アメリカで「熱のドーム」現象発生！NYでは“体感43℃”超、1億6000万人が猛暑警報―10年に一度の酷暑襲来

2025年06月27日 20:20

6 月下旬、米国の広域を覆ったヒートドームにより、NWS（米国立気象局）は28州で約1億6,000万人に猛暑警報を発令しました。ニューヨーク市では体感温度43 ℃、ボストンやフィラデルフィアでも40 ℃超が観測され、「10年に一度の猛暑」と評されていますreuters.comhindustantimes.com。

2. ヒートドームとは何か

ヒートドームは上空の強力な高気圧が“ふた”となり、熱を地表付近に閉じ込める現象です。雲が発達しにくく夜間も放射冷却が阻害されるため、連日高温が続き湿度も高止まりします。ENSOや偏西風ブロッキングが加わると規模が拡大しやすく、気候変動で発生頻度が3倍に増えるとの研究も示されています。

3. 今回の熱波の規模

6 月20日ごろ中西部に居座った高気圧は数日で東海岸に拡大。NWSは「極端な暑さ」を宣言し、ニューヨーク州32郡で非常事態となりました。セントラルパークでは1888年以来の記録を並べる37.8 ℃、湿度を加味した体感は43 ℃reuters.com。総人口の約半数が危険域に置かれ、メディア各社は「1億6,000万人以上が警戒下」と報じていますhindustantimes.com。

4. ニューヨークの現場から

市交通局（MTA）はレール膨張対策で速度制限、アムトラックも減速運行。投票所の空調点検義務化やワシントン記念塔の閉鎖など影響は多岐に及びました。市は700超のクーリングセンターを開放し、ホームレスや高齢者へ避難を促進。救急搬送は通常の約1.8倍に増え、病院ではICU患者の移送事例も報告されています。

5. 健康被害と脆弱層

CDC統計では米国の熱関連死は年700人前後。今回も屋外労働者と高齢者を中心に熱射病が多発し、ニューハンプシャーで建設労働者の死亡例が発生。WBGTが35 ℃を超える「致死域」が複数都市で連日観測され、WHO基準を大幅に上回りました。

6. 社会インフラへの影響

ピーク電力需要は15 %増、NYISOは緊急需給宣言を発出しボストン・シカゴでは8 %の電圧抑制を実施。道路の軟化で高速道路が閉鎖され、農業ではトウモロコシ・大豆が開花期に高温ストレスを受け減収リスクが顕在化。冷蔵トラックの燃料コストも上昇して物流価格に波及しました。

7. 気候変動との関連

IPCC第6次報告書は「極端暑熱の年次化」を警告しており、今回のケースはその実例です。ラニーニャと北大西洋高気圧の重なりが熱ドームを停滞させたと解析されています。温室効果ガス排出が続けば、北米のヒートドームは21世紀半ばに毎年発生する可能性が高まります。

8. 日本への示唆

日本でも40 ℃超の猛暑日が増え、2023年以降の熱中症死者は毎年1,000人規模。都市部の夜間気温上昇と高齢化が重なり、米国同様の“静かな災害”が現実化しています。建築物のクールルーフ義務化、都市緑化、屋外労働の休業補償、エアコン設置支援、DERと需給調整市場の整備など、総合的な“暑さレジリエンス”構築が急務です。