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“穴だらけ”が世界を救う?砂漠の空気から水を、生産ラインからCO₂を:ノーベル化学賞とメタル有機構造体

“穴だらけ”が世界を救う?砂漠の空気から水を、生産ラインからCO₂を:ノーベル化学賞とメタル有機構造体

2025年10月10日 00:10

2025年10月8日、ノーベル化学賞が“空洞を持つ結晶”——メタル有機構造体(MOF)の開拓者たちに贈られた。受賞者は京都大学の北川進、メルボルン大学のリチャード・ロブソン、カリフォルニア大学バークレー校のオマー・ヤギー。王立科学アカデミーは「化学が進むための“新しい部屋(rooms for chemistry)”を作り出した」と評価している。発表は10月8日、ストックホルムで行われた。NobelPrize.org


MOFとは、金属イオンを“柱”に、有機分子(リンカー)を“梁”として空間的に組み上げた結晶。特筆すべきは、内部に分子が出入りできるナノサイズの空洞が連なることだ。CO₂回収、ガス分離・貯蔵、水素貯蔵、砂漠の空気からの集水、触媒など、グリーン技術の“裏方”としての潜在力が飛び抜けている。NobelPrize.org


歴史をたどると、1980年代末にロブソンがフレーム状の結晶を示し、90年代にヤギーが溶媒を抜いても骨格が保持される“恒久的多孔性”を明瞭に示し、1997年には北川がガス吸着とそれに伴う骨格の伸縮というMOFらしさを鮮やかに描き出した。この積み重ねが「現代MOF化学の誕生」を決定づけた。Phys.org


メディアはその直感的な凄さを“ハーマイオニーのバッグ”に例える。角砂糖サイズのMOFにサッカー場級の表面積が詰まるという比喩は、一般読者にも空間の奇跡を伝える。応用はCO₂や有毒ガスの捕獲、PFAS除去、水の浄化、資源回収へと広がる。Reuters


SNSも祝福一色だ。ノーベル財団の公式Xは3氏の受賞を速報し、化学コミュニティのタイムラインが一斉にMOFで染まった。京都大学は会見を開き、北川は喜びと展望を語った。米国側でもUCバークレーや研究機関の公式アカウントが祝意を表明している。X (formerly Twitter) 京都大学


日本では、科学館や在外公館のアカウントも祝福を発信。「2025年の化学賞は北川進氏ら」と要点をわかりやすく伝える投稿が相次いだ。国内報道は「吉野彰以来6年ぶり9人目の化学賞」というトピックも強調。受賞理由を“ナノサイズの隙間を持つ物質の創出”と解説し、次世代エネルギー(特に水素)への期待を伝えた。X (formerly Twitter)

 



国際的には、ヤギーのバックグラウンドにも関心が集まった。ワシントン・ポストは、難民家庭に生まれた彼が学問の道を切り拓き、化学が人生を“美しいものづくり”から地球課題の解決へと接続していく過程を丁寧に報じている。こうした文脈はアラブ圏やディアスポラのコミュニティでも大きな誇りとなった。The Washington Post


受賞当日のエピソードも話題だ。APは、受賞連絡を“スパム電話”と勘違いして出損ねる——そんな“ノーベルあるある”を紹介。化学賞でも北川が最初は営業電話と思ったという小話が拡散し、思わず笑顔になる。AP News


もちろん、祝祭ムード一色というわけではない。Redditの化学クラスタでは「MOFは万能ではない」「ゼオライトが優れる場面もある」「産業スケールはまだ道半ば」といった実務的な視点も共有された。あるユーザーは「MOFは大好き。でも“何でもMOFでOK”という誇張は議論を曇らせる」と述べている。冷静な視点が、次の10年の課題を示す。Reddit


では、その課題とは何か。まずは耐久性や湿度下での安定性、粉体ハンドリングや成形、スケールアップ時のコストだ。学術コミュニティは既に“実装仕様”の議論を深めており、米化学会(ACS)は今回の受賞を歓迎しつつ、設計自由度の高さが実用材料設計の武器になると強調する。一方、Natureは“超スポンジ”としてのMOFがCO₂捕獲や選択的分離で鍵を握るとしつつ、産業応用ではプロセス全体の最適化が不可欠と指摘する。American Chemical Society


明るい話題も多い。日本国内では京都大学での会見が行われ、「挑戦を続けてきた研究が評価された」と北川が語った。メルボルン大学はロブソンの長年の貢献をたたえ、バークレーは“レティキュラー化学”がもたらした学際融合を発信。各拠点の広報が、研究者個人の歩みと材料の未来像を結び直す好機になった。リセマム


MOFは“分子のホテル”。客となる分子の種類やサイズに合わせ、部屋(空洞)の大きさや壁の性質を設計できる。だから、CO₂のような厄介な客を選んで捕まえたり、医薬分子をゆっくり放出する“時間管理”をしたりできる。スポンジのように吸うだけではない、“選択して働かせる”ところに、化学賞に値する新しさがある。NobelPrize.org


最後に、この受賞は“基礎から社会へ”の長い橋を照らす。結晶格子というミクロの世界に大空間をつくった発想が、電力・水・資源というマクロの課題と直結した。祝福と同時に、スケール化・コスト・耐久性という現実的ハードルも正面から語られている今こそ、大学・企業・政策が同じ地図を広げるタイミングだ。MOFがつくった「化学の新しい部屋」は、地球の新しい常識を生み出す作業部屋でもある。



参考記事

ノーベル化学賞が、グリーン技術を革新する可能性のある結晶材料に授与される
出典: https://phys.org/news/2025-10-nobel-chemistry-prize-awarded-crystal.html

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