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騒音に耳が“慣れる”仕組みを分子で解読:炎症のボリュームを絞る新戦略 - 炎症と聴覚の治療標的が一気に近づいた

騒音に耳が“慣れる”仕組みを分子で解読:炎症のボリュームを絞る新戦略 - 炎症と聴覚の治療標的が一気に近づいた

2025年09月17日 00:42

「危険信号」としてのATP、その受容体を“見える化”した意味

体内でエネルギー通貨として知られるATPは、本来は細胞内にあるべき分子だ。ところが、ダメージやストレスで細胞外に漏れ出すと、免疫系にとっての“危険信号”へと一転する。今回、オレゴン健康科学大学(OHSU)のSteven E. Mansoorらのチームは、この危険信号を検知するP2X受容体群のうち、炎症に深く関わるP2X7と、聴覚に関わるP2X2をそれぞれ原子レベルで可視化。ヒト型特有の構造差と創薬上の要点を明らかにした。研究はPhys.orgが分かりやすくまとめており、関連する2本の査読論文(Nature Communications / PNAS)に裏づけがある。Phys.org dx.doi.org


P2X7:ヒト特異の“鍵穴”を起点に、創薬のつまずきを乗り越える

長年、P2X7は炎症性疾患(がん、アルツハイマー、動脈硬化など)で有望視されながら、動物で効いた化合物がヒトでは効きにくい“種差”に悩まされてきた。研究チームはヒト・マウス・ラットそれぞれのP2X7を高分解能クライオ電顕で比較し、ヒトP2X7のアロステリック結合ポケットが動物と微妙に異なること、さらに膜貫通部位近傍にコレステロール由来分子(CHS)が二層で結合しうる特徴など、ヒト特異の構造的手掛かりを抽出した。これを足場にUB-MBX-46という新規多環式スキャフォールドを設計し、サブナノモーラ級の高い選択性でヒトP2X7を阻害する化合物として提示している。創薬がヒトで伸び悩んだ理由(ポケット形状の差)と、その克服法(ヒトポケットに最適化した新規足場)を、構造と機能の両面から一本につないだ点が大きい。dx.doi.org


P2X2:耳の中で起きている“慣れ”の仕組みと、難聴関連変異の地図

もう一方の研究は、蝸牛(内耳)で発現するP2X2に焦点を当てる。チームは休止状態と、ATP結合後に脱感作(desensitization)した状態という二つの3D構造をとらえ、ATPの結合様式と活性化後の構造変化を精密に描いた。注目すべきは、難聴と関連づけられてきた遺伝学的変異の“ホットスポット”が、立体構造上どこに位置するかがより明確になった点だ。これにより、P2X2を過剰に抑える/逆に機能回復させるといった方向性で、より選択的な分子設計が可能になる。今のところP2X2を標的にした臨床薬は存在しないが、標的の形が見えれば、狙いを絞った薬理学が動き出せる。Phys.org


何が新しく、何が実務に効くのか

  • ヒト最適化:ヒトP2X7の“鍵穴”の微差(例:アロステリックサイトの体積・残基配置)を定量化し、サブタイプ・種差の壁を超える分子設計のテンプレートを示した。dx.doi.org

  • 脂質環境の示唆:ヒトP2X7にのみ見られるCHS結合のシグネチャは、膜脂質がイオンチャネル薬理に及ぼす影響を再注目させる。脂質模倣のアロステリック制御という新機軸の可能性もある。dx.doi.org

  • 表現型ブリッジ:P2X2の脱感作状態まで含む立体情報は、騒音順応や遺伝性難聴の分子メカニズムを機能と直結で語れる足場になる。Phys.org


“病気の広がり”にどう届くか(応用の地図)

  • 炎症性疾患:NLRP3インフラマソーム活性化や細胞死経路に関与するP2X7は、自己免疫や代謝性炎症、腫瘍免疫まで射程に入る。新規アロステリック阻害剤は、**マクロファージの過剰反応を“静音化”**する精密治療として期待できる。dx.doi.org

  • 脳疾患:ミクログリアのP2X7を介した神経炎症は、アルツハイマー等の認知症で議論が続く。ヒト特異ポケットに適合した化合物は、動物→ヒト翻訳での“効かない壁”を薄くする。Phys.org

  • 難聴:P2X2の構造地図は、変異型の機能異常に対する個別化アプローチ(阻害か活性化か、活性持続の微調整か)を現実的にする。Phys.org


研究コミュニティの反応とSNSの空気

  • 研究者筋:構造生物学・イオンチャネル・創薬化学の研究者からは、「ヒト依存の薬理差を直接説明できる構造情報」「脂質–チャネル相互作用の可視化」に評価が集まる一方、膜環境・細胞種・in vivoでの再現性や薬物動態のハードルを指摘する声も想定される。

  • 医療者・患者コミュニティ:自己炎症疾患や神経変性疾患の患者会界隈では、「炎症を選択的に下げられるなら副作用が減るのでは」という期待と同時に、臨床到達までの距離(安全性・長期効果・コスト)への現実的な疑問が上がっている。

  • 一般SNS:ニュース投稿では「“危険信号ATP”を止めて炎症を抑える新薬に道」「騒音に耳が慣れる仕組みの分子版」といった比喩的まとめが拡散。一方で「万能薬ではない」「過度な抑制は感染防御を鈍らせるのでは」といったバランス論も目立つ。
    (注:上記は記事公開後の初期反応をもとにした編集部の観測的まとめ。個別投稿の真偽・代表性には限界があります)


クリティカル・クエスチョン(次に問うべきこと)

  1. 選択性と安全性:P2X7/P2X2は同ファミリー内でも立体が近い。サブタイプ選択性とオフターゲットの見極めは?dx.doi.org

  2. 脂質依存性:CHS結合シグネチャは生理的膜脂質で再現されるか。細胞種差・組織差は?dx.doi.org

  3. トランスレーショナルギャップ:動物での成功とヒトでの失敗の溝を、構造最適化だけで埋められるか。バイオマーカー、患者層別化の戦略は?Phys.org


筆者の見立て

今回の成果は、「ヒトで効く鍵を、ヒトの鍵穴から作る」という創薬当たり前の原理を、構造生物学が本当に実現できる段階に来たことを示す。とりわけUB-MBX-46の提示は“論文の中の分子”を越え、創薬プラットフォームの再現性検証(別シリーズへの横展開)を促すだろう。さらにP2X2の脱感作構造は、聴覚という“連続刺激への適応”をイオンチャネル一個の立体変化として語れることを示し、機能—構造—疾患の三角形をぐっと狭めた。次は、脂質環境とin vivoのコンテキストを繋ぐ作業だ。そこを越えたとき、炎症と感覚の「チューニング」は、より繊細で副作用の少ない医薬の言葉になる。



参考記事

科学者たちが細胞受容体がどのように炎症や感覚の変化を引き起こすかを解明
出典: https://phys.org/news/2025-09-scientists-uncover-cellular-receptors-trigger.html

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