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“CO₂吸収源”の裏側で ─ 浜に打ち上がる海藻が温暖化を後押し? 砂浜から立ち上る見えない温室効果ガス

“CO₂吸収源”の裏側で ─ 浜に打ち上がる海藻が温暖化を後押し? 砂浜から立ち上る見えない温室効果ガス

2025年09月03日 00:29

序章:浜辺は“静かな排出源”だった

9月1日(現地時間)にPhys.orgが伝えたニュースは、海岸生態系の常識を揺らした。砂の海岸で、打ち上げられた海藻(マクロファイト)が分解する際に出る代謝物を使って、古細菌がメタンを作り、大気へ放出しているというのだ。論文はNature Geoscienceに8月7日付で掲載。砂浜はこれまで「酸素にさらされるためメタン生成が抑制される」と考えられてきたが、その前提が覆った。Phys.orgDOI


何が見つかったのか:酸素に“耐える”メタン生成者

研究は、ポート・フィリップ湾とウェスタンポート湾(オーストラリア)、Avernakø(デンマーク)の砂浜で実施。浅い沿岸の表層水は大気に対して**380%〜189,000%**という極端なメタン過飽和を示した。海藻・アマモのマットが溜まりやすい微地形ほどメタンが高騰し、地下水(ラドン指標)由来ではないことも示された。DOI


鍵は、Methanosarcinaceaeを中心とするメチロ栄養性メタン生成古細菌。彼らはトリメチルアミン(TMA)やメチルアミン, ジメチルスルフィド(DMS)など、海藻・アマモに豊富なメチル化合物を資化してメタンを出す。培養・阻害実験では、古細菌の終端酵素を止めるBES添加でメタン生成がほぼ消失し、競合しやすい酢酸(アセトクラスティック)や水素では増えず、メチル基質でのみ顕著に増えた。さらに、酸素曝露を繰り返しても生成が素早く回復する“耐酸素性”も確認された。DOI


スケールの見積もり:地球規模の“見落とし”

沿岸浅海は海洋メタン排出の約75%を担うと推定されるが、その内訳は不確かだった。今回の知見は、広範に分布する砂浜(世界の大陸縁辺の約50%)が、想定以上にメタンを供給している現実を突きつける。これはブルーカーボンが主張してきた「沿岸生態系は強力なCO₂吸収源」という物語に、**オフセット(差し引き)**の視点を強く要求する。DOI


なぜ今、問題化するのか:藻類ブルームと温暖化のフィードバック

海藻の大量打ち上げは、高水温・外来種侵入・富栄養化の進行で増える傾向にある。2025年に南オーストラリア各地を悩ませた藻類ブルームも、そうした現象の一端だ。打ち上げ藻が堆積すれば、分解でメチル化合物が溶出し、砂中の古細菌が**“メタンのパルス”**を放つ──海が暖まるほど藻が増え、メタンがさらに温暖化を押し上げる可能性がある。Phys.org


研究の方法:現場観測×メタゲノム×培養

本研究は、(1)現地のメタン濃度・ラドン測定、(2)砂・海水・海藻を組み合わせたスラリー実験、(3)より現場条件に近いフロースルーリアクター(FTR)、(4)メタゲノム解析、(5)Methanococcoides属の新規2株の分離という多層アプローチで、古細菌の関与と基質特異性を積み上げて示した。海藻抽出物に含まれるコリンやグリシンベタイン, DMSPなどの浸透圧調節物質が分解されることでメタン生成が駆動される構図も浮かび上がった。DOI


SNSの反応:驚きと再評価の声

 


  • Nature Geoscience公式は8月7日に論文を紹介し、沿岸砂浜が意外なメタン源である点を強調。学術界の注目度を示すAltmetric指標も上昇した。X (formerly Twitter)DOI

  • 海洋微生物学者 Cameron Thrash氏はXで論文リンクを共有。「海藻・アマモ代謝物が鍵」という視点への反応が広がった。X (formerly Twitter)

  • Monash Scienceの公式投稿やニュースサイト各社も、砂浜が“見落とされてきた排出源”である点を相次ぎ報道。研究者や一般ユーザーからは「ブルーカーボン評価の見直し」を求めるコメントが寄せられた。X (formerly Twitter)FacebookEarth.com


まとめると、**「吸収源としての海岸=善」という単純図式は崩れ、「吸収と放出の両刃」**として再評価するフェーズに入ったと言える。


誤解しないための3つのポイント

  1. 海藻=悪ではない
    海藻林やアマモ場がCO₂を取り込む事実は揺らがない。ただしメタンの“戻し”を同時に勘定する必要がある。先行研究でも、海藻域のメタン排出がCO₂吸収の2〜4割規模に達し得る例が報告されている。news.mongabay.com

  2. 場所と状態がすべて
    打ち上げ・堆積して分解が進む砂浜で、メチル化合物が豊富な場ほどメタン生成が強い。地下水起源ではないことも今回のデータで示された。DOI

  3. 酸素は“ストッパー”にならないことがある
    従来の常識(メタン生成は無酸素のみ)に反し、今回の主役は耐酸素性。沿岸の攪乱の多い表層砂でも活動を維持できる。DOI


影響:政策と現場の意思決定がどう変わるか

  • 気候モデルの更新
    海洋メタンの空間分布と季節パルスを、砂浜と堆積海藻のマップに重ねて再推定する必要がある。とくに富栄養化が進む沿岸での寄与は無視できない。DOI

  • 海岸管理の再設計
    (a)生態系サービス(稚魚育成・海岸養分循環)を損なわない範囲で、打ち上げ藻の堆積時間を短縮、(b)覆土・堆肥化・堆積場所の分散などで嫌気・半嫌気のホットスポットを減らす、といった**“メタン賢い清掃”**が検討対象になる。

  • 富栄養化対策の優先度アップ
    河川流域の窒素・リン負荷を減らすことは、藻類ブルーム抑制=メチル化合物の供給抑制にもつながる。

  • 観測・監視
    海岸のメタン過飽和は地点によって4桁スケールで変動する。リモートセンシングと現地センサーを組み合わせた常時監視の設計が必要だ。DOI


反論・注意点

  • 全球スケールの寄与量はまだ粗い
    今回はメカニズムの確証が焦点。全球のフラックスへ直結させるには、長期・広域の観測が欠かせない。DOI

  • 清掃のやり過ぎは禁物
    砂浜生態系は打ち上げ藻(wrack)に依存する生物が多い。生態系影響評価を前提に、ゾーニングや時期・方法の最適化が必要だ(既存の浜辺生態学レビューも参照)。Wiley Online Library


結語:青い希望を賢く使う

ブルーカーボンは重要だが、**メタンという“裏面”**を織り込んでこそ、現実に役立つ気候施策になる。今回の研究は、その針路を一段現実的なものにしてくれた。



参考記事

研究によると、砂浜の海藻が温室効果ガスの排出に寄与していることが明らかになりました。
出典: https://phys.org/news/2025-09-seaweed-sandy-coastlines-contributes-greenhouse.html

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