潜んでいる。そうした“最初の数分”を丸ごと短縮してしまうかもしれない技術として、韓国の研究機関KAIST(韓国科学技術院)が発表した「粉末スプレー型の止血材」が話題になっている[1][2]。


1秒で起きること:粉末が血液で“形状追従ゲル”に変わる

報道によれば、この止血材は傷口に噴霧すると、血液に触れた瞬間に粉末がゲルへと変化し、出血部位を“封”のように塞ぐ。しかも反応は「1秒未満」レベルとされ、ガーゼや包帯を当てて圧迫する前の段階で、まず流出を止めにかかる発想だ[1][2]。


ポイントは、平たいシート(パッチ)ではなく粉末であること。深くえぐれた傷、ギザギザの裂傷、手が届きにくい箇所など、形が複雑な外傷に対して「形状に沿って埋まり、密着する」ことを狙っている[2][3]。


“AGCL”の中身:天然由来素材の組み合わせ

材料は、天然由来の成分を組み合わせた複合体として説明されている。報道・発表で共通して挙げられているのが次の3つだ[1][2][3]。

  • アルギン酸(Alginate):褐藻由来の多糖。

  • ジェランガム(Gellan gum):発酵由来の増粘多糖。

  • キトサン(Chitosan):甲殻類など由来の多糖で、血液成分との相互作用が期待される。


KAISTのニュースリリースでは、アルギン酸とジェランガムが血液中のカルシウムなどの陽イオンと反応して超高速ゲル化し、キトサンが血液成分と結合して化学的・生物学的な止血を補助する、という整理になっている[2]。つまり「吸って塞ぐ」だけではなく、血液の環境を利用して“固まる・貼り付く”を同時に起こす設計だ。


吸収して、塞いで、剥がれにくい:実用を意識した数値

研究発表・二次報道では、性能を示す指標としていくつかの数値が紹介されている。たとえば、粉末内部に三次元構造をつくることで自重の7倍超(約725%)の血液を吸収できるとされ、大量出血でも流れを遮断しやすいという[2][3]。


また、既存の市販止血材と比べて**高い封止性能や接着強度(40kPa超)**が言及され、手で強く押さえる程度の圧力にも耐えうるレベルを目指したと説明されている[2][3]。


さらに、動物実験においては組織再生の良好な所見や、肝臓損傷モデルで出血量・止血時間の低減、2週間での機能回復が述べられている[2][3]。こうした点は「止血だけで終わらず、創傷治癒にも寄与しうる」というストーリーを支える要素になっている。


“現場で使える”が勝負:保存性と環境耐性

救急・災害・戦場で重要なのは、性能だけではない。いつでも持ち出せ、すぐ使え、暑さ寒さや湿気に耐えることだ。KAIST側は、この粉末が常温・高湿度でも約2年間性能を維持するとし、過酷環境での運用を強く意識している[2]。InfoMoneyの記事でも「高温多湿でも有効性を保つ」「室温で2年保存」といった説明がまとめられている[1]。


ここがもし本当に強いなら、救急隊や軍のキットだけでなく、遠隔地の診療所、災害備蓄、さらには家庭用救急箱にも“将来入りうる”という想像が広がる。


ただし、すぐ市販…ではない:規制・追加試験という壁

一方で、現時点では「いつ発売されるのか」という問いに明確な答えはない。InfoMoneyは、一般向けの提供時期について公式な見通しは示されていないと伝えている[1]。


止血材は医療機器・医薬品としての位置づけや、用途(外傷・手術・軍用など)によって承認プロセスが変わり、臨床データの積み上げも必要になる。加えて、実運用では「大量出血の状況で誰がどう扱うか」「患部が見えない場合は?」「体内に入った場合の扱いは?」など、現場の手順設計も問われる。技術が“すごい”ほど、普及には医療と制度の側の準備が必要になる。


SNSの反応:期待とツッコミが同居する

この話題はニュースとして拡散され、SNSやコメント欄でも反応が分かれた。たとえばNew Atlasの記事コメント欄では、まず“欲しい”がストレートに出る。


Every first aid kit should have some!(救急箱に必ず入れるべき)」という声があり[4]、家庭用への期待がにじむ。


一方で、開発動機が戦場医療にあることから、価値観の衝突も起きる。研究者の発言(戦争での救命を意識)に対して、「You'd save a lot more lives with peace.(平和のほうがよほど命を救う)」と皮肉るコメントも見られた[4]。技術そのものを称賛しつつ、背景への複雑な感情が混ざるのが“ネットらしい”。


用途アイデアも飛ぶ。コメント欄には「衣服の下地に組み込めないか」といった妄想寄りの提案が書き込まれ[4]、危険環境での“自動止血”への期待が読み取れる。


その一方で、定番の懐疑やジョークもある。「ポテト粉でも同じ効果があるのでは」という体験談風の投稿があり[4]、新技術ニュースに必ず現れる“民間療法の小話”が顔を出すのも面白いところだ(もちろん、これはコメント投稿者の個人的主張として受け止めるべきだ)。


またLinkedInでは、比較的フォーマルな文脈で「救命のブレークスルー」として紹介され、保存性(2年)や吸収性能(7倍)など“使える技術”としての箇条書き共有が目立つ[5]。


ざっくり言えば、一般コメント欄は感情と雑談、ビジネスSNSは要点整理と期待。同じ話題でも、場によって盛り上がり方が変わる。


これは“魔法のスプレー”ではなく、救命の時間を買う道具

最後に強調したいのは、こうした止血材が目指すのは「治療を完結させること」ではなく、「病院に到達するまでの時間を買うこと」だという点だ。出血を止め、ショックを遅らせ、輸血や手術につなぐ──その橋渡しが速いほど、助かる確率は上がる。


もしAGCLのような“吹きかけて1秒”が臨床現場で確立されれば、救急の常識は変わる可能性がある。ただし、そのインパクトが大きいからこそ、追加試験と承認、運用設計、教育まで含めて、現実の道具として仕上げる工程が残っている。ニュースの熱狂の次に来るのは、地味で長い「実装」のフェーズだ。そこを越えたとき、この1秒は本当に、多くの命の“最初の1秒”になる。



出典URL

[1] InfoMoney(Agência O Globo配信)記事:開発主体(KAIST)、1秒未満で止血、素材(アルギン酸・ジェランガム・キトサン)、保存性(2年)、現時点で一般提供時期未定などの概要
https://www.infomoney.com.br/saude/cientistas-desenvolvem-spray-que-estanca-hemorragias-em-menos-de-um-segundo/

[2] KAIST News Center(公式リリース):粉末型止血材の狙い(戦場・災害等)、1秒でハイドロゲル障壁形成、カルシウム等陽イオン反応、吸収(7倍超)、安全性指標や動物実験の言及、保存性(2年)
https://news.kaist.ac.kr/newsen/html/news/?mng_no=56690&mode=V

[3] Medical Xpress(二次報道):研究内容の要点整理、吸収率(725%)、接着強度(40kPa超)、動物実験・肝臓損傷モデル、論文情報(Advanced Functional Materials/DOI言及)
https://medicalxpress.com/news/2025-12-sprayable-powder-instant-gel-barrier.html

[4] New Atlas(記事+コメント欄):一般読者の反応例(「救急箱に入れるべき」「平和のほうが命を救う」等のコメント)、材料や反応機構の一般向け説明
https://newatlas.com/medical-tech/battlefield-wound-spray/

[5] LinkedIn投稿(TEDxGateway):ビジネスSNS側での要点共有(1秒止血、7倍吸収、2年安定など)
https://www.linkedin.com/posts/tedxgateway_medicalinnovation-lifesavingtech-futureofmedicine-activity-7422243305968652288-5GKK