STARTOチケット転売問題を徹底解説――ランダム配布・番手売り・QRごと取引の実態と法的リスク

2025年06月17日 17:09

はじめに
STARTOチケット取得の基本フロー
ファンが転売に走る4つの心理
ランダム配布とは何か
番手売りとは何か
QRごと譲渡の仕組みと危険性
「転売禁止なのになぜ消えない？」5つの構造要因
STARTOと業界の最新対策
発信者情報開示請求を受けたら
ケーススタディ：チケ流／チケジャムの実例
今後の展望と提言
まとめ

1. はじめに

2024年末に旧ジャニーズ系各社が統合して誕生したSTARTO ENTERTAINMENTは、ファンクラブ会員制・完全電子チケット制へ移行して以来、転売撲滅を最重要課題に掲げている。2025年春、YC社と連携して転売出品者16名に対する発信者情報開示命令が認められた判決は大きな転機となった。corporate.starto.jp

2. STARTOチケット取得の基本フロー

FC先行抽選 → 当落通知 → スマホアプリでQR発券
座席は入場直前まで非表示（転売防止）
同行者も事前登録が必須で、顔認証または身分証提示が行われる
こうした仕組みでも転売は“形を変えて”生き残る。corporate.starto.jp

3. ファンが転売に走る4つの心理

良席確保
- 同一名義＋家族名義で複数応募し、「一番良い席以外を放出」。
遠征費・グッズ代の回収
- 交通費・宿泊費の高騰で「定価＋α」で売却し実質負担ゼロに。
推し活の資金作り
- 他コンテンツ購入資金を捻出。
急な予定変更
- 定価リセール窓口は抽選制のため「確実に買い手が付く高額取引」に流れる。
  需要と供給のギャップ、高額利益、ネット取引の容易さが背景にある。sedori.co.jpshakes.co.jp

4. ランダム配布とは何か

当選者の整理番号が「ランダム」で付与される方式。
ファンクラブ抽選後、同行者へチケットを「分配」する際も座席未定のまま渡されるため、転売サイトでは「FC先行／座席未定／ランダム配布」と記載。
人気エリアが当たる可能性もある反面、見切れ席・立見になるリスクが高い。detail.chiebukuro.yahoo.co.jpdetail.chiebukuro.yahoo.co.jp

4-1 ランダム配布チケットの取引価格

一般に「座席確定＞ランダム＞制作開放席」の順で高値が付く。ランダムでも高騰する理由は「ワンチャン良席」のギャンブル性が買い手心理を煽るためだ。

5. 番手売りとは何か

複数名義で当選したチケットの“番号順”で優先順位をつけて譲渡する慣行。
- 例：2名義中2番手 → 「1番手の席が良ければそちらに入り、残りを譲渡」という意味。detail.chiebukuro.yahoo.co.jpdetail.chiebukuro.yahoo.co.jp
買い手は当日まで座席が確定しないためリスクが高いが、最前列可能性付きとして高額取引されやすい。

6. QRごと譲渡の仕組みと危険性

スマホアプリで発券されたQRコードごとアカウントを貸与／売却する方法。
詐欺の典型例: 受渡後に出品者がQRを「再発行」して無効化し、買い手が入場不可。johnnysgoods-kaitori.jp

7. 「転売禁止なのになぜ消えない？」5つの構造要因

需要＞供給──キャパを凌駕する応募数。
利益率の高さ──数万円の利益が得られる。
オンライン匿名性──SNS＋フリマアプリで即取引。
罰則適用の難しさ──現行法は「反復継続」の立証が鍵。
ファン文化の“黙認”──「推しのためなら」論理が倫理を上書き。sedori.co.jpshakes.co.jp

8. STARTOと業界の最新対策

デジタルチケット×顔認証
GPS付きQRコードで転送回数を監視。
法的措置強化
- 2024年10月・2025年3月にチケ流運営へ発信者情報開示請求→開示命令確定。corporate.starto.jp
- 2025年3月、裁判所が「転売出品＝営業権侵害」と判断（日本初）。corporate.starto.jp

9. 発信者情報開示請求を受けたら

意見照会書がメールで届く（例：チケジャム）。
2週間以内に異議申立をしないと情報が裁判所へ提出される。
STARTO側は取得した氏名・住所を基に損害賠償（数十万円～）や刑事告訴を検討。tomida-shimaoka.com

9-1 刑事罰の可能性

「チケット不正転売禁止法」違反の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が規定されている。gov-online.go.jp

10. ケーススタディ：チケ流／チケジャムの実例

年月	プラットフォーム	開示対象件数	その後
2024/11	チケ流	1件	2025/1に損害賠償請求準備へ
2025/03	チケジャム	7件	コンテンツ権利会社が民事訴訟を提起予定
（STARTO公開資料および法律事務所ブログより作成）corporate.starto.jptomida-shimaoka.com

11. 今後の展望と提言

公式リセール抽選の即時発券・再販枠拡大
動的プライシング導入の是非
ファン教育──「推し活の倫理」と法的リスクの周知
プラットフォーム連携──転売検知アルゴリズム共有

1２. まとめ：ファン体験と健全流通の両立へ ── そしてこの夏、何が起きるのか？

2025年6月23日の規約改定は、STARTO ENTERTAINMENT（旧ジャニーズ事務所）が本格的に“転売ゼロ社会”に向けて舵を切る大きな転換点だ。本人確認の徹底、電子チケット化、公式リセール制度──技術・制度面は整いつつある。

しかし一方で、ファンの本音には「良席が欲しい」「急に行けなくなった友人の分をどうする？」といった柔軟性へのニーズも根強い。

そうした中で迎えるのが、夏のドーム＆アリーナツアーシーズンである。

timelesz（旧Sexy Zone）は再始動後初の全国ツアーが控えており、ファンクラブ先行がまさに新規約施行後の第1弾対象となる可能性が高い。
なにわ男子は5大ドーム公演も含む大規模ツアーが予定されており、これまで以上に“チケット確保”が熾烈になると見られる。
その他、Aぇ! group、Travis Japanなどデビュー直後のグループも本格的な単独ツアーが見込まれており、「新ルールの実効性が、夏ツアーで試される」という見方がファンの間でも強い。

この夏、ファンの行動、SNSでの反応、そして公式の運用姿勢が“新時代のチケット文化”の成否を左右する。

規約だけでなく、透明な抽選システム・スムーズな公式リセール・柔軟な同行者変更といった運用面が伴ってこそ、ファンの満足度と公正なチケット流通の両立が実現できる。

“転売ゼロ”の理想と、“推しに会いたい”という現実のバランス。その調整力こそが、今後のSTARTOエンタメの信頼を左右する鍵となるだろう。

参考記事一覧

STARTO ENTERTAINMENT「チケット転売出品に関する日本で初めての司法判断について」2025-03-10 corporate.starto.jp
STARTO ENTERTAINMENT「チケット転売サイトに対する発信者情報開示請求について」2024-11-12 corporate.starto.jp
STARTO ENTERTAINMENT「転売出品者への法的対応」2025-03-19 corporate.starto.jp
消費者庁「チケット不正転売禁止法」解説ページ gov-online.go.jp
チケジャム発信者情報開示ガイド（富田・島岡法律事務所） tomida-shimaoka.com
Yahoo!知恵袋「ジャニーズのランダム配布とは？」 detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
Yahoo!知恵袋「番手売りの意味」 detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
ジャニーズグッズ買取ブログ「QRごとのお譲りで気を付けること」2024-07-24 johnnysgoods-kaitori.jp
コラム「チケット転売がなくならない理由」2025-05-27 shakes.co.jp
需要供給分析レポート（SEDORI Lab）2024-10-15 sedori.co.jp

← 記事一覧に戻る

クッキーの使用について