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地球を救う新発見!温室効果ガス削減に挑む革命的タンパク質とは?─ 土壌から始まる脱温室ガスの新戦略

地球を救う新発見!温室効果ガス削減に挑む革命的タンパク質とは?─ 土壌から始まる脱温室ガスの新戦略

2025年10月23日 00:06

導入──見つかったのは「前提」を変えるタンパク質

2025年10月21日にPhys.orgが伝えたニュースは、温室効果ガス対策の地図に新しい地形を描き加えた。米テネシー大学ノックスビル校を中心とする研究チームが、N₂O(一酸化二窒素)を気候中立な窒素(N₂)へ還元する、未知のタンパク質ファミリーを報告したのだ。既存の教科書では、N₂O還元酵素(N₂OR、遺伝子名nosZ)は二つの“系統(clade)”に整理されてきた。しかし今回のタンパク質は配列レベルで両者と大きく異なる“第三の系統”で、AIによる構造予測と質量分析、培養実験を組み合わせて機能が裏づけられたという。phys.org


背景──N₂Oはなぜ厄介か

N₂OはCO₂に比べて単位質量あたりの温室効果が非常に強く、さらに成層圏オゾンを破壊する。合成窒素肥料の普及以降、農地土壌に残った窒素が微生物によって変換され、大量のN₂Oが発生する構図はよく知られている。テネシー大学の解説は「CO₂の約300倍」という比喩で、その厄介さを端的に示す。だからこそ、土壌の「N₂Oを消す側」の微生物と酵素の理解は、現実的な気候対策に直結する。cee.utk.edu


何が新しいのか──L-N2OR / L-NosZ

研究チームは、酸性土壌でも持続的なN₂O還元が起こることを2024年に示していた。続く大規模なメタゲノム・メタプロテオーム解析と、最新の構造予測により、既知のnosZと40%未満の相同性しか示さないが、立体構造上の鍵モチーフを共有し、実際にN₂OをN₂へ還元するタンパク質群を同定。これを「L-N2OR(lactonase-type N₂O reductase)」として報告した。系統学的には既存の枠外にあり、Nitrospinotaなど培養困難な分類群を含め、幅広い系統に分布するという。Nature PubMed


ポイントは三つある。

  1. 配列は離れているのに、構造と機能は近い──収斂進化の一例とも解釈できる。

  2. ゲノム参照ライブラリが更新される──これまで見逃されてきた“似て非なる”配列が、N₂O還元候補として自動的に拾えるようになる。

  3. 窒素循環モデルの再調整が必要──「どこで、どれだけN₂Oが消えているか」の見積もりが変わる可能性がある。phys.org


実験の要諦──AI×質量分析×培養

論文(Nature, 2025)は、培養系でのN₂O還元速度の加速、N₂O存在下で特異的に発現するタンパク質群、そしてリボン図レベルでNosZと対応する構造要素を積み重ねて機能を証明した。特に、N₂O存在時のみ検出される周辺遺伝子群のプロテオーム挙動は、代謝経路としての整合性を補強している。phys.org


「過去研究の読み替え」が始まる

研究チームの指摘どおり、このファミリーが参照データベースに組み込まれると、既報データの再解析で「説明できなかったN₂O還元活性」に遡及的な説明がつく。酸性条件下でも成長連動でN₂Oを減らす微生物群集の存在を示した2024年の報告は、その一つの端緒だった。Nature


応用可能性──現場実装のシナリオ

  • 土壌改良材/バイオスティミュラント:L-N2ORをもつ微生物を選抜・馴化して土壌に戻し、肥料散布後のN₂Oピークを抑える。

  • 畜産・バイオガス施設でのバイオフィルター:高濃度N₂Oガス流に適応したバイオリアクターを設計する。

  • モニタリング:L-N2OR遺伝子をバイオマーカーとして、土壌・水域のN₂O“シンク能力”を定量化。
    これらは今すぐの製品化を意味しないが、既知のNosZ系統Ⅰ・Ⅱだけを前提にした設計より、探索の射程が広がるのは間違いない。PubMed


リスクと制約──「万能薬」ではない

  • 生態系への介入:外来株の導入は競争・遺伝子水平伝播など生態リスクを伴う。

  • 環境依存性:pH、炭素源、酸化還元状態など現場条件で活性が大きく変わる。酸性土壌での持続性が示唆されたとはいえ、普遍ではない。

  • 計測課題:フラックス測定や同位体手法の空間スケール依存性により、効果検証の統計力確保が難しい。

  • 規制:GMO/非GMOに関わらず、実フィールド試験には環境安全性評価が必要。Nature


SNSの反応──「期待」と「慎重」のちょうど中間

 


今回の論文は8月下旬に『Nature』から公開され、その直後にNature公式Xアカウントが紹介。ポストの拡散を起点に、気候・農業コミュニティで「第三のN₂O還元酵素」への関心が一気に高まった。FacebookのNature公式ページや、科学系メディアのInstagramでも可視化され、一般層まで話題が波及した。傾向を要約すると次のとおりだ。


  • 歓迎ムード:「CO₂対策に比べ、N₂Oの切り札は少なかった。突破口だ」と評価。

  • 実装質問:「土壌へいつ・どう入れる?酸素に弱くない?測れるの?」と技術条件への具体質問。

  • 懐疑と是々非々:「ラボの活性がそのまま畑で出るとは限らない。長期データを」と冷静な指摘。
    これらはSNS上の実際の投稿(NatureのX/Facebook、科学系Instagram投稿)を踏まえた要約で、熱狂と現実主義のバランスが特徴的だった。X (formerly Twitter) Facebook


なぜ“第三の系統”が重要なのか

2010年代以降、nosZ遺伝子は「典型(clade I)」と「非典型(clade II)」に大別され、後者は脱窒をしないのにN₂Oだけを還元する菌も含むため、N₂Oシンクの担い手として注目されてきた。今回のL-N2ORは、それらの定義枠を越えて“構造は似ているが配列は遠い”群を可視化した点で画期的だ。見逃されてきたN₂Oシンクの地理分布や寄与率が上方修正される可能性がある。ASM Journals


これからの検証ポイント

  1. フィールドでの再現性:降雨後・施肥後ピークなど、ダイナミックな条件での実地検証。

  2. 宿主範囲と生態位:どの分類群・環境で最も活発か(例:Nitrospinota)。

  3. 合成生物学:安全な宿主にL-N2OR機能を移植し、安定に発現・活性化できるか。

  4. モデル統合:気候・窒素循環モデルに新ファミリーを組み込み、地域別の削減ポテンシャルを定量。PubMed


まとめ──「見える化」が戦略を変える

温暖化対策は、CO₂だけでなくN₂Oの“見える化”と“消す力”の強化が鍵になる。L-N2OR/L-NosZの同定は、現場で使える具体策(アメンドメント、バイオリアクター、モニタリング)の設計図をアップデートし、同時に過去データの再解釈を促す。研究チームの発見は、科学の基礎と政策実装のちょうど交点に位置している。次はフィールドでの持続的効果の提示と、安全かつ公平な展開をどう設計するかだ。phys.org


参考記事

新しいタンパク質が温室効果ガスの排出削減に役立つ可能性
出典: https://phys.org/news/2025-10-protein-combat-greenhouse-gas-emissions.html

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