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強さとやさしさは両立する:男性君主を“母”に見立ててきた世界 - “王=母”の衝撃:聖書からフランソワ1世、現代政治まで

強さとやさしさは両立する:男性君主を“母”に見立ててきた世界 - “王=母”の衝撃:聖書からフランソワ1世、現代政治まで

2025年09月10日 00:13

「王=母」という逆説

「善い統治者は、強い戦士であるだけでなく、養い守る存在でもある」。そんな“当たり前”が、歴史のテキストではしばしば見えなくなる。最新の研究は、王を「父」だけでなく「母」と呼んできた長い文化史を掘り起こした。米カンザス大学の歴史学者ルイス・R・コルテゲラと共同研究者イレーネ・オリバレスは、早期近代ヨーロッパを中心に、王権を母性にたとえる膨大な比喩・図像・語彙を系統立てて読み直し、「王=母(King as Mother)」という逆説の有効性を示したのである。研究成果は『Journal of Women’s History』に掲載され、ニュースとしても配信された。 Phys.orgJWomensHistory


研究の中身:なぜ「母」なのか

著者らは、聖書・古典・自然界の観察に根差す比喩を手掛かりに、王権の正統性が「養う者」のイメージによって補強されてきたことを論じる。たとえば聖書イザヤ書の文言――「王はあなたの養父となり、王妃はあなたの乳母となる」――は、王を“授乳する存在”として描く想像力を制度的に支えた。こうした語りは、王と臣民の関係を“父子”だけでなく“母子”の親密さへと拡張し、法や統治の正当化に機能したという。 Phys.orgKU News


図像の証拠:両性的な王、授乳する王

具体例は鮮烈だ。フランス王フランソワ1世を、髭のある顔と女性的な身体という両義的な身体として描いた肖像。あるいは“授乳する王”という一見突飛な図像。派手な寓意は、当時の人々にとっては統治の資質――近づきやすさ、包容、赦し――を直感的に伝えるメディアだった。硬派な決断力の裏に、共同体を養う「ミルク」の物語を重ねることで、力(フォース)だけではない支配の説得力が生まれたのだ。 Phys.org


ヨーロッパの外側へ:川と王、乳房のメタファー

比喩は西洋だけに閉じない。古代エジプトでは、国土を潤すナイル川が乳房を備えた男性像として擬人化され、その「給養(フィーディング)」のイメージはファラオの表象とも結びついていく。研究は、こうした養いの象徴がインド・日本・中国など多様な地域で見出せることも指摘する。男性的勇猛さと母性的ケアの結合は、長い時間と広い空間で繰り返し出現してきた統治のレトリックなのである。 Phys.org


女性の権威をどう照らすか

一見すると「王=母」は男性支配を補強する装置のように見える。しかし著者らは、このレトリックが女性権威の理解にも寄与したと述べる。男性の王を母にたとえることで、「母性=私的/家庭的」という固定観念を公共領域へ拡張し、女性の政治的能力を語る語彙が(少なくとも比喩の水準では)準備された可能性があるからだ。女性統治者の正統性をめぐる議論にも、母なる支配という観念が影響したと考えられる。 JWomensHistory


現代政治への連想

研究者は、現代の政治家像も「保護する」という母性的側面を帯びると指摘する。たとえば“強い男”のレトリックで知られるドナルド・トランプ米大統領(2025年時点)であっても、支持者に語りかける言葉の中には“守る”というケアの言辞が見え隠れする、というのが論者の観察である。ここでのポイントは善し悪しの評価ではなく、支配がつねに「安心」や「養い」の物語を必要としてきたという歴史的洞察だ。 Phys.org


何が新しいのか:〈ケア〉で読む権力史

王を父として語る言説史は豊富だが、父と母の両義性に体系的に光を当て、図像・言葉・自然の比喩を横断して読み解いた点に本研究の新しさがある。ケアは私的領域の徳ではなく、公共の技術であり、正統性の資源でもある――この視点を導入すると、王の慈悲、恩赦、貧民救済、災害対応、産育・飢饉政策などが、一続きの〈養育の政治〉として見えてくる。


“SNSの反応”スナップショット

ニュース配信(Phys.org、KUの広報)を起点に、海外メディアの二次配信が短時間で広がった。ヘッドラインのインパクトや「授乳する王」という象徴表現は共有されやすく、宗教テキストの引用に触れたコメントも目立つ。一方で、「現代のジェンダー観で過去を読み替えすぎでは」と警戒する声もあり、賛否は分かれる。少なくとも、王権=男性性という単線的理解に揺さぶりをかけたことは確かだ。 Phys.orgKU NewsJWomensHistoryLa República


メディアが掬い上げたポイント

報道は概ね、①学術誌(Journal of Women’s History)掲載の査読研究であること、②フランソワ1世や「乳房をもつナイル」の図像例、③「保護者としての強さ」という現代政治への含意、を丁寧に取り上げている。研究紹介のトーンは、センセーショナルな断定よりも“見落とされてきた補助線”としての提示に近い。 Phys.orgJWomensHistory


なぜいま注目されるのか

コーポレートから行政まで、リーダー像は世界的に“強さ+ケア”の複合スキルを求められている。危機対応、移民・福祉、育児・介護――いずれも武断だけでは立ち行かず、社会を「養う」政策が評価を左右する。王権の歴史から〈ケアの政治〉を読み出すことは、ジェンダー役割の固定観念をほぐし、実務的な統治能力の再設計にも資するだろう。


読者のための視座:比喩は政策にどう接続するか

  • コミュニケーション:危機時の「守る」メッセージは、権力の正統性を迅速に補強する。

  • 制度設計:再分配・セーフティネットの設計は、〈養育〉の物語と結びつくと理解されやすい。

  • 表象の倫理:歴史的図像の読み替えは、現代の価値観を投影しすぎない慎重さが要る一方、見えなかった関係性を照射する力も持つ。


まとめ

「王=母」という一見ラディカルな命題は、実は歴史の普遍的レトリックを呼び戻す作業だった。父性的な決断と母性的な養育――この二項の緊張が、共同体の持続可能性を左右する。統治の歴史は、ケアの歴史でもある。



参考(主要出典)

  • Phys.org「Male monarchs throughout history portrayed as 'mother' figures…」(2025年9月8日) Phys.org

  • Journal of Women’s History(Summer 2025 号:Corteguera & Olivares “King as Mother… ”) JWomensHistory

  • University of Kansas(KU News の広報記事) KU News

  • 周辺メディアでの二次配信の例(SSBCrack、La República) SSBCrack NewsLa República


参考記事

新しい研究によると、歴史を通じて男性の君主が「母親」的な存在として描かれていたことが明らかに
出典: https://phys.org/news/2025-09-male-monarchs-history-portrayed-mother.html

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