Wi-Fiが遅いなら、契約変更の前に「ルーターの居場所」を疑ってみる

Wi-Fiが遅いなら、契約変更の前に「ルーターの居場所」を疑ってみる

家族が動画を見始めると、オンライン会議の声が途切れる。リビングでは快適なのに、寝室に移ると読み込みが終わらない。

こんなとき、最初に浮かぶのは「もっと速い回線に変えようか」という考えだろう。しかし、家の外から届いている通信と、家の中で端末まで届く通信は、別々に確かめる必要がある。

2026年9月30日、豪紙The Ageに掲載された「Simple ways to help improve your home Wi-Fi」は、その見落としを取り上げた。ルーターを置く位置や機器の状態によっては、契約プランを変えずに使い勝手を改善できるという内容だ。

なお、この記事はオーストラリアの通信網を担うnbnの広告記事である。「通信が遅い原因は家庭側にある」と独立した調査で結論づけた報道ではない。この点を踏まえつつ、紹介された対策を、原因を調べるための手順として読み解いてみたい。

家電は増えたのに、ルーターは昔のまま

元記事によると、オーストラリアのブロードバンド利用世帯では、接続機器数が平均25台に上るという。スマートフォンやパソコンだけでなく、テレビ、ゲーム機、防犯カメラなども含まれる。また、nbnの調査では、利用者の51%が過去2年間、宅内のネット機器や設置環境を変更していなかったとされる。

ただし、提示された記事本文には、これらの調査の対象人数や詳しい方法は記されていない。日本の平均的な家庭にもそのまま当てはまる数字として扱うべきではない。

それでも、「通信に使うものは増えたのに、通信を支える機器は見直していない」という問いは身近だ。テレビを買い替え、仕事用パソコンが増え、子どもがオンラインゲームを始めても、ルーターだけは数年前の場所で動き続けているかもしれない。

接続台数だけで快適さが決まるわけではないが、今の使い方に宅内環境が合っているかを確認する意味はある。


最初の対策は、ルーターを「隠さない」こと

ルーターは配線が目立つため、テレビの裏や収納棚の奥に押し込まれがちだ。しかし、見た目を整えるための置き場所が、電波には不利になることがある。

nbnが勧めるのは、家の中央寄りで、周囲が開けた、床より高い場所。可能であれば腰の高さが目安になる。端末までの間に壁や大きな物が少ない配置が望ましいという。

確認したいのは、棚の扉、金属製の家具、大型家電、鏡、水槽などの位置だ。水や金属、建物の構造は電波の伝わり方に影響し、電子レンジなどの機器が干渉源になる場合もある。

ここで重要なのは、すべての家庭で同じ位置が正解になるわけではないということ。家の中央でも厚い壁の向こう側なら、仕事部屋への届き方は十分でないかもしれない。

まずは配線に無理のない範囲で、収納の外へ出す、床から棚へ移す、テレビの裏から離す。それから、いつも困っている場所で変化を見る。元記事は数メートルの移動でも違いが出る可能性を挙げているが、改善幅を保証しているわけではない。


速度テストは、リビングの一回だけでは足りない

ネットの速度を測り、「思ったほど速くない」と感じても、それだけでは対策を選びにくい。

元記事が提案するのは、ルーターの近くで測り、次に遅さを感じる部屋でも測る方法だ。仕事机、寝室、子ども部屋など、普段の利用場所で比較すると、問題の出方が見えてくる。

実際に試すなら、同じ端末、同じ測定サービスを使い、できるだけ近い時間帯で比べると整理しやすい。変更前後を記録しておけば、「良くなった気がする」だけで判断せずに済む。

家のどこでも遅い場合は、対応するパソコンをLANケーブルでルーターにつなぎ、再び測る。有線では期待する速度に近づくなら、Wi-Fiの届き方や干渉、無線機器の性能などを調べる手がかりになる。

一方、有線でも遅いなら、契約先に測定結果を伝えて相談したい。ただし、それだけで回線側の障害と断定はできない。ケーブルや端末、ルーターを含めて確認する必要がある。

切り分けの目的は、誰に責任があるかを決めることではない。次に何を調べればよいか、見当をつけることだ。


「5年以上」は買い替え命令ではなく、確認の合図

スマートフォンは買い替えても、ルーターの型番や購入時期を覚えていない人はいるだろう。

元記事は、5年以上使っている場合、現在のプランに合っているかを通信事業者に確認するよう勧めている。しかし、5年たてば必ず遅くなる、必ず寿命を迎えるという意味ではない。

確認したいのは、対応するWi-Fiの規格、現在の利用に必要な性能、そしてメーカーによる更新の提供状況だ。本体のラベルで型番を確認し、メーカーの製品ページやサポート情報を調べるとよい。

回線プランを高速なものへ変更しても、宅内機器がそれを十分に生かせるとは限らない。逆に、今の機器で必要な通信が安定して行えているなら、「古い」という理由だけで最新製品を買う必要はない。

買い替えを考えるときも、まずは不満が出ている場所と使い方を具体的にする。「寝室の動画が止まる」と「家族が同時に使うと全員遅い」では、調べるべき点が変わってくる。


メッシュWi-Fiにも、置き場所の問題がある

離れた部屋に電波が届きにくいとき、候補になるのがメッシュWi-Fiだ。複数の機器を使って、家の中の通信範囲を広げる。

ただし、「台数を増やせば解決する」と考えると、期待外れになることがある。無線でつなぐ追加機器も、ほかの機器と十分に通信できる場所に置く必要があるからだ。

Googleの公式案内でも、届きにくい場所の方向へ、中間あたりに機器を設置する考え方が示されている。電波がほとんど届かない部屋の一番奥へ置くだけでは、期待どおりに中継できない可能性がある。

元記事は寝室が三つ以上ある家や複数階の住宅で検討する価値があるとしているが、これは一律の購入基準ではない。部屋数に加えて、壁の材質や間取りを見ながら判断したい。


SNSに見える「増やしたのに遅い」という戸惑い

家庭のWi-Fiに関する悩みは、SNSの相談にも表れている。

 

以下は元記事に対する直接の反応ではなく、Redditで公開されている関連投稿の要旨である。個人の申告であり、測定条件や原因が第三者によって検証されたものではない。

ある投稿では、旧世代のGoogle Wifiを使い、電波状態の表示が良くても通信が遅いと相談していた。投稿者によれば、有線では約500Mbpsに届く一方、Wi-Fiでは70〜80Mbps程度だったという。

別の投稿では、新居のガレージにルーターがあり、メッシュ機器の置き場所を変えても改善しないという悩みが書かれていた。部屋につながるLAN配線はあるものの、追加機器の仕様や設置条件のため、思うように活用できない様子だった。

二つの相談が示すのは、利用者の期待と、家の中で実際に成立する通信とのずれだ。「メッシュを導入した」「電波表示が良い」というだけでは、使いたい場所で十分な速度が出るとは限らない。

もちろん、これらをもってメッシュ全般が役に立たないと結論づけることもできない。個別の体験談から得られるのは、自宅でも比較測定や配置の確認が必要だという気づきである。


動かさない機器には、ケーブルという選択肢も

スマートフォンやタブレットは、家の中を持ち歩けることが魅力だ。一方、テレビやゲーム機、据え置きのパソコンは、普段ほとんど移動しない。

元記事は、こうした機器で安定性を重視するなら、ルーターとの有線接続を検討するよう勧めている。オンラインゲームや高画質動画、大きなファイルの転送などでは、無線区間の影響を避けられる利点がある。

ただし、有線ならどんな通信でも速くなるわけではない。契約回線や接続先の状況による制約までなくなるわけではなく、ケーブルや機器の仕様も関係する。

nbnは新しく用意する配線にはCAT6以上を推奨している。これは同社の推奨であり、今あるケーブルを確認せずにすべて交換する話ではない。

まず一台、日常的に困っている据え置き機器で試す。それで改善するなら、必要な場所だけ有線を残すという使い分けもできる。


契約を変える前に、「どこで遅いか」を確かめる

元記事の対策は、回線を変更しなくても試せる。ただし、メッシュの導入や機器の交換には費用がかかる。「プラン変更が不要」と「無料で解決する」は同じではない。

取りかかる順番は、まず設置場所を確認する。次に部屋ごとの速度を測り、可能なら有線とも比べる。その結果を見て、機器の更新、メッシュ、有線配線、契約先への相談を選ぶ。

ルーターの移動で改善する家もあれば、回線や機器を見直す必要がある家もある。大切なのは、買うものを先に決めるのではなく、困っている現象を確かめることだ。

今夜、動画が止まったら、契約プランの画面を開く前に、ルーターがどこに置かれているかを一度見てみたい。その小さな確認が、無駄な出費を避ける出発点になるかもしれない。


出典URL

  1. The Age「Simple ways to help improve your home Wi-Fi」(2026年9月30日)。nbn提供の広告記事。五つの改善策、接続台数・設備見直しに関する数値の出典。
    https://www.theage.com.au/technology/simple-ways-to-help-improve-your-home-wi-fi-20260930-p60u27.html

  2. nbn「Why your Wi-Fi router matters」。設置場所、速度確認、ルーターの見直しに関する公式案内。
    https://www.nbnco.com.au/learn/optimisation/what-to-look-for-in-a-wifi-router

  3. Google「Where to place your Wifi devices」。メッシュ機器を届きにくい場所への途中に配置する考え方を参照。
    https://support.google.com/googlehome/answer/7183150?hl=en-CA

  4. Reddit・r/wifi「What is the best mesh system for 2 story a 3200 sq ft home?」。有線とWi-Fiで速度差があるという利用者の相談。検索で確認できた公開本文の要旨を紹介。
    https://www.reddit.com/r/wifi/comments/1gmymra/

  5. Reddit・r/HomeNetworking「How should I solve my slow wifi speeds」。新居でのメッシュ機器の配置と、既設LAN配線の活用に関する相談。検索で確認できた公開本文の要旨を紹介。
    https://www.reddit.com/r/HomeNetworking/comments/15t84s4/